【安田記念】連覇、GⅠ・3勝目へ視界良好 東大HCの本命はソングライン
東大ホースメンクラブ
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GⅠ馬10頭参戦、豪華マイル王決定戦
2023年6月4日(日)、東京競馬場でGⅠ・安田記念が行われる。今年は前走ヴィクトリアマイルで内から鮮やかな差し切りを決めた昨年の覇者ソングライン、アタマ差2着に敗れた白毛の女王ソダシ、マイラーズCを勝利し復活を果たしたシュネルマイスター、大阪杯でついに初のGⅠ勝利を掴んだジャックドール、NHKマイルCを9番人気で勝利し波乱を演出したシャンパンカラーなど、豪華メンバーが集結した。
GⅠ馬10頭が揃うマイル王決定戦、果たしてどの馬が栄光を掴むのか。今週も過去10年のデータから検討する。
ジャックドールに疑問符
<安田記念・過去10年の脚質別成績>
逃げ【1-2-0-7】勝率10.0%/連対率30.0%/複勝率30.0%
先行【1-2-1-31】勝率2.9%/連対率8.6%/複勝率11.4%
差し【6-3-6-51】勝率9.1%/連対率13.6%/複勝率22.7%
追込【2-3-3-41】勝率4.1%/連対率10.2%/複勝率16.3%
まず脚質別成績から確認する。母数が違うため一概に比較することはできないが、最も数字がいいのは逃げである。3連対のうち2例はロゴタイプ。16年に8番人気ながら逃げ切りを決め、翌17年も8番人気で2着に入った。この2戦の展開を振り返る。
16年のレースラップは12秒3-11秒0-11秒7-12秒0-12秒1-11秒3-10秒9-11秒7と中間に12秒台が並び、最後の3Fは33秒9(過去10年で2位タイ)を計時。残り400~200m区間で10秒台が出たのは10年のうちこの年だけで、典型的なスローからのヨーイドンの競馬。当時マイル界ではモーリスが無双状態にあり最終単勝オッズが1.7倍とかなり人気を集めていた。ロゴタイプはその陰に隠れた存在だったからこそ、荒れた最内での思い切った逃げが決まったのだろう。全てがハマった勝利と言ってよい。
ロゴタイプが再び逃げ、2着に残った翌17年は打って変わって前半3F33秒9のペースで流れたことで、先行勢は総崩れ。上がり最速の33秒5をマークして4角15番手から追い込んだサトノアラジンが勝利、3着レッドファルクスも4角13番手から33秒7の上がり(メンバー中3位)を使っていた。ロゴタイプ自身も直線では二の脚を使って一時3馬身ほど後続を突き放す場面を作っており、位置取りの差だけで残ったわけではなかった。
今年の展開に目を向けると、ジャックドールの逃げが想定される。大阪杯での逃げは最初の2F目が10秒9と速く、3・4F目は12秒台に落とし、その後9F目まで11秒5前後をキープして、最後の1Fは12秒5と失速している。直線で再度加速するというよりは、スピードを長く持続させる力、そして競り合いへの強さを生かして押し切ったものである。マイルでの経験がないジャックドールが、ロゴタイプのように直線で二の脚を使って逃げ残る競馬ができるかは不明だ。
また、騎乗する武豊騎手は安田記念で過去10年【0-0-0-9】と不調。さらに大阪杯組も(GⅠ昇格以降は)【0-0-1-10】とさっぱり。ここはジャックドールを思い切って下げたいと思う。
もう一頭の逃げ候補としては東京新聞杯で逃げたウインカーネリアンが思い浮かぶが、こちらはハナにこだわる馬ではなく、2番手あたりで進めると考えるのが妥当だろう。となるとハイペースになることは考えにくく、スローのマイル戦に強い馬を選びたい。
スローペースのマイル戦といえば昨年の安田記念である。1着ソングラインは4角10番手からじわじわと加速し、8着イルーシヴパンサーまで0秒2差という大混戦のなかクビ差抜け出してゴール。前走ヴィクトリアマイルも似たようなペースのなか4角6番手から33秒2(メンバー中2位)の脚を使って勝っており、こういう展開とは相性が抜群だ。昨年の2着シュネルマイスターは、最後の200m付近まで前が開かなかったことが敗因だっただろうが、それでも内に切れ込みながら伸びて力をみせた。
