「大型馬は一度使ってから」はウソ? 東大HCが「馬体重」に関する通説を検証

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馬券予想のカギ「馬体重」

競馬予想のファクターのひとつに「馬体重」が存在する。3桁の数字という非常にシンプルながらきわめて奥が深い指標だ。たとえばパサパサで力の要るダートでは大型馬が恵まれる傾向が出やすく、好走候補を絞る助けになる一方、休み明けののちに馬体増で出走する馬について「成長」なのか「太め残り」なのか頭を悩ませることも。馬体重は馬券検討をときに明快に、ときに難解にする。

今週はそんな馬体重に関する2つのテーマ、「大型馬の休み明けは走らないのか」「冬の大幅馬体増は消しなのか」について調査。イメージで語られがちな条件について実際のデータを分析していく(データは2013年~2022年のものを参考とする)。

「大型馬は一度使ってから」ではない

大型馬(500kg以上)の休み明け 条件別成績,ⒸSPAIA


<大型馬(500kg以上)の休み明け 条件別成績>
全体成績【1090-953-977-11722】勝率7.4%/連対率13.9%/複勝率20.5%
芝【413-361-363-3676】勝率8.6%/連対率16.1%/複勝率23.6%
関西馬【626-540-560-6209】勝率7.9%/連対率14.7%/複勝率21.8%
ロードカナロア産駒【35-27-20-156】勝率14.7%/連対率26.1%/複勝率34.5%
※過去10年、「休み明け」は中12週以上

まずは「大型馬の休み明け」について検討する。なお「大型馬」は500kg以上、「休み明け」は中12週(≒3ヶ月休)以上と定義した。

結論から述べると、全体の好走率は大型馬以外(複勝率16.9%)のそれより高く、回収率も同様に優秀だった。

好走率自体は馬体重を問わず「非・休み明け」のケースより下がるのだが、大型馬の場合「非・休み明け」が単勝回収率78%、複勝回収率77%に対し、「休み明け」は単84%、複79%とむしろ上昇。「大型馬はひと叩きしてから」というイメージが妙味を高めている形で、鉄砲(休み明け初戦)となるレースから積極的に買ってよいようだ。以下回収率が優秀な条件をいくつか列挙する。

芝・ダートでは芝の方が狙いが立ちやすく、単勝回収率は98%と黒字域に限りなく近い。特に芝2400m戦では複勝率29.8%、単勝回収率188%と爆発力を発揮しており、不当に人気を落としている馬を探して買いたいところだ。

所属別では関西馬が単勝回収率100%でリード。代表的なのは西村真幸調教師【17-16-12-56】複勝率44.6%、複勝回収率159%、藤原英昭調教師【14-22-17-90】複勝率37.1%、単勝回収率182%。特に藤原英師の管理馬は「叩いてパフォーマンスを上げる」という印象が人口に膾炙しているが、平場などではそれを逆手にとってみるのも面白そうだ。

種牡馬別ではロードカナロア産駒を推奨。単勝回収率130%、複勝回収率112%の優良物件で、昨年の京阪杯でもキルロードが10番人気ながら2着に食い込んで高配当の立役者となった。昨年こそ単勝回収率85%にとどまったが、2019年136%、2020年164%、2021年185%とかなりのポテンシャルがありそう。該当馬がいれば買い目に入れておきたい。

「冬の大幅馬体増」は条件で対応を変えたい

12月~2月の大型馬体増 条件別成績,ⒸSPAIA


<12月~2月の大型馬体増 条件別成績>
全体成績【761-752-780-10040】勝率6.2%/連対率12.3%/複勝率18.6%
東京ダート【53-36-50-648】勝率6.7%/連対率11.3%/複勝率17.7%
中山ダート【111-123-109-1953】勝率4.8%/連対率10.2%/複勝率14.9%
※過去10年、「大幅馬体増」は前走比+10kg以上

次に「冬の大型馬体増」について、12月~2月に前走比+10kg以上で出走してきた馬の成績をチェックする。

複勝率は18.6%、3月~9月の19.0%に比べると若干劣るものの微差。単複回収率はほぼ同じだった。気にするほど成績が悪化するわけではないが、逆に喜び勇んで買うほどの材料もない。

成績が動く例としては東京ダートが代表的で、単勝回収率122%は3月~9月の49%とは雲泥の差。特にダート1400mでは単勝回収率154%と素晴らしい。根岸Sでは該当馬の出走があった直近3レースで全て勝ち馬が出ており(2016年モーニン、2018年ノンコノユメ、2022年テイエムサウスダン。いずれも+10キロでの出走)、今年もチェックが必要だろう。

逆に悪い方に傾くのは中山ダートで、単複回収率は60%台。3月~9月に比べ20%以上の落ち込みを見せている。昨年も特別戦では単勝回収率19%と目を覆いたくなる結果だった。純粋な脚力の比重が大きい東京に対し、繊細で機敏な立ち回りを要求される中山では馬体増による悪影響が出ている可能性がある。人気を集めていても過信は禁物だ。

馬体重別休み明け成績,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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