【2歳馬ジャッジ】札幌芝でラスト2F11秒2-11秒1は秀逸 パワーホールがGⅠ級の走りを見せる
山崎エリカ
ⒸSPAIA
7月5週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は2歳コースレコードを記録したカンティアーモや、ラスト2Fで秀逸なラップを刻んだパワーホールなどが出た、7月29日、30日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
7月29日(土)新潟5R 優勝馬 ダノンキラウェア 指数-3 評価A
1番枠からトップスタートを切ったが、鞍上が抑えるとすっと折り合い序盤は単独3番手につけた。向正面でゲルタが内に潜り込み、2列目の外を追走する形になった。最後の直線で前2頭の外に出されると、スパート開始。早めに抜け出したランドマックスをラスト1F標地点で交わし、そこからはジリジリとした伸びになったが、最後までしぶとく粘って完勝した。
ラスト2Fは10秒9-11秒2。最後にグンと伸びなかったあたりが数字にも出ているが、悪いものではない。スムーズに折り合える辺りに競馬センスの良さも感じさせ、まずまず良い勝ち方だったと言える。
全兄はダノンスコーピオン。同馬は新馬戦のラスト2Fは11秒2秒-11秒6とそこまで秀逸と言える内容ではなかったが、勝った時点で世間では妙に高い評価をされた。ただ、同馬は走破タイムが平凡で次走以降の伸びしろが大きく、素質が確かならば化けるかもしれないという要素はあった。そこからラッキーな内容が続き、NHKマイルCを勝利するまでになった。
ダノンキラウェアは新馬戦時点のダノンスコーピオンと同等ぐらいの評価ができる走りだった。ラスト1Fの数字がそこまで強烈ではなくとも、後続馬がバラバラになって入線したあたりはよく似ている。こういう着差構成の新馬戦勝ち馬は、意外と強いことが多い。負担の少ないレースを選択して成長を促していけば、兄同様に強くなる可能性はある。
7月29日(土)新潟6R 優勝馬 ウエスタンシーズン 指数-9(ダート)評価B
4番枠から五分のスタートだったが、枠の利と二の脚の速さを生かしてハナを主張。そこから緩みないペースを刻んだことで、4角手前では後続馬たちの脚色が悪くなり始めた。直線では後続を引き離し独走態勢、最後に2着馬に差を詰められたが、強い内容での勝利だった。
ラスト2Fは12秒3-12秒9。自ら緩みないペースを刻んだだけに、失速したのは仕方ない。2着には2馬身半差、3着にはさらに7馬身差をつけており、新馬戦としてはなかなか優秀な指数だった。
今後、成績にはムラが出るだろうが、能力はあるので勝ったり負けたりしながら上昇するだろう。この新馬戦も今年の他のダート新馬戦同様に、なかなかの好指数決着だった。
7月30日(日)新潟5R 優勝馬 カンティアーモ 指数-7 評価AA
大外9番枠からトップスタートを切って逃げ馬の外2番手を追走。折り合いが難しいのか、向正面で3番手以降を引き離し、新馬戦としては緩みないペースを刻んだ。行きたがったまま4角手前では逃げ馬スプリンクルソルトに完全に並びかける。直線に入ると同馬はバテバテになって失速。早め先頭に立ってしまい、かなり苦しい展開となった。直線半ばでは外のミッキースターダムに交わされたが、そこから差し返して3/4差の勝利だった。
3着には8馬身近い大きな差をつけ、走破タイムは1分46秒4の2歳コースレコード。レコード勝ちでも指数が平凡になることは多々あるが、このレースは指数も新馬戦としては優秀なものを記録した。
ラスト2Fは11秒1-11秒7。逃げたスプリンクルソルトは最下位となったなか、こちらは減速がそこまで大きくないのだから、強いことは確か。無茶苦茶なレースだったが、かなり高い能力を持っていることは間違いない。
ただ、今回の内容はあまりにも消耗度が高すぎて、ダメージが残りやすい内容。とにかく疲労残りが懸念される。今後の使われ方次第では凡馬にもなりうるし、大事に育てて気性面が改善されれば、一流馬になる可能性も秘めている。
7月29日(土)札幌1R 優勝馬 レガーロデルシエロ 指数-6 評価A
6月東京のボルケーノが勝利した新馬戦の3着馬。新馬戦は出遅れてポジションが悪くなりながらも、最後の直線で外から鋭い脚で追い込んでいた。今回はデビュー2戦目、4番枠から五分のスタートを切ると、前2頭を追いかけ、1~2角で2番手。逃げ馬を追い抜かないように抑えていたが、4角ではスピードの違いで自然と先頭へ立った。
直線では後続をジワジワと引き離し、2着に3馬身、3着以下には5馬身以上の差をつけて悠々とゴールした。新馬戦とは逆の、勝ちにいく競馬。距離延長にもあっさり対応できた辺りに能力の天井の高さを感じる。今後は重賞戦線の伏兵として活躍していくだろう。
新馬戦時に2着だったコスモブッドレアは次走の福島未勝利戦を好指数勝ち。3着だった本馬も今回好指数勝ちをおさめた。新馬戦の勝ち馬ボルケーノの評価は相対的にさらに上がった。
7月30日(日)札幌5R 優勝馬 パワーホール 指数-6 評価AAA
この新馬戦で1番人気に支持されていたのはソニックラインで、今年のヴィクトリアマイル、安田記念を連勝した名牝ソングラインの半弟。2番人気はキャプテンシーで、こちらは2017年ヴィクトリアマイルを優勝したアドマイヤリードの仔だ。ノーザンファーム生産の精鋭2頭が上位人気、他にもなかなかの粒揃いだった。
そのような状況で、10番枠から好スタートを切って逃げたのが本馬だ。行きたがる場面もあったが上手くなだめてペースを落とし、折り合うことに成功。そのまま淡々としたペースを刻み、3角過ぎからは後続馬のプレッシャーも激しくなった。4角では外からキャプテンシー、カリンテラスが並びかけてきたが、手応え十分。4角を回ってゴーサインが出されるともうひと伸び。直線序盤でカリンテラスが置かれて、2番手に上がったキャプテンシーを突き放し、4馬身差で圧勝した。
ラスト2Fは11秒2-11秒1。いくら今年の札幌が例年よりもやや時計が速い馬場とは言っても、例年の東京や京都のような超高速馬場というわけではない。芝の中距離新馬戦で最後まで加速しながらラスト1F11秒1は素晴らしい。今回は6番人気。血統的には高い評価をされていないのだろうが、実力は本物だ。クラシック候補、GⅠを狙える馬だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)パワーホールの指数「-6」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.3秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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