【京王杯2歳S】オオバンブルマイがハイセンスで波乱演出 大敗ロンドンプランに感じる2歳重賞の難しさ

勝木淳

2022年京王杯2歳S回顧,ⒸSPAIA

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10番人気オオバンブルマイがV

最近10年で3度目のフルゲート18頭立てとなった京王杯2歳Sは、10番人気オオバンブルマイが勝利。2着11番人気フロムダスク、3着5番人気スピードオブライトで3連単222万円の大波乱決着。1~3番人気総崩れはエーシントップが勝った2012年以来10年ぶりだった。

波乱の使者がオオバンブルマイとは洒落た決着だ。大盤振る舞いという言葉は諸説あるが、江戸時代、正月に一家の主が親類縁者や近隣の住民を招いて開く宴会、「椀飯振る舞い」が転じたものと言われる。聞き慣れない椀飯という言葉は平安時代に儀式後に公卿たちに供される膳のことをさし、武士の世では将軍家に諸大名が祝膳を奉る儀式になった。いずれにしろ、祝い事に関する言葉だったので、大盤振る舞いは気前よく盛大にもてなす意味で使われ、競馬場でも大穴馬券を的中させた人が仲間たちに酒をおごる姿を指して羨ましがられたりする。

馬主の岡浩二氏はゴライコウのJBC2歳優駿に続き中1日での重賞勝利。いずれも縁起のいい馬名。オーナーは今週連覇を狙うキズナ産駒のアカイイトなど命名センスが高い。オオバンブルマイもゴライコウも来年が楽しみだ。

オオバンブルマイはキャリア1戦で勝った。キャリア1戦の勝利は15年ボールライトニング以来7年ぶり、86年以降で3頭目の記録。いずれも前走1400mの新馬であり、キャリアが浅いほど距離変化に敏感だ。また関西馬の連勝記録は5に伸びた。

立て直しを迫られるロンドンプラン

レースの主導権を担ったのは2着フロムダスク。前後半600m34.6-34.5で平均的な流れを演出。決して遅くもないが、この流れでリズムを乱す馬が多かった。これは400m通過後から3コーナーにかけて11.6-11.8とペースダウンした地点でのこと。フロムダスクの絶妙なペースコントロールに翻弄された。頭の高さなど若さも見えるキャリア3戦目で、これだけの競馬ができるフロムダスクは今後も先手をとれる相手関係で注目したい。

勝ったオオバンブルマイはフロムダスクのペースに惑わされず真後ろから競馬を進めた。リズムを乱されないインのポケットに入り、最後の直線では粘るフロムダスクについて行く形で進出を開始。直線半ば過ぎ、フロムダスクと番手にいたスピードオブライトを交わしに外へ出す。そのタイミング、必要最小限の動き、横山武史騎手の手腕が光った。オオバンブルマイもフロムダスクと同じくレースセンスが高い。今後も混戦で力を発揮するのではないか。

ただし、レース後半600mは11.2-11.5-11.8と直線は失速ラップ。最後にスピードを問われないラップ構成になった点は今後に向けて注意したい。最後の600mタイム1~3位は8、7、6着で控えた組が力を出しきれない競馬でもあった。

人気馬総崩れの要因にもなったのが、フロムダスクのペース配分。1番人気14着ロンドンプランはペースダウンした地点で行きたがってしまった。前走小倉2歳Sで課題が残ったゲートは今回決められたものの、大外枠で前に壁がなく抑えられず。また3コーナー手前で脚を使ってしまったため、最後の直線では前走のような末脚が残っていなかった。小倉2歳Sの内容からスケールはあり、距離延長も適性としてはプラスにちがいない。それだけにこの敗戦でかけ違いが起こったとなると、今後は立て直しが急務。3歳春までの時間は我々が考えるよりも短く、この時期にリズムを乱すとなかなか戻りにくい。賞金はあるので、一旦休養で時間を作るのも選択肢の一つだ。

キャリアは浅いが春までの時間は限られる。賞金加算のためにレースへ出走させなければその権利を得られない。しかし、レースに出れば、その分、体力を消費しリズムを崩すリスクを背負う。そこを縫うようにクリアしていく。各陣営はこの時期、難しいかじ取りを強いられる。このレースではその一端が垣間見えた。


2022年京王杯2歳S回顧展開,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『テイエムオペラオー伝説 世紀末覇王とライバルたち』(星海社新書)に寄稿。

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