【京成杯AH】緩まない中山マイル重賞に強い「デインヒル」内包馬 有力馬の血統を一挙解説

坂上明大

京成杯AHの血統傾向,ⒸSPAIA

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京成杯オータムハンデの注目血統

サマーマイルシリーズ最終戦・京成杯オータムハンデ。中山芝1600mというやや特殊な条件で行われる一戦であり、2019年にはトロワゼトワルが日本レコードを記録した超高速競馬が特徴の重賞でもあります。京成杯AHに強い血統は何かを整理していきましょう。

傾向解説

「中盤の緩まない特殊なマイル」
京成杯AHは中山芝1600mを舞台に行われるハンデ重賞。中山芝1600mは外回りで行われる点が大きな特徴で、スタート直後から下り坂が続くこと、コーナー角が緩やかであることなどがレースの質に大きく影響を与えています。

また、古馬混合の芝1600m重賞が行われる舞台は新潟(外)、東京、中山、中京、京都(外)、阪神(外)の6場ですが、中山以外の5場は直線距離が400m以上あるのに対して、中山競馬場の直線距離は310m。JRAマイル重賞の舞台としては唯一直線が短く、前述した下り坂の影響もあり、道中もペースが緩まないワンペースのレース質が中山芝1600m重賞の大きな特徴となっています。

・古馬混合芝1600m重賞のコース別平均ラップ(過去10年)
新潟:35.1-23.2-34.2
東京:34.9-23.5-34.3
中山:34.7-23.0-35.1
中京:34.9-23.5-35.2
京都:34.9-23.7-34.4
阪神:35.1-23.5-34.4

注目の血統にまず挙げたいのはデインヒル。同馬はヨーロッパとオセアニアを中心に大成功を収めた名種牡馬で、Danzig系らしい非凡なスピード性能を産駒に伝えてくれています。母父His Majestyから受け継ぐ底力も凄まじいものであり、タフなマイル以下のレースには滅法強い名種牡馬といえるでしょう。

本レースでも昨年は勝ち馬カテドラルが母父Rock of Gibraltar(父デインヒル)、3着馬グレナディアガーズが父Frankel(母父デインヒル)と2頭しかいない該当馬が2頭とも馬券圏内。下記データの通り、同じ舞台で行われるダービー卿CTにおいても素晴らしい成績を収めています。ただ、日本に輸入されたハービンジャーについてはデインヒルの影響が薄いと考えているため、取り扱いには注意が必要です。

デインヒル内包馬の成績,(過去10年)ⒸSPAIA


・デインヒル内包馬の成績(過去10年)
レース名 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単勝回収値 複勝回収値
ダービー卿 4- 4- 0-11/19 21.1% 42.1% 42.1% 157 109
京成杯AH 1- 0- 2- 7/10 10.0% 10.0% 30.0% 154 90

また、他では同じくヨーロッパとオセアニアを中心に繁栄したFairy King、サンデーサイレンス系種牡馬の中でも格別のスピードと底力を伝えるダイワメジャーなども注目の血統に挙げられるでしょう。

血統解説

・ダーリントンホール
母母Do the Honoursはフランスの芝1200mGⅢ勝ち馬、母父Pivotalは1996年ナンソープS勝ち馬と母Miss Kentonは短距離色の強い血統構成。また、父New Approachは英ダービー馬ですが、イギリスのスプリンター血統であるAhonooraを母父に持ち、種牡馬としては英2000ギニー馬Dawn Approachを筆頭にマイラーも多く出しています。

本馬はSadler's Wells≒Nureyevの3×4などを底力としながらも母譲りのスピードを武器としており、馬体が完成された現在は芝1600m前後が適条件といえるでしょう。瞬発力勝負では分が悪いため、中山芝1600mは悪くない舞台とみています。

・ファルコニア
母カンビーナは2011年アメリカンオークス馬。本馬のきょうだいには阪神大賞典2着馬トーセンカンビーナなどスタミナ豊富な産駒が多く、母の仔の勝ち鞍はすべて芝1800m以上でのものとなっています。本馬も機動力増幅型のディープインパクト産駒であり、小回りの中距離戦がベスト条件とみています。

・ミスニューヨーク
キングズベスト産駒らしい底力に優れた5歳牝馬で、中山芝1600mで行われたターコイズSでは後方待機策から見事な追い込みを決めました。ただ、追走力では劣るため、開幕週の馬場で末脚が届くかがポイントとなりそうです。また、稍重~重馬場【4-0-0-2】の道悪巧者でもあり、週末はひと雨欲しいところでもあります。

・ベレヌス
母父デュランダルはダイワメジャーと同じサンデーサイレンス×ノーザンテーストの組み合わせ。また、本馬はNight Shift≒ノーザンテーストの3×4も特徴的で、突進力と底力に優れたタートルボウル産駒といえるでしょう。マイル戦でもスピード負けすることはなく、単騎逃げが叶いそうなメンバー構成も魅力。サマーマイルシリーズチャンピオンが懸かった一戦でもあり、注目の一頭とみています。

・ミッキーブリランテ
注目血統に挙げたデインヒルを母方に持つディープブリランテ産駒。スプリンター色の強い馬体だけに1600mへの距離延長が課題ですが、好位ポジションが取れれば粘り込みがあっても驚けません。もう1頭の該当馬ルフトシュトローム(母母父デインヒル)も舞台適性は高そうですが、去勢明け緒戦の分、割引が必要でしょうか。



2022年京成杯AHの血統注目馬,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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