【キーンランドC】前走オープンクラスの牡馬は割引 データで導く「過信禁物の注目馬」

藤川祐輔

2023年キーンランドC 過信禁物な注目馬の特徴,ⒸSPAIA

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北の大地で行われる、大舞台への「前哨戦」

8月27日、札幌競馬場ではキーンランドC(GⅢ)が行われる。当レースはサマーシリーズの一環として実施されるが、斤量別定の条件やスプリンターズSへの優先出走権の付与など、秋GⅠの前哨戦としての意味合いが強い一戦。今年もGⅠ好走実績のある馬が複数出走予定であり、ハイレベルなレースが期待できそうだ。

しかし馬券を考えるにあたっては、夏の上がり馬と路線のトップホースとの能力比較が難しく、特に人気馬の取捨選択は悩ましい。今回は函館で開催された13年を除く過去10回(12年&14~22年)のデータから、「過信禁物の注目馬」を導いていく。


晩夏でも「夏は牝馬」 牡馬は期待値低い

性別ごとの成績,ⒸSPAIA


最初に注目するのは出走馬の性別ごとの成績だ。牝馬の成績は【6-4-5-44】勝率10.2%、連対率16.9%、複勝率25.4%と良好なのに対して、牡・セン馬の成績は【4-6-5-78】勝率4.3%、連対率10.8%、複勝率16.1%とやや落ち込んでいる。

単複の回収率をみても、牡・セン馬の単45%/複42%に対して、牝馬は単110%/複85%と数字に大きな開きがある。「夏は牝馬」という言葉の通りに、当レースでは牝馬に馬券的妙味がありそうだ。


前走重賞組が中心 前走オープンクラスの牡・セン馬は苦戦傾向

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


続いて注目するのは前走クラス別の成績だ。実は最も成績が良いのは前走3勝クラス組で、【1-2-1-3】勝率14.3%、連対率42.9%、複勝率57.1%となっている。単勝回収率415%、複勝回収率171%と驚異的な数字を残している。しかし、残念ながら今年のメンバーに該当馬はいない。

馬券の中心となっているのは前走国内GⅠ~GⅢ組で【6-6-7-59】勝率7.7%、連対率15.4%、複勝率24.4%と良好だ。一方、オープンクラスからの転戦は【3-2-2-55】勝率4.8%、連対率8.1%、複勝率11.3%と低調だ。

前走オープンクラス・性別ごとの成績,ⒸSPAIA


牝馬が優勢だと先述したが、前走オープンクラスの馬に関してはこの傾向が顕著だ。この組の牡・セン馬の成績は【1-1-1-37】勝率2.5%、連対率5.0%、複勝率7.5%であるのに対し、牝馬は【2-1-1-18】勝率9.1%、連対率13.6%、複勝率18.2%と大きく差が開いている。この組の牡馬に関しては、重い印を打ちにくい。

GⅠ前哨戦ということで、重賞転戦組がデータの面からは優勢である。今年はしらかばSがオープンクラスに昇格した影響もあり、UHB賞組に加え多くの馬がオープンクラスから転戦してくる。人気を集めそうな馬も多く含まれるだけに、重賞で通用するか丁寧に見極めたい。


古馬の牡・セン馬は馬体重に裏付けられたパワーが必要

古馬・牡馬の馬体重別成績,ⒸSPAIA


最後に紹介するのは馬体重に関するデータである。出走馬全体では成績の相関は見られないのだが、これを古馬の牡・セン馬に限定すると傾向がみえてくる。馬体重が500kg以上の成績は、【2-3-3-27】勝率5.7%、連対率14.3%、複勝率22.9%とまずまずだが、これに対して500kg未満の馬は【2-0-2-39】勝率4.7%、連対率4.7%、複勝率9.3%とふるっていない。

当然ながら古馬の牡・セン馬は3歳馬や牝馬に比べて重い斤量を背負う。洋芝のスプリント戦では相応のパワーが要求されるため、ある程度の馬格がない馬は能力を発揮することが難しい。今年は斤量の規定の変更により各馬1kg増加しているため、この傾向がより顕著になるかもしれない。57kg以上を背負うことになる該当馬の馬体重には注意したい。


データで導く「過信禁物の注目馬」

ここまでに紹介したデータを総括すると、当レースにおける不安要素は以下となる。

・牡・セン馬が総じて期待値低め
・前走オープンクラス、特に牡・セン馬
・古馬の牡・セン馬で、馬体重500kg未満

これらを踏まえて、今回は「過信禁物の注目馬」としてゾンニッヒを挙げる。

ゾンニッヒはこれまでマイル~中距離を中心に使われてきたが、前走の青函Sで初の芝1200m戦ながら2馬身差をつける快勝。洋芝・短距離両方の適性を証明し、注目を集める存在だ。しかし、牡馬であり、前走でオープンクラスかつ馬体重も470kg前後と不安データに該当。加えて青函Sで下した2~4着馬はいずれも次走のしらかばSで二桁着順に大敗しており、レースレベルにも疑問が残る。今回は相手関係が一気に強化されるだけに、重い印は打ちにくい。

《ライタープロフィール》
藤川祐輔
98年生まれの現役大学院生。競馬好きの父の影響を受け、幼いころから某有名血統予想家の本を読んで育った。幸か不幸か、進学先の近くに競馬場があり、勉強そっちのけで競馬に没頭。当然のごとく留年した。現在は心を入れ替え、勉強も競馬も全力投球。いつの日か馬を買うのが夢。

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