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【小倉2歳S】記録づくしの大外強襲! ロンドンプランは距離延長でこそ本領発揮

2022/09/05 11:11
勝木淳
2022年小倉2歳S回顧,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

下河辺牧場が育んだ結晶

スタート前に蹄鉄の打ちかえ、ゲートで大きく出遅れる不利。これだけ並べれば正直、敗者の描写。ロンドンプランはこれで勝利した。道中は離れた最後方待機。4コーナーしんがりから小倉の短い直線で全馬をまとめて差し切った。直線が短いわりに差し、追い込みが押し寄せ、様相一変。小倉芝1200mではよくあることだが、記録上、4コーナーしんがりから直線一気を決めた馬は少なく、86年以降はわずか7頭。近年では20年8月佐世保Sフェルトベルク、1勝クラス平場のアルバリズム、16年8月筑紫特別スカイパッションなど。2歳で4コーナーしんがり一気を決めた馬はいない。

ロンドンプランの上がり600m33.1は2歳でこのコースを勝った馬のなかでは最速。古馬の勝ち馬に広げても、13年九州スポーツ杯ニンジャ、22年耶馬渓特別スノーテーラーに並ぶ記録。ロンドンプランは2歳としては出色の記録を叩き出し、ド派手な勝ち方を重賞でやってのけた。とはいえ、同時にこれは明らかに1200m向きではないことも意味する。距離を延ばして、改めてどのぐらい走れるのかみてみたい。

新種牡馬グレーターロンドンは父ディープインパクト、母ロンドンブリッジ。下河辺牧場が生産したロンドンブリッジは98年ファレノプシスが勝った桜花賞で2着、エリモエクセルが勝ったオークスで10着だった。その後、初仔ダイワエルシエーロが04年オークスを勝ち、11年後にディープインパクトとの間にグレーターロンドンをもうけた。グレーターロンドンは遅生まれで弱いところもあり、3歳2月デビュー。蹄を痛め、長期休養。4歳秋の復帰後はマイル戦で4連勝、17年安田記念はサトノアラジンの4着だった。

ロンドンプランの母パッションローズは、さかのぼるとマヤノクリオネ、レディコスマー、ロイヤルコスマーと下河辺牧場が代々育んだ牝馬たちの名前がズラリ。ロンドンプランは下河辺牧場の歴史の先端にいる。母は夏の札幌で新馬を勝った仕上がり早で、直線競馬を2回勝った。グレーターロンドンのマイル寄り晩成の血と混ざってできたロンドンプランは、母から受け継いだ血で小倉2歳王者となったが、距離が延びてこそと感じさせるレース内容だった。秋そして来春へ、順調に進んでほしい。

勝手が違った4着プロトポロス

2着は9番人気バレリーナ。新潟2歳Sのキタウイングらと同じく連闘での重賞挑戦で好走した。外枠からうまく立ち回り、枠順に恵まれた分もあるが、2週続けて小倉へ輸送し、当日の馬体重は+2キロ。タフな牝馬だ。その前走は同舞台の新馬戦で逃げて0.6差勝ち。着差がつきにくい平均ペースで突き放した内容は評価すべきだった。控えて好走した今回と合わせて、センスを感じる。

3着の11番人気シルフィードレーヴも新馬戦とは一変、控えて中団から差してきた。前後半600m33.2-34.9、前後半1.7差は小倉芝1200mの高速馬場としては速くはない。予想外に先行勢が残れなかった点は気になるものの、シルフィードレーヴも流れに恵まれたともいえない。母キモンクイーンのきょうだいは父マンハッタンカフェのラブイズブーシェ、ハリーアップ、プティットクルールで芝2000m以上で活躍。父アメリカンペイトリオットの産駒の距離別成績は1800mが14勝でトップ。このうち5勝は芝。シルフィードレーヴも距離が延びて楽しみがある。

4着の1番人気プロトポロスの父は、アメリカンペイトリオットの父でもあるウォーフロント。国内産駒数は多くないが、こちらは1200、1400mに強い短距離志向。ここは勝っておきたかった。新馬戦は前後半600m35.3-34.1。早い時期、中京芝1200mの新馬戦ではたまにこういったスローペースはある。プロトポロスは3番手から上がり最速33.8を繰り出し、2着ウメムスビ(今回も出走して7着)に3馬身半。決して速くないとはいえ、今回の前半600m33.2は未経験。それが響いて、終いはそこまで伸びなかった。キャリアの浅さゆえの敗戦。まだ見限れない。

10着の3番人気ミカッテヨンデイイも、先行して押し切ったフェニックス賞は前後半600m33.8-33.9の均衡ラップ。今回は流れの違いに戸惑ったか。後方11番手からの競馬は勝手が違った。再度先行できるようなら見直せる。

11着の2番人気クリダームは、2着だった函館2歳Sで前後半600m34.5-37.3の厳しい流れを経験。今回のペースは記録上、楽だったはずだが、最後は伸びなかった。北海道から栗東、そして小倉という遠征スケジュールが響いた可能性もある。当日馬体重は+10キロ。見た目は影響なしともいえるが、しばらくは様子をみたい。

2022年小倉2歳S結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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