【スプリングS】ハイペースで目覚めたエアデジャヴーの血! ベラジオオペラは皐月賞でも一発あるか

勝木淳

2023年スプリングS、レース結果,ⒸSPAIA

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エアデジャヴー牝系といえば中山

皐月賞最終トライアルを制したのはベラジオオペラ。3連勝で皐月賞有力候補に躍り出た。なんといっても注目は血統だ。母エアルーティーンからさかのぼると3代母エアデジャヴーに行き当たる。98年牝馬三冠は3、2、3着でファレノプシスとエリモエクセルには敵わなかったが、母として秋華賞馬エアメサイアを輩出した。そのひとつ年上がエアシェイディ。08年AJCC1着、08、09年有馬記念3着のほかにも中山記念2、3着、AJCCは08年以外も2着2回。日経賞、中山金杯ともに2着1回と、とにかく中山で走った。

エアデジャヴーと中山でいえば、母アイドリームドアドリームから半弟エアシャカールが出た。00年皐月賞、菊花賞の二冠馬だ。エアデジャヴー牝系といえば中山巧者といっていい。そのストロングポイントを譲り受けたベラジオオペラのスプリングS勝利は皐月賞まで展望できる楽しみがある。エアデジャヴーもエアメサイアも直系は春のクラシックを勝てなかった。ちょっと奥手な血統だが、ベラジオオペラが3連勝でトライアルを勝利したことで、一歩前に進めた感もある。


1000m通過59.5以下はたった3例

さて、肝心のレースは雨上がりの重馬場で行われた。お昼前後までは外差し馬場だったが、次第に内が乾きはじめた難しい状況だった。GⅠで逃げたオールパルフェが距離延長を意識し控えたことで、ペースを握ったのは最内枠グラニット。前半600m35.4、1000m通過59.4はスプリングSとしてはハイペースに入る。

1986年以降、前半1000m59.5以下は今年を除くとたった3例しかない。90年アズマイースト、02年タニノギムレット、阪神芝1800mだった11年オルフェーヴル。どのレースも良馬場で、59.4は良馬場以外では最速になる。トライアルらしく流れないレースが多い中で、今年は特殊な流れになった。該当する3頭のうち2頭タニノギムレット、オルフェーヴルはクラシックV。底力がないと乗り切れない。

中団の前からきっちり差し切ったベラジオオペラの評価材料は血統だけではない。キャリア3戦で突っ込んで入った流れの持続力勝負を勝ちきったのは大きい。最近は皐月賞ですっかり影が薄くなったスプリングSだが、今年はフリームファクシのきさらぎ賞と同じく復権してもおかしくない予感がある。最後600mは12.4-12.2-12.6、37.2。このバテ合いのようなレースを制し、中3週での臨戦は気になるが、本番が厳しい条件下で行われるようなら再現まである。


2着ホウオウビスケッツも侮れない

厳しい流れだったので2着ホウオウビスケッツも評価が必要。レース前半1000mは12.3-11.2-11.9-11.9-12.1と息が入りにくく、先頭集団にとりついたホウオウビスケッツにとってかなりタフな流れだった。しかし、一旦抜け出して先頭の場面まで作った。前走フリージア賞も早めにペースアップするタフな競馬で、この2戦を見る限り、うかつに評価は落とせない。半兄ホウオウユニコーンは冬の小倉でやや重の芝2600mを勝ち、2勝目をあげた。スタミナ比べならベラジオオペラにも引けをとらない。

3着メタルスピードは道中、勝ったベラジオオペラと同じ位置のインにいた。ただし、4コーナー手前で勝ち馬が動いたときにこちらは反応しきれないところがあった。馬場の影響もあったが、中山2連勝は外回り1600mで今回は内回り1800m。コーナーがよりタイトになり、器用さを求められるコースで戸惑った部分もあったか。直線はいい脚を使っており、慣れてくるようなら面白い。

1番人気セブンマジシャンは6着。勝負所でベラジオオペラを目標に追撃を試みるも、思ったより進まず、手応えがかなり悪かった。重馬場のハイペースですっかりスタミナを奪われたようで、直線も伸びきれず。現状はもう少し体力というかタフさが欲しい。これを経験して強くなるのではないか。

2023年スプリングS、レース回顧,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。

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