【高松宮記念】ドバイWC勝ち馬ヴィクトワールピサの牡馬筆頭産駒 ディヴィナシオンがGⅠ挑戦【マイナー種牡馬応援団】

緒方きしん

ヴィクトワールピサ産駒の通算成績,ⒸSPAIA

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日本の競馬ファンを元気づけたドバイWCでの勝利

先週の阪神大賞典ではノヴェリスト産駒のブレークアップが3着と好走した。輸入当初は多くの繁殖を集めたノヴェリストも、母マルセリーナの良血馬ラストドラフト以来なかなか重賞クラスの馬を出せず、2021年産の生産頭数は16頭まで落ち込んでいた。そんななか現れたブレークアップは、母父クロフネ、母母父キングズベストでサンデーサイレンスの血を持たない血統。昨秋のアルゼンチン共和国杯制覇から勢いに乗る同馬の今後に期待したい。

さて、今週からはついに春のGⅠが本格的に開幕。まずは高松宮記念が開催される。かつてはウォーニング産駒のサニングデールやダミスター産駒のトロットスター、マグニテュード産駒のマサラッキなど、多彩な血統の馬が賑わせた一戦。近年は開催日の関係でドバイのGⅠ競走とともに語られることも多く、どこか思い出が重なる人も多いかもしれない。今年はオーシャンSの2着馬ディヴィナシオンが出走を予定している。父はヴィクトワールピサである。

ヴィクトワールピサは、父ネオユニヴァース、母ホワイトウォーターアフェアという血統。半兄には安田記念の勝ち馬アサクサデンエン、小倉記念の勝ち馬スウィフトカレントがいる良血馬で、デビュー前から期待を集めた。ネオユニヴァースは初年度産駒からダービー馬ロジユニヴァース、皐月賞馬アンライバルドを輩出。ヴィクトワールピサはその2世代目の産駒でもあった。

デビュー戦ではのちに2歳王者となるローズキングダムと激突して2着になるものの、そこから破竹の5連勝。皐月賞を制覇する。同期にはエイシンフラッシュやルーラーシップ、ダノンシャンティなど、のちに種牡馬としても活躍する馬が多い世代でもあるが、ヴィクトワールピサはその中心的な存在であった。

ダービーで3着に敗れたヴィクトワールピサは、秋に渡仏してニエル賞4着、凱旋門賞7着と連敗したものの、帰国してジャパンCで3着と好走。暮れの有馬記念ではブエナビスタらを相手に勝利した。3歳の秋冬にフランス遠征を含め4戦して最後には勝ち切るという、タフさと強さを持ち合わせた名馬だった。

そしてヴィクトワールピサの真骨頂は翌年のドバイ遠征。古馬になったヴィクトワールピサは中山記念を快勝し、当時オールウェザーで開催されていたドバイWCに挑戦する。その年のドバイWCは、2011年3月26日の開催。東日本大震災の半月後と、日本全体が大いに沈んでいるように感じられる時期だった。そこでヴィクトワールピサはM.デムーロ騎手を背に快走。藤田伸二騎手・トランセンドとのワンツーフィニッシュを決め、遠い異国の地から日本の競馬ファンを元気付けた。

トルコから産駒の活躍を見守るヴィクトワールピサ

ヴィクトワールピサの種牡馬成績,ⒸSPAIA
ヴィクトワールピサ産駒の通算成績,ⒸSPAIA


引退後のヴィクトワールピサは、社台スタリオンステーションで種牡馬となる。その後、2018年から3年間をブリーダーズ・スタリオン・ステーションで過ごすと、2020年冬にはトルコへの輸出が決まった。

種牡馬ヴィクトワールピサは、初年度から桜花賞馬ジュエラーを送り出すと、2世代目はファルコンS勝ち馬コウソクストレートやTCK女王盃を勝ったミッシングリンク、3世代目は府中牝馬S勝ち馬スカーレットカラーを輩出。4世代目にはフローラS勝ち馬ウィクトーリアをはじめ3頭の重賞馬、そしてひとつとんで6世代目にはセントライト記念の勝ち馬アサマノイタズラがいるものの、実は5世代目の産駒はまだ重賞未勝利という状況だ。

ここは5世代目の産駒からもどうにか重賞馬を……と思いたくなるところに、冒頭で触れたディヴィナシオンが浮上した。

産駒のデータを見ると、芝でもダートでもやれているものの、勝ち星のおよそ3分の1(117勝)を占める芝1500m~1800mが得意な条件。勝率は8.3%で他のカテゴリより高くなっている。勝率では芝1400m以下(7.3%)が続くものの、勝利数と連対率では芝1900m以上が上回る。初年度のジュエラーは桜花賞を制し、続くコウソクストレートも1400mの重賞を勝利しているように当初はマイル以下の活躍が多かったヴィクトワールピサ産駒だが、アサマノイタズラが2200mの重賞を制するなど活躍の場は広がっている。新馬戦や条件戦クラスでは芝・ダートでそれほど大きな差はないが、これまでの重賞制覇の全てが芝レースであるあたり、大物は芝に寄る傾向が強そうだ。

また母父としても早くも活躍馬を輩出。ローズSなどを制しているアートハウス(父スクリーンヒーロー)、阪神JF2着のラブリイユアアイズ(父ロゴタイプ)はサンデーサイレンスの3×4のクロスを持つ馬で、京成杯の勝ち馬オニャンコポン(父エイシンフラッシュ)は濃いクロスを持たない。様々な種牡馬との相性の良さからも、改めてそのポテンシャルを感じさせてくれる。

重賞未勝利ながら、ヴィクトワールピサ産駒の獲得総賞金ランキング3位まで浮上しているディヴィナシオン。上はスカーレットカラー、ジュエラーの2頭、つまり牡馬の中ではナンバーワンの賞金額を積み上げたことになる。トルコにいるヴィクトワールピサに届く走りを、ここで見せつけたいところだ。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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