【菊花賞】東西対決にも注目の長距離GⅠ 関東馬の連敗を16で止めたフィエールマン

緒方きしん

菊花賞過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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混戦模様の菊花賞、平穏決着となるか?

秋華賞はいわゆる“薔薇一族”のスタニングローズが勝利。牝馬三冠を狙ったスターズオンアースは3着に敗れたが、上位人気3頭での手堅い決着となった。

さて、今週は菊花賞が阪神競馬場で行われる。3歳牡馬クラシックの最終戦として、日本競馬の黎明期にはクリフジやトサミドリ、メイヂヒカリやキタノオーといった歴史的名馬が勝利。90年代にはメジロマックイーンやライスシャワー、ダンスインザダークやセイウンスカイなど、00年代にもエアシャカールやマンハッタンカフェ、ヒシミラクルなど、今なお愛される面々がこの伝統の一戦を制している。

今年は混戦模様と言われているが、未知数でありながらも将来性十分な素質馬たちが集まった。昨年の勝ち馬タイトルホルダーが、現役最強クラスの評価を得るようになる第一歩だったとも言える菊花賞。今年の出走馬からも、そういった存在が出てくる可能性はあるだろう。

長距離戦ということで血統も注目される菊花賞。キタサンブラック産駒ガイアフォースやエピファネイア産駒ヴェローナシチーといった親子制覇を狙う種牡馬の産駒、シンボリクリスエス産駒ヤマニンゼストやスクリーンヒーロー産駒ボルドグフーシュなどベテラン種牡馬の産駒も参戦を予定し、非常に多彩な面々が揃ったと言える。今回はそんな菊花賞の歴史を振り返る。

2017年には波乱も

菊花賞過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で1番人気は2勝。コントレイル、キセキが人気に応えた。コントレイルが勝利した2020年は、2着に4番人気アリストテレス、3着に5番人気サトノフラッグという決着。しかし2番人気ヴェルトライゼンデ、3番人気バビットからは離れた4・5番人気だったため、2頭のワイドは27.8倍となかなかの配当がついた。

昨年の1番人気はレッドジェネシス。春には京都新聞杯を制し、秋初戦の神戸新聞杯でも2着という実績に加え、菊花賞で好成績のディープインパクト産駒であったことも人気の後押しとなった。ただ、GⅠの舞台ではダービー11着に続き菊花賞でも13着と大敗した。過去にはワンアンドオンリーやハーツクライなども1番人気に推されながら大敗した。

泥んこ馬場となった2017年は1番人気キセキが2着に2馬身差をつける快勝だったが、2着には10番人気クリンチャー、3着には13番人気ポポカテペトルが入り、馬連が106.6倍、三連単が5597.0倍という波乱決着となった。ただ、近年はやや平穏な決着が多いように感じる。

関東馬の連敗を16でとめたフィエールマン

90年代以降、関東馬の勝ち星は全部で6つ。1991年にトウカイテイオー不在のなかレオダーバンが勝利し、翌年にはライスシャワーがミホノブルボンを撃破して関東馬が連勝を収めた。1998年にはセイウンスカイがスペシャルウィークを、2001年にはマンハッタンカフェがジャングルポケットらを撃破している。

しかしマンハッタンカフェの勝利以降は2002年のヒシミラクルから2017年のキセキまで関西馬が16連勝と圧倒。この16年間のうち、馬券圏内にきた関東馬は2004年のホオキパウェーブ(2着)と2007年のロックドゥカンブ(3着)、2014年のゴールドアクター(3着)のみだった。

しかし、そんな潮目が変わったのが2018年。流れを変えたのは、美浦・手塚貴久厩舎に所属するフィエールマンだった。

フィエールマンは年明けのデビュー戦を出遅れながら勝利すると、2走目は4月の条件戦・山藤賞。同期らが同じ中山競馬場で皐月賞を走る前日、フィエールマンはスタートで出遅れつつも悠々と勝利。メンバーにはのちの重賞勝ち馬トーセンスーリヤや、オープン勝ち馬ライラックカラーもいたが問題にしなかった。そして3戦目はダービーが終わってしばらくした7月のラジオNIKKEI賞。3戦連続で出遅れたフィエールマンは、好位から抜け出したメイショウテッコンを猛追したものの届かず2着に敗れた。ここで休養に入り夏を越し、直行で挑んだのが菊花賞だった。

7番人気のフィエールマンは、菊花賞のステップレースをスキップしていたものの、仕上がりは良好。デビュー以来、初めて出遅れずにスタートすると、中団やや前にポジションを確保。そしてそこから上がり最速タイの末脚を繰り出すと、2番人気エタリオウとの競り合いを制して栄冠を掴み取った。

2着のエタリオウをはじめ、3着ユーキャンスマイル、4着ブラストワンピース、5着グローリーヴェイズと、長くファンに愛される名馬が揃った一戦。下位で入線した馬たちにも、ステイフーリッシュやアフリカンゴールドなど7歳を迎えた今もなお、ファンを魅了する馬たちが名を連ねている。そんな菊花賞をフィエールマンが制したあたりから、関東馬の逆襲が徐々に始まったのかもしれない。

今年も阪神開催、昨年の再現なるか

2020年には美浦・国枝栄厩舎に所属するサトノフラッグが1着コントレイル、2着アリストテレスに続く3着と好走。5着には同じく関東の相沢郁厩舎、ブラックホールが入った。そして京都競馬場の改修に伴い舞台が阪神に移った昨年は1着タイトルホルダー(美浦・栗田徹厩舎)、2着オーソクレース(美浦・久保田貴士厩舎)と、関東馬のワンツー決着。菊花賞で3着以内に関東馬が2頭きたのは、1990年の2着ホワイトストーン、3着メジロライアン以来31年ぶりだった。

今年も同じ阪神競馬場でその流れが続くだろうか。関東馬としては、ダービー3着でセントライト記念2着のアスクビクターモア、春には毎日杯で3着となり前走で条件戦を制したドゥラドーレスが注目だろうか。アスクビクターモアは既に世代上位の実力を証明済み。ドゥラドーレスは菊花賞が大得意なディープインパクトと同牝系であり、父は昨年覇者タイトルホルダーの父でもあるドゥラメンテ。血統的な魅力は十分だ。

もちろん、対する関西勢も黙っていない。特に杉山晴紀厩舎は神戸新聞杯をジャスティンパレス、セントライト記念をガイアフォースで制して勢いに乗る。今年の菊花賞は、どの馬が勝つだろうか。関西勢vs関東勢という観点でも、ぜひご注目いただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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