【アルゼンチン共和国杯】指数上位のテーオーロイヤル、ヒートオンビートが有力 展開味方に逆転狙える魅力の穴馬2頭

山崎エリカ

2022年アルゼンチン共和国杯出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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3角8番手以内がウイニングポジション

東京芝2500mで施行されるレースは、1年間で目黒記念とアルゼンチン共和国杯の2レースのみ。しかし、2019年、2020年の目黒記念を2着したアイスバブルは、2019年のアルゼンチン共和国杯で11着、2020年は12着に敗れているように、この2レースは展開が逆になることも少なくない。

日本ダービーの熱が冷めやらぬ中で行われる目黒記念は、馬場の内側が悪化していることもあり、最後の直線で馬場の良い外を争奪するかのように、レースが緩みなく流れる傾向がある。一方、アルゼンチン共和国杯は馬場の内側が悪くないこともあり、ペースが上がらないことが多い。実際に同年の目黒記念とアルゼンチン共和国杯を連覇した馬や、連続連対した馬は過去10年はゼロ。

しかし、ここ2年の目黒記念は前に行ける馬が手薄で隊列が縦長になったこともあり、アルゼンチン共和国杯のような流れになった。今年の目黒記念では、昨年のアルゼンチン共和国杯2着のマイネルウィルトスが目黒記念で同様の捲りを見せ、2着に善戦した。それはそういった背景があったからだろう。アルゼンチン共和国杯は、基本的に3角で中団より前の位置(過去10年の勝ち馬は8番手以内)にいないと厳しく、それを踏まえて予想を組み立てたい。

能力値1~5位馬の紹介

2022年アルゼンチン共和国杯出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 テーオーロイヤル】
休養明けで大幅距離延長となった今年2月のダイヤモンドSで重賞初制覇を達成した馬。同レースは単騎で逃げるグレンガリーから離れた4番手を追走。3~4角で外から2列目に並びかけ、ラスト1Fで突き抜けての優勝。とても強い内容だった。

本馬はその次走の天皇賞(春)でも、タイトルホルダーの単騎逃げから離れた3列目の内を進み、3角で中目から外に誘導して2番手まで上がり、4角ではタイトルホルダーに迫って3着。ラスト1Fではディープボンドに1馬身交わされたが、ここでも上々の内容だった。

休養明けの前走オールカマーは距離が短かったこともあるが、Cコース替わりの中山芝2200m戦で、馬場が内から乾いていったこともあり、圧倒的に内有利だった。実際に最内を通った1~3番枠の馬と、13番枠から逃げたバビットが4着以内を独占。テーオーロイヤルは10番枠で、終始好位の外からの競馬となったことが敗因だろう。

本馬は長距離がベストの馬ではあるが、4走前の阪神2400mの3勝クラス・尼崎Sでオープン級の指数を記録し勝利しているように、芝2500mくらいでも悪くない。3走前のように序盤から急がせることなく、ゲートを出たなりで動いていけばチャンスは十分ある。

【能力値2位 ヒートオンビート】
重賞で2着3回、3着2回、近6走の重賞では5着以内と安定感を見せている馬。重賞2着3回中の1回が昨年の目黒記念である。同レースは前半5F64秒0-後半58秒0のウルトラスローペース。前2頭から離れた3~4列目の最内を追走していたが、3角で前との差が絶望的となり、そこで動こうとしたが、ダンスディライトに蓋をされており動けず。

4角で前がペースを落としたところで、最内から差を詰めて直線へ。序盤で外目に出されたが、進路確保が難しく、結局あまり伸びない中目を走り、ラスト2Fで2番手まで上がった。最後まで前のウインキートスとの差は詰められなかったが、上々の内容だった。

本馬は4走前の日経賞でも前半3F63秒6-後半3F59秒0の超絶スローペースを2列目の外で進め、タイトルホルダーとクビ+クビ差の3着と好走。このレースでは自己最高指数タイを記録していることから、今回の距離はベスト条件と言えるだろう。

前走の新潟記念は、休養明けの七夕賞で日経賞と同等の指数を記録した反動が出て5着に敗れた。前走は二の脚が速く、2列目の外を追走していたが、最後の直線で後続馬がさらに馬場の良い外に出したことで、そちらの方が態勢優位になったのも敗因。2着のユーキャンスマイルとは通ったコースの差と言えるだけに、今回は巻き返せるだろう。ただし、今回は16番枠。ある程度前の位置を取りに行こうとした場合、外々を回らされることになるのが不安材料である。

【能力値2位 ボスジラ】
前走で芝2600mの丹頂Sを勝利しているステイヤー。本馬は3年連続で丹頂Sで連対しており、とても長距離適性が高い。ただ過去2年とも丹頂Sを連対した次走で凡退していることは、今回も気掛かりな材料。昨年も丹頂S2着後のこのレースでは、上手く息を入れて逃げたが15着に失速している。

