【新潟記念】3年連続で1番人気が二桁着順 ベテランにも要警戒の波乱レース

緒方きしん

新潟記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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実績か、近走の勢いか

新潟2歳Sはミルファームのキタウイングが勝利。ダノンバラード産駒はこれが初めてのJRA重賞制覇で、他にも2戦2勝でダリア賞を制したミシシッピテソーロなどを送り出している。一時期はイタリアや英国で過ごしていたダノンバラードが、ディープインパクトの後継種牡馬として存在感を強めている。

さて、今週は新潟記念。前走で七夕賞を制したエヒト、同2着ヒートオンビートら勢いに乗る馬が参戦。これに対してマイル重賞馬カラテや、昨年の新潟大賞典を制したサンレイポケット、2019年の新潟記念を制したユーキャンスマイルといった実績馬も参戦し、夏の総決算に相応しいメンバー構成となった。

古くはダイナフェアリー(ローゼンカバリーの母)やアイリッシュダンス(ハーツクライの母)といった名牝が勝利。近年では7歳セン馬トランスワープや、大外一気を決めたアデイインザライフらの勝利が記憶に新しい。今回は新潟記念の歴史を振り返る。

1番人気の惨敗も少なくない

新潟記念過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年間で、1番人気は1勝のみ。今年の8月25日付で引退したレイエンダは2019年に10着に敗れ、以降もワーケア10着、ザダル13着と1番人気の二桁着順が3年続いている。過去にはトーセンラーやアドマイヤモナークといった、のちにGⅠ戦線で活躍する馬も1番人気に推されて馬券圏外に敗れた。

2010年には5番人気ナリタクリスタルと10番人気トウショウシロッコでの決着となり、馬連配当が117.5倍となった。さらに2011年は108.8倍、2012年は114.9倍、2013年には204.5倍と4年連続で馬連万馬券が飛び出している。そこからしばらくは、1番人気が苦戦しつつもそれなりに平穏な決着が続いていたが、昨年は12番人気マイネルファンロンが勝利。馬連配当も109.4倍と、久々の万馬券となった。

また、ベテラン勢が活躍することが多いのも特徴。オフサイドトラップやダイワテキサス、ホッコーパドゥシャやトランスワープ、パッションダンスといった馬たちが、7歳(現表記)で制した。2013年の万馬券を演出したコスモネモシンは6歳で、昨年の勝ち馬マイネルファンロンも6歳だった。

ベテランを撃破した素質馬ブラストワンピース

ベテランが強い新潟記念を3歳で制したのが2018年のブラストワンピースである。デビューから3連勝で毎日杯を制覇し、ダービーでは2番人気に推されたが、ワグネリアンの5着に敗れた。その夏に新潟記念に出走したブラストワンピースは、その素質から3歳馬ながら単勝1.8倍の圧倒的な人気を集めた。

この年の新潟記念には、セダブリランテスやメートルダール、メドウラークやマイネルハニーといった新旧の期待馬・素質馬が参戦。2番人気は、2年1か月ぶりのレースとなった府中Sをいきなり勝利し、続くエプソムCでも3着のグリュイエールだった。近親に2016年スプリングS勝ち馬マウントロブソンらがいる良血の6歳馬で、こちらも期待を集めていた。

レースが始まると、1枠1番のブラストワンピースは後方待機。マイネルミラノがレースを引っ張ったが、新潟の長い直線に入ると先行勢が飲み込まれていく。ブラストワンピースは大外に持ち出されるとメンバー中最速となる上がり33.5の末脚を繰り出し、大きく横に広がっての追い比べを制した。2着は6番人気メートルダール、3着は13番人気ショウナンバッハ。いずれも後方から追い込んだ馬たちで、2着・3着のワイドは85.7倍の高配当となった。

ブラストワンピースはその後、菊花賞で4着に敗れたものの年末の有馬記念を制覇。翌年は札幌記念、翌々年はAJCCを制するなど、長きに渡り中長距離路線を盛り上げた。昨年の札幌記念をラストランに現役を引退し、現在はノーザンホースパークで乗馬として過ごしている。

人気薄で3着に食い込んだショウナンバッハは年末の中日新聞杯で12番人気2着と再び波乱を演出。翌年のメイSでも12番人気3着と好走するなど穴党にとって頼もしい活躍を果たした。こちらは引退後に種牡馬となり、初年度産駒が2021年に誕生している。その中には、現役ダート牝馬の最強格ショウナンナデシコ(父オルフェーヴル)の半弟もいて、楽しