【新潟記念】カラテを知りつくす菅原明良騎手の好騎乗 勝因はマイル戦と同じ競馬をしたこと

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2度目の優勝該当馬なし
サマー2000シリーズ逆転をかけたヒートオンビート5着、スカーフェイス11着。そしてチャンピオン圏内だったエヒトも14着に敗れ、ポイント加算に失敗。規定の13ポイントを上回らなかったことでサマー2000シリーズは19年に続き2度目の優勝該当馬なしに終わった。サマーシリーズは優勝のハードルがまあまあ高く、マイルは該当馬なしが4回。もう少しハードルを下げては。と思わなくもないが、それでは価値が低下する。秋競馬につなげるという意味ではそこは避けたいところだ。
強気に乗った菅原明良騎手
新潟記念を勝利したのはカラテ。サマーマイルシリーズに参戦していてもおかしくないマイラータイプの激走だった。事実、昨年は関屋記念、京成杯AHとマイルシリーズにいた。カラテが最後に2000mに出走したのは4歳春の福島で12着だった。最後の勝利は3歳冬の小倉。新潟芝2000mは6歳にして初出走。いきなり重賞を勝つわけだから競馬は難しい。
勝因のひとつは鞍上の好騎乗だろう。菅原明良騎手は21年1月若潮Sから今回で11戦連続騎乗。この間、カラテは高橋祥泰厩舎解散に伴い関西の辻野泰之厩舎へ転厩。それでもコンビは継続された。オーナーの希望もあったにちがいない。カラテを誰より知る菅原明良騎手だからこそ、今回の勝利はある。
カラテは上記のようにずっとマイル戦中心に使われてきた。マイル戦の流れが染みついているだけに、400mの距離延長に際し、慣れていない騎手なら折り合いを気にして、前半は無理しなかった可能性がある。前後半1000m1.00.5-58.4、近年の新潟記念と比較するとかなり遅い流れ。下げていたら致命傷になった。カラテを知り尽くした菅原明良騎手は2000mでも折り合える目算があったのではないか。マイル戦と同じような位置に取りつき、好位を進んだ。これが結果的にベストポジション。追ってしぶといカラテに好位から強気に仕掛けられては後ろは敵わない。
これまであまり走らなかった夏場と休み明けで勝利。2000mで重賞2勝目をあげたことで今後の選択肢は広がる。得意の左回り、2000mは秋に大舞台が待っている。相手は強いが、6歳で新味をみせたカラテの意外性に注目したい。
ユーキャンスマイルに謝りたい
上記のように新潟記念としては緩い流れ。さらに今年の夏の新潟芝はクッション値9.2で開幕、最終日は9.5と馬場は開催を通じて大きく変化しなかった。最内は厳しいが、昨年ほど外一辺倒でもない。通ったところの違いが結果に左右しない状況だったとすると、純粋に後半1000m58.4で順位を上げられるだけの瞬発力が求められた。
その意味で外を強襲した2着ユーキャンスマイルには驚いた。4コーナー17番手はこれまでのユーキャンスマイルなら厳しかったが、上がり最速33.0と強烈な瞬発力をみせた。新潟記念は3年前4歳時にV。そのときの上がりは33.6。7歳にして自身の記録を更新した。頭が下がる。新潟記念当週の記事で私は天皇賞(春)敗退からのローテはユーキャンスマイルが19年に勝利と紹介しつつ、現在のユーキャンスマイルに再現を期待するのは酷だと述べたが、これは私の不徳の致すところ。ユーキャンスマイルと読者に伏してお詫びしたい。
3着は3歳フェーングロッテン。最後の直線では舌をこし、カラテに負けず劣らず頭の高い走りに若さを感じるものの、そんな状況で3着に粘り込んだのは評価したい。瞬発力勝負でも最後までしぶとく、菊花賞に向けて明るい材料。1勝クラスでタイムオーバー。宮本調教師も別件での取材の際、「タイムオーバーを食らっても重賞勝つ馬なんていますか」と驚いていたが、有馬記念を勝ったダイユウサクがいる。フェーングロッテンも意外性を秘めるタイプ。一発大仕事も期待したい。厩舎の先輩クリンチャーを上回れるか、注目だ。
1番人気5着ヒートオンビートは意外だった。直線の長いコース、瞬発力勝負でこそというイメージがあったが、今回は瞬発力で見劣った。スローの新潟という究極の瞬発力勝負は合わないようだ。かといって小回り向きともいえず、今後はやや狙いどころが難しくなった。好走ゾーンが狭まりつつあるのは気になる。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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