【秋華賞】12年の三冠牝馬アパパネは母娘制覇達成 今年はスターズオンアースが三冠に挑戦
緒方きしん
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三冠牝馬誕生なるか?
毎日王冠は5歳馬サリオスが復活勝利を挙げた。ここ7戦はGⅠに挑戦し続けてきた同馬。今回は2020年毎日王冠(勝利)以来となるGⅡ出走だったが、力強い走りで勝利を掴み取った。成長力のあるハーツクライの産駒として、さらなる活躍が期待される。
さて、今週は秋華賞。牝馬三冠を目指すスターズオンアースに注目が集まる。紫苑S勝ち馬スタニングローズ、ローズS勝ち馬アートハウスといったトライアル組に加え、クイーンS10着からの巻き返しを図るウォーターナビレラやオークス3着以来の実戦となるナミュールなど、面白いメンバーが揃った。上がり馬にも魅力的な馬は多く、盛り上がるレースとなりそうだ。
過去にはメジロドーベルやテイエムオーシャン、カワカミプリンセスやダイワスカーレットが勝利。近年もクロノジェネシスやディアドラといった魅力ある牝馬たちがここを制している。今回は牝馬三冠の最終戦・秋華賞の歴史を振り返る。
1番人気は明暗が分かれる
ここ5年、1番人気馬は2勝。アーモンドアイ、デアリングタクトという2頭の三冠牝馬が誕生したが、一方でソダシやダノンファンタジー、アエロリットが1番人気で敗れている。その3頭はいずれも掲示板外に敗れているため、明暗がハッキリと分かれたと言える。
単勝オッズ1桁台の馬が4頭いた昨年は人気の中心ソダシが10着に大敗したものの、1着アカイトリノムスメ(4番人気)、2着ファインルージュ(2番人気)、3着アンドヴァラナウト(3番人気)と、人気馬が上位を独占。ディアドラが勝利した17年も2着は4番人気のリスグラシュー、3着は5番人気のモズカッチャンと、人気馬での決着だった。
20年には2着に10番人気マジックキャッスルが入り、19年には同じく10番人気のシゲルピンクダイヤが3着と好走。しかし最後に馬連が万馬券となったのがブラックエンブレム・ムードインディゴで決着した08年と、長らく大荒れの秋華賞がないというのも事実だ。
母としても活躍する12年秋華賞の上位馬たち
08年に波乱を巻き起こした2頭は、引退後に繁殖牝馬としても活躍。ブラックエンブレムは札幌2歳S勝ち馬ブライトエンブレムやフローラS勝ち馬ウィクトーリアらを輩出。ムードインディゴも阪神大賞典勝ち馬ユーキャンスマイルや愛知杯勝ち馬ルビーカサブランカらを輩出した。重賞勝ち馬の母によるワンツーとは、今思うと豪華な一戦だった。
しかし、1着〜3着馬が重賞勝ち馬の母となった年もある。それが12年の秋華賞だ。1着はその年の年度代表馬にも選出されるジェンティルドンナ。チューリップ賞こそ4着に敗れたが、桜花賞・オークスと連勝し、ローズSも勝利した。そして4連勝で牝馬三冠に輝いた。
ジェンティルドンナは母としても期待馬を送り出す。それが、先日オールカマーでデアリングタクトらを撃破したジェラルディーナだ。同馬は4歳で重賞初制覇を成し遂げ、次走はエリザベス女王杯での勝利を狙う、まさにこの秋、注目の一頭だ。
そのジェンティルドンナに負け続けたのが、ライバルのヴィルシーナ。こちらは牝馬三冠すべて2着という悔しい思いをした1頭だったが、翌春にヴィクトリアマイルを制覇して鬱憤を晴らした。さらに翌年のヴィクトリアマイルも制し、GⅠ競走2勝の実績を残し堂々と引退。そして初仔のブラヴァスは新潟記念を制し、現4歳のディヴィーナも重賞戦線で奮闘中。こちらも牝系を広げていくことが予想される。
そしてこの年の3着だったのが、ジェンティルドンナと同じ勝負服のアロマティコ。同馬は10月にデビューし、3戦目で勝ち上がり。2勝目はデビュー6戦目と、ジェンティルドンナ・ヴィルシーナに比べると勝ち上がりに時間を要した。そんなアロマティコの重賞初挑戦が秋華賞。前走の条件戦は3着と取りこぼしていたものの、ファンは彼女を6番人気に支持した。レースではポジションの差で上位2頭には及ばなかったが、ジェンティルドンナと同じ上がり3Fタイムで3着に入った。
アロマティコは重賞を制することは出来なかったが、翌年のエリザベス女王杯3着など牝馬戦線を盛り上げ続けた。そして母としては、今年の皐月賞馬ジオグリフを輩出。こちらもこの秋に注目を集める一頭だ。
秋華賞の母娘制覇を達成したアパパネ
あくまで主観だが、三冠牝馬が誕生した年の秋華賞は、母としても活躍する馬が多く出走しているように感じる。
アパパネが勝利した10年は、アパパネ自身がアカイトリノムスメで秋華賞の母娘制覇を達成。2着アニメイトバイオはパイオニアバイオ・ビッククインバイオと2頭の重賞好走馬を送り出している。スティルインラブが勝利した03年は2着のアドマイヤグルーヴは説明不要も、4着のピースオブワールドも海外デビューの重賞勝ち馬を送り出すなど活躍している。
今年はスターズオンアースが牝馬三冠の権利を有して秋華賞へ出走する。もしも今年も三冠牝馬が誕生したら、アーモンドアイ・デアリングタクトらに続き隔年で偉業が続くことになる。スターズオンアースは乗り替わりで牝馬三冠を達成したジェンティルドンナにイメージが重なる部分もある。
名牝、そして名繁殖として──。
各馬の無事の完走と名勝負、そして将来を楽しみにしたい。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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