また、3着サリオスや4着セリフォスも含め、スローだった昨年も差し馬が上位を占めていることから、今年も差し馬を軸に据えたいところだ。
ダイワメジャー産駒は不振
<安田記念・過去10年の主要種牡馬成績>
スクリーンヒーロー【1-1-0-1】勝率33.3%/連対率66.7%/複勝率66.7%
ハーツクライ【1-0-2-6】勝率11.1%/連対率11.1%/複勝率33.3%
キズナ【1-0-0-1】勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率50.0%
クロフネ【0-2-0-1】勝率0.0%/連対率66.7%/複勝率66.7%
ロードカナロア【0-1-1-4】勝率0.0%/連対率16.7%/複勝率33.3%
ダイワメジャー【0-0-0-13】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
ハービンジャー【0-0-0-5】勝率0.0%/連対率0.0%/複勝率0.0%
次に、今回出走がある主要な種牡馬について安田記念での成績をチェックする。スクリーンヒーロー(ウインカーネリアン)は3戦2連対の好成績だが、好走2例はどちらもモーリスによるもの。またハーツクライ(イルーシヴパンサー)は14年1着ジャスタウェイなどの好走馬を出している。ソダシが該当するクロフネ産駒は母数こそ少ないが、アエロリットが18、19年と2年連続で2着に入っている。
一方で不振が目立つのはダイワメジャー(セリフォス、マテンロウオリオン)。過去10年では3番人気以内に推された馬がおらず、平均人気9.5という事情もあるとはいえ、13年カレンブラックヒル(単勝6.7倍の4番人気、14着)や22年セリフォス(単勝8.7倍の5番人気、4着)を含め全滅している。ナミュールの父ハービンジャーもパッとせず、18年にはペルシアンナイトが2番人気で6着に敗れている。
絶好の舞台で戦えるソングライン
◎ソングライン
ヴィクトリアマイルではスローペースの中、先行し粘り込みを図るソダシを内から差し切り。5着だった一昨年の雪辱を果たし、2つ目のGⅠタイトルを手にした。東京芝マイルでは【4-1-0-1】とかなりの安定感を誇る上、今回も前半が速くならないであろうメンバー構成。引き続き自らに向いている舞台で戦えるのだから、連覇、そしてマイル王へ視界は良好だ。
◯シュネルマイスター
着外が4戦続いていたが、前走マイラーズCは1番人気の期待に応え、上がり32秒9をマークして復活勝利を果たした。この馬も東京芝マイルは【1-1-1-0】で、NHKマイルCを制した得意舞台。昨年の安田記念でも前述の通りスロー展開で2着に入っており、大崩れは考えにくい。1週前には重の美浦南Wで36秒6-11秒2をマークしており、前走よりも状態面で上向いていることは確か。好走率は極めて高いだろう。
▲ソダシ
ここ3戦は勝ちこそないが全て3着以内に入っており、馬券的な信頼度は高い。また、こちらも東京芝マイルは【2-1-0-0】で得意舞台である。前走のヴィクトリアマイルでは4角2番手から粘りに粘り、勝ちに等しい競馬を見せた。今回は川田将雅騎手と新コンビを組んで戦う。同じように運べれば、レース経験値の高さでしっかり好走してくれるだろう。
以下レッドモンレーヴ、ウインカーネリアン、イルーシヴパンサーまで印を回す。馬券は◎軸、◯以下相手の3連複とする。
▽安田記念予想▽
◎ソングライン
◯シュネルマイスター
▲ソダシ
△レッドモンレーヴ
×ウインカーネリアン
☆イルーシヴパンサー
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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