【きさらぎ賞】わずか5頭の中央デビュー馬から重賞好走馬も ポテンシャル◎のヴァンキッシュラン【マイナー種牡馬応援団】

緒方きしん

ヴァンキッシュランの種牡馬成績,ⒸSPAIA

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群雄割拠の世代でダービーに出走した良血馬ヴァンキッシュラン

先週のシルクロードSには、父サクラオリオン・母父サクラプレジデントのカイザーメランジェが登場。2019年函館スプリントS以来の重賞制覇を目指したが、15番人気11着に敗れた。しかし、人気よりは上位にきており、5番人気キルロードには先着。8歳とベテランになったカイザーメランジェがもう一花咲かせることに期待したい。

さて、今週からは「マイナー種牡馬応援団」と題して、産駒が少ないながらも奮闘する種牡馬たちを取り上げていく。日曜中京メインで行われるきさらぎ賞は、ネオユニヴァースやサトノダイヤモンドといったクラシック勝ち馬を輩出してきた重賞レース。今回はその登録馬の中からデビュー12戦目となるトーセントラムに注目した。父はマカヒキらと同世代のディープインパクト産駒ヴァンキッシュランである。

ヴァンキッシュランはフランスのGⅠ馬リリーオブザヴァレーを母に持つ良血馬。セレクトセールでは1億9950万円の高値で取引された。オーナーは“トーセン”の冠名でも知られる島川隆哉氏だが、この馬にはトーセンの冠がつくことはなかった。

ヴァンキッシュランのデビューは7月の函館開催。単勝1.4倍の圧倒的な1番人気に推されたものの2着に敗れた。勝ち上がりには4戦を要したが、明け3歳の1月に初勝利をあげてからは一変。降着での2着を挟み、アザレア賞と青葉賞を連勝して4戦連続の1位入線。特に青葉賞はプロディガルサンやメートルダール、マイネルハニーといった素質馬を撃破する価値ある勝利だった。しかしマカヒキ、サトノダイヤモンド、ディーマジェスティといったディープインパクト産駒の素質馬が揃った2016年ダービーでは13着に沈み、その後に屈腱炎を発症。真の実力が不明なままダービーがラストランとなった。

少数精鋭のヴァンキッシュラン産駒

ヴァンキッシュランの種牡馬成績,ⒸSPAIA

ヴァンキッシュラン産駒の成績,ⒸSPAIA



引退後は島川隆哉氏が代表をつとめるエスティファームで種牡馬入り。初年度産駒は現4歳世代であり、中央デビューした2頭トーセンヴァンノとトーセンキャロルは、その名からも分かる通り生産エスティファーム&オーナー・島川隆哉氏である。

上記2頭はいずれも中央で勝ち上がりを果たしたばかりか、トーセンヴァンノはOP競走コスモス賞を制覇。また札幌2歳Sでもジオグリフ、アスクワイルドモアに次ぐ3着という実績を持つ。皐月賞にも出走し、前々走では2勝クラスを勝ち上がるなど、まだまだ勢いを感じる一頭だ。トーセンキャロルは岩手競馬に移籍すると、岩手競馬のオークスにあたるひまわり賞と、三冠目のOROオータムティアラを制し、岩手の牝馬二冠を達成した。

中央競馬で出走した産駒は5頭だけだが、うち3頭が勝ち上がり、複勝率31.6%と好成績。父が主戦場とした芝2400mよりも短い距離を得意とするようで、芝1200mでは【1-2-0-2】、芝1600m~芝1800mでは【​3-1-3-11】と特に優秀だ。その3勝は3〜5番人気であげたものであり、そのうち1戦は馬連176.2倍の高配当をもたらした。

2世代目となるトーセントラムは、父と同じく7月の函館デビュー。初勝利は6戦目と、やや父親を彷彿させる面もある。年明け初戦となったジュニアCでは、13番人気ながら上がり最速の末脚を繰り出して4着に食い込む好走。父の産駒は中央の芝2000m以上で【0-0-0-9】とまだ勝利はないが、父が得意とした距離に近づくのも確か。新境地で人気薄をくつがえす走りを狙う。

ヴァンキッシュランは母父Galileoのヨーロッパ血統のため、ディープインパクトとの相性のよさで知られるアメリカ血統をかけ合わせられる強みがある。実際、トーセントラムも母父はKingmambo系のアメリカ血統であり、今後もそういったスピード血統との配合で期待がかかる。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。


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