【富士S】超ハイレベルな前哨戦を制したのはセリフォス! 上位好走馬は本番通用の可能性大

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陸上でいえば400m走のような競馬
マイルチャンピオンシップの前哨戦である富士Sは昨年のソングラインに続き、セリフォスが勝利し、2年連続3歳馬が勝った。これで3歳マイル王ダノンスコーピオンに2勝1敗。これから先も楽しみなライバル関係だ。セリフォスはこの勝利で4勝目、重賞はGⅡ以下3戦全勝、対してGⅠは【0-1-0-2】。歯がゆさもあるが、4着1回は古馬相手の安田記念。経験値はキャリア以上に積んだ。次の目標は明確であり、迷いはない。
3着ダノンスコーピオンもセリフォスと同じ休み明けではあったが、別定で56キロと54キロ、斤量差2キロは非常に大きい。ダノンスコーピオンがGⅠ馬であるがゆえのできごとで、ダノンスコーピオンは悲観すべきものはない。今後このレースを分析する上ではGⅠ馬の休み明けという割り切りは必要だ。クビ+クビ0.1差はないに等しい。次がマイルチャンピオンシップなら定量戦であり、斤量差はない。セリフォスはそこで勝ってこそ、一段上へ進める。
肝心の富士Sの内容だが、一言でいえば非常に優秀。確かに東京競馬場の良好な芝の恩恵はあったが、前半600m34.3、800m46.0とアルサトワとアオイクレアトールが演出した流れに緩みはなく、400~600m地点の11.3は息が入りにくいラップ。人間でいえば、まるで無酸素運動の限界である400m走のようなレースだった。
このペースで縦長にならず、レースは一団で進み、後半800mも同じ46.0、最後600mは34.2。極限の我慢比べで失速するわけではなく、最後までそこそこ脚を使えないと勝てない競馬だった。そこを34.2で乗り切られては、上位争いは限られる。実際、先行馬は沈み、脚を溜めた組も上位争いには至らず、唯一は4着ピースオブエイトぐらい。1~3番人気が上位独占。その着差0.1に対し、4着は3着と0.3差だから、4着以下をマイルチャンピオンシップで狙うのは難しそうだ。
4着ピースオブエイトはマイル経験を積めば
勝ったセリフォスは中団後ろにつけ、ダノンスコーピオンとソウルラッシュの背後につく形。目前にいる目標が4コーナーで外へ動いたときもセリフォスは動かなかった。手応えも十分あったが、なにより藤岡佑介騎手がセリフォスを1ミリも疑っていなかった。ソウルラッシュの外に行き、本格的に追い出したのは残り300m付近。上記の通り、ラップ的には非常に厳しく、残り600mは11.3-11.2-11.7で、先に追い出した順にゴール前で苦しくなるような構成。最後に追い出したセリフォスはドンピシャだった。
2着ソウルラッシュ、3着ダノンスコーピオンとの関係はまさにこれ。前の位置から動いた順に最後甘くなっていった。この3頭はぜひともマイルチャンピオンシップで買いたいところだ。
2着ソウルラッシュはマイラーズCではハイペースを4コーナー13番手から上がり34.1でごぼう抜き。その前は好位抜け出しと、まだまだ競馬の形が定まっていない。自在型といえばそうだが、やはりGⅠを勝つだけの決め手、つまり武器がほしい。言いかえれば、まだまだ伸びしろたっぷりだ。今回はダノンスコーピオンと枠が近かったので、これを見る形を選択、中団から最後までしっかり伸びた。ルーラーシップ産駒らしく、やや遅咲きな印象が強かったが、いよいよ本格化といっていい。
3着ダノンスコーピオンは斤量面のハンデがあり、結果は惜しかったが、上々のすべり出し。こちらも今回は積極的な競馬だったが、おそらく休み明けで外枠だったこともあり、ダノンスコーピオンにストレスを与えないように、ある程度馬に任せる競馬だったのではないか。気分よく前哨戦を走っての3着なら、なんらマイナス材料はない。
同じく3歳ピースオブエイトは4着。マイルでは上位とは差がありそうだが、春は中距離中心で日本ダービーまで駒を進めた好素材。マイルは適性を感じるので、慣れれば対応できる。今回は初のマイル戦としては流れが強烈すぎた。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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