【セントウルS】1番人気が10年連続連対中! 牝馬対決に注目集まるスプリント重賞の歴史

緒方きしん

セントウルS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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ソングラインとメイケイエール、4歳の才女たちが激突

出世レース札幌2歳Sでは、今は亡きドゥラメンテの産駒、牝馬のドゥーラが勝利。改めて名種牡馬の早逝が悔やまれると同時に、凱旋門賞に挑戦するタイトルホルダーの走りにも期待が高まる勝利となった。

さて、今週はセントウルS。前走で安田記念を制したソングライン、京王杯SCを制したメイケイエールという2頭の牝馬が火花を散らす。さらにはNZTを制した3歳馬ジャングロや名繁殖馬スカーレットインクの血を引く7歳馬タイセイアベニールなど、牡馬牝馬・若手ベテラン問わず快速自慢が集結した。

過去にはビリーヴやビハインドザマスク、アルティマトゥーレやレシステンシアといった牝馬が勝利。ここから短距離女王に輝いた馬も多い、歴史と実績のある短距離戦だ。今回はセントウルSの歴史を振り返る。

絶好調の1番人気

セントウルS過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気は負けなし。レース名に"産経賞"がついたのは、産経大阪杯がGⅠに昇格して大阪杯となった2017年のことだから、"産経賞セントウルS"になってから1番人気は無敗ということになる。2016年にも1番人気のビッグアーサーが制していて、現在6連勝中と絶好調だ。

2012年~2015年は4年連続で1番人気が2着と、この10年で1番人気は連対率100%。最後に馬券圏外となったのは2010年まで遡る。その年は1番人気スカイノダンが6着、1着ダッシャーゴーゴー(4番人気)と2着グリーンバーディー(2番人気)の馬連は37倍となった。

1番人気が好調とはいえ上位人気馬のみで決着するわけではなく、2019年2着ファンタジストと2018年3着グレイトチャーターはいずれも7番人気。2017年の2着にも6番人気のラインミーティアが食い込んでいる。2020年にはメイショウサムソン産駒の6歳牝馬メイショウグロッケ(12番人気)が2着と好走し、1着ダノンスマッシュとの馬連は119.9倍と波乱を巻き起こした。

ここを弾みに大金星を掴んだマイネルラヴ

1998年の勝ち馬はマイネルラヴ。当時は10月に開催されるGⅢで、GⅠスプリンターズSも12月に開催されていた。名手・武豊騎手と2度目のコンビとなったマイネルラヴは2番人気という評価を得る。単勝1.9倍と圧倒的な支持を集めた1番人気シンボリフェザードを差し切り、のちにシリウスSを制する2着マコトライデンに3馬身差をつけて勝利した。

マイネルラヴは1995年うまれの1998年クラシック世代。デビュー戦を制して期待を集めたが、初の重賞・東スポ杯3歳Sではキングヘイローの2着となり、朝日杯3歳Sではグラスワンダーの2着となった。結局、春シーズンの締めとなったNHKマイルCでは勝ち馬エルコンドルパサーから離れた7着に敗れ、初めて掲示板圏外に沈んだ。なかなか栄冠に手が届かない日々だった。セントウルSは、そんなマイネルラヴにとって初めての重賞制覇だった。

次走のスワンSでは1番人気7着と惨敗、続いて年末のスプリンターズSに出走した。マイネルラヴの鞍上は初コンビとなった吉田豊騎手。武豊騎手はフランスのGⅠを制したシーキングザパールに騎乗したが、2番人気で単勝オッズは10.5倍だった。1番人気はこれが引退レースとなるタイキシャトルで、単勝1.1倍。圧倒的な人気がうかがえた。しかしマイネルラヴはその強豪2頭を相手に接戦を制した。7番人気で大金星をあげ、一気にGⅠ馬へ上り詰めたのだった。

輝かしき短距離血統馬たち

引退後、マイネルラヴは種牡馬となり、2004年小倉2歳S勝ち馬コスモヴァレンチ、2005年NZT勝ち馬マイネルハーティーや2008年京王杯2歳S勝ち馬ゲットフルマークスらを輩出。コスモヴァレンチは母として、2014年JBCスプリント優勝馬ドリームバレンチノを送り出した。さらにマイネルラヴは母父として、先日3連勝で関屋記念を制したウインカーネリアンなどを出している。

今年のセントウルSには母父タイキシャトルのシャンデリアムーンが出走を予定。さらに、上述のドリームバレンチノと短距離戦線を盛り上げたロードカナロアの産駒から、ボンボヤージらも参戦する。タイキシャトルやロードカナロア、マイネルラヴと、日本で短距離血統を根付かせた名馬たちに、改めて拍手を送りたい。

また、牝馬の快速馬たちが多いことも今年の注目ポイント。スピード溢れる彼女たちもまた、引退後も多くの名馬たちを送り出してくれるポテンシャルを持つに違いない。どの馬も無事にゴールできるよう、声援を送りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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