やはりタフな札幌芝2600mで好走した後にひと息入れた形だと、疲れは多少軽減されても、スタミナ面がやや落ちてしまうのかもしれない。能力の高さは確かだが、前走から大きな上昇となると微妙だ。

【能力値4位 ラストドラフト】
3歳に京成杯を勝利し、暮れの中日新聞杯で2着した素質馬。古馬になってからも2度のAJCC3着や、アルゼンチン共和国杯2着の実績がある。昨秋以降はスランプ状態で伸びきれないレースが続いたが、前走のオクトーバーSでは久々に2着と好走した。

ただ前走はショウナンマグマが緩みないペースで逃げたことで、好スタートを切って控え、中団後ろの中目で脚をタメたのが上手くハマったレースぶりだった。若い頃のように外から動いて行く、勝ちを意識した差し競馬ではなかった。

前走は2着と好走したが、指数はそこまで高くなかった。その点は大きな疲労を残しにくいという意味では好感を持てるが、全幅の信頼をおけるかは微妙である。

【能力値5位 ダンディズム】
昨秋の新潟芝2200mの1勝クラス・岩船特別を休養明けながら1クラス上でも通用する好指数で快勝し、力をつけたことを感じさせた馬。そこからはレースを順調に使われ、前々走では3勝クラス・御堂筋Sを勝利した。

前走の目黒記念は極端なスローペースで3角3番手以内馬が上位を独占した中、後方中目から勝ち馬と0.3秒差の7着に入り、オープンでも通用する可能性を見せた。

ただ今回はそれ以来の休養明けの一戦。ここまでの戦績は叩かれて少しずつ上昇する傾向を見せており、いきなり重賞で馬券圏内突入までとなるとどうか。ゲートに不安のある追い込み馬だけに、展開上も微妙だ。

【能力値5位 レインカルナティオ】
今年初戦となった2勝クラス・富里特別を勝利すると、昇級後の3勝クラスでも差のない競馬を続け、前々走の五稜郭Sでは3着馬を引き離しての2着。そして前走は3勝クラスのムーンライトHを勝利し、オープン馬となった。

本馬は芝の1600mから1800mを主戦場としていただけに、前走で芝2200mを初距離ながら勝利したことは価値がある。前走は出遅れて後方2番手からレースを進め、向上面の外からじわじわ位置を上げていく競馬。超絶高速馬場ではあったが、エンスージアズムが大逃げを打ったことで、やや展開に恵まれたのも確か。しかし、レースを順調に使えている強み、距離が伸びて上昇を見せた点は侮れない。

魅力のある穴馬は2頭

【カントル】
ダービー馬ワグネリアンの全弟ということで早くから期待が高かった馬。しかし、期待されたほどはすんなり上昇せず、3勝クラスを勝ち上がれない成績だった。しかし、球節炎による1年1ヵ月の長期休養明けとなった前走の3勝クラス・佐渡Sでは難なく勝利を決めた。

前走はやや出遅れ、そこから前に行こうとして折り合いを欠くシーンがあった。最終的には折り合いがついて中団の外目で我慢。4角では前のダノンレガーロを壁にして仕掛けをワンテンポ待ち、直線でさらに外に出されると、そこからしぶとく伸びて勝利した。ややスムーズさを欠く競馬ながら、休養明けで結果を出したことは、休養期間中に大きく成長した可能性を感じさせた。

今回は前走から再びレース間隔を開け、疲れをとりながらの臨戦。3走前の緑風Sは、逃げ馬から2馬身ほど後ろの外2番手から、3角でワンテンポ仕掛けを待ち、4角でじわっと進出して直線へ。ゴール手前で一旦先頭に立ったところを、外からアイアンバローズに差されてのハナ差2着だったが、ここでは芝2400m適性の高さも見せた。

アイアンバローズはその後のステイヤーズSや阪神大賞典で2着と好走した馬。カントルとクビ差の3着だったシルヴァーソニックもその後のステイヤーズS、阪神大賞典ともに3着と好走している。カントルも大きく成長しているならば、ここでも十分通用してもいい素質馬だ。

【アフリカンゴールド】
デビュー当初は芝2000mを使われていたが、芝2400m級のレースで台頭した馬。1000万下の兵庫特別では好指数を記録して勝利し、菊花賞では伏兵視された。また2019年のアルゼンチン共和国杯では、中団からの競馬で3着の実績もある。

その後に長い低迷期があったが、昨年終盤から復調。中日新聞杯ではショウナンバルディとの行った、行ったの2着。その次走となった今年の京都記念(阪神芝2200m)では、12番人気ながら潜在的なスタミナを生かして見事に逃げ切った。

前走は休養明けで自分の形に持ち込めず12着と大敗。しかし今回は同型馬不在で先行勢も手薄なメンバー構成。初ブリンカーがプラスになるかはやってみないと分からないが、自分のリズムで潜在的なスタミナを生かせば、再びアッと言わせる可能性は十分ある。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)テーオーロイヤルの前々走の指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の茶色線はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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