【阪神JF】ラヴェル、リバティアイランド中心 リバーラの出方次第で浮上する札幌2歳S組
勝木淳
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関東馬が奮戦
牝馬クラシックは初戦桜花賞までずっと阪神芝1600mで大レースが行われるため、つながりが強固。今年こそ阪神JF未出走だったスターズオンアースが勝利したが、2、3、4着は阪神JF3、5、1着馬。またこのうち2、4着は同舞台のトライアル・チューリップ賞5、3着。阪神JFの結果は桜花賞路線に大きく影響を与える。今年の二冠馬スターズオンアースが桜花賞7番人気の伏兵扱いだったのは、桜花賞路線のつながりから外れていたからだろう。
今年の阪神JF、登録はなんと29頭。ここを通らなければ桜花賞は見えてこない。各陣営の思惑が一致した証だろう。データは過去10年間を使用する。
1番人気は【4-1-0-5】勝率40.0%、複勝率50.0%。半数が馬券圏外、もう半数は2着以内、そのうち4頭が勝利したわけで、やや極端。2~4番人気は横一線で、5番人気【3-0-0-7】勝率、複勝率30.0%とここも極端。基本的には5番人気以内が強力で実力通りの決着は多い。ただ10番人気以下【0-2-1-85】複勝率3.4%など伏兵の2、3着は可能性あり。とはいえ、おおむね5番人気以内に狙いを定めてよさそうだ。
東西所属別の成績では地元の栗東【6-6-5-106】勝率4.9%、複勝率13.8%に対し美浦が【4-4-5-42】勝率7.3%、複勝率23.6%。数で見劣る関東馬だが、確率の上ではリード。今年も出走確定の2勝馬のうち関東馬はウンブライル、キタウイング、サンティーテソーロ、ミシシッピテソーロ、ミスヨコハマ、モリアーナ、リバーラの7頭。今年も質が高い。関西馬3着以内独占はこの10年で18年のみ。関東馬の取捨選択がカギになる。
今年もアルテミスSとファンタジーSの比較がポイント
では具体的にどんな臨戦過程がいいのか。前走データを参考にしつつ、その傾向をつかみ、取捨をはっきりさせよう。
キャリアが浅い組同士とはいえ、1勝目をあげたばかりが多く該当する前走新馬・未勝利は【0-0-1-23】。さすがにGⅠは厳しく、前走GⅢ【8-4-6-57】勝率10.7%、複勝率24.0%と重賞経験がほしい。
前走GⅢについて内訳をみると、前哨戦のアルテミスS【4-3-3-16】勝率15.4%、複勝率38.5%、ファンタジーS【3-0-2-32】勝率8.1%、複勝率13.5%がやはり目立つ。前者は1~3着ラヴェル、リバティアイランド、アリスヴェリテ(抽選対象)など5頭。後者は1、2着リバーラ、ブトンドールなど4頭が登録した。
今年のアルテミスSはラヴェルが上がり最速33.0を繰り出し、追い込みを決めたが、このレースは前後半800m47.8-46.0の超スローペース。最後600m33.8でアリスヴェリテがまんまと逃げきってもおかしくない競馬。これを瞬発力で逆転したラヴェルはスケールが違う。2着リバティアイランドは馬群に入る形になり、上がり33.3。スムーズさを欠いた分であり、これでアリスヴェリテに先着、2着まできたリバティアイランドも侮れない。この2頭の力は抜けている。
その結果を反映するかのように、前走アルテミスSは1着【3-1-1-3】勝率37.5%、複勝率62.5%、2着【1-1-1-2】勝率20.0%、複勝率60.0%と好走が条件。5着【0-1-0-3】複勝率25.0%、6~9着【0-0-1-3】複勝率25.0%など凡走からの巻き返しも穴に一考。5着マラキナイアは抽選対象だが、ミシシッピテソーロが該当。スローの瞬発力勝負ではなく、ダリア賞のような平均ペース以上と読むなら、穴候補に入れたい。
リバーラが逃げ切ったファンタジーSはアルテミスSと対照的な流れで、前後半600m34.5-35.0。11秒台が続き、スピード色が強く、持続力勝負の競馬だった。逃げ切ったリバーラはラヴェルやリバティアイランドと対照的な適性の持ち主。今回も再度先手を奪うようなら、アルテミスS組は前走とは異なる適性を問われる。しかし生粋の逃げ馬でもなさそうで、今回控えるなら他馬に主導権を握られ、スローに落とされる懸念もある。先陣争いはポイントになりそうだ。
ファンタジーSの着順別成績はさらに厳しく、3着以内【3-0-2-12】、4着以下【0-0-0-20】。そもそも2着以内に入って賞金加算しないと、抽選・除外の可能性があるので、こういったデータになるのは仕方ないが、それにしてもシビア。今年はリバーラとブトンドールが該当する。リバーラは距離延長と将来を考えると控える競馬をしたいところだが、あえて積極的な競馬を心がけてもいいのではないか。
今年は牝馬のワンツーだった札幌2歳S1、2着ドゥーラ、ドゥアイズに注目。札幌2歳Sから直行といえば、13年5番人気レッドリヴェールがハープスターを破ったローテ。今年のレースは前半1000m通過1.01.5だが、残り1000mから12.2-12.2-12.3-11.9-12.1と早めにギアがじわりと入った。洋芝の札幌最終週だったことを考えれば、タフな流れで先行勢には辛かった。まくった1、2着馬はスピード勝負では見劣るも、時計が最後にかかるような展開なら浮上する余地はある。思えばレッドリヴェールの年も前後半800m46.3-47.6と瞬発力よりスタミナを問う流れだった。
最後に前走オープン・Lの好走はアイビーSのみで1600m以下は【0-0-0-14】。データ上の可能性としてはコスモス賞を勝ったモリアーナ。また1勝クラスの赤松賞は【0-0-1-9】。昨年1番人気4着ナミュールなど結果を出せていない。ミスヨコハマも難しいか。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』『競馬 伝説の名勝負 GⅠベストレース』(星海社新書)に寄稿。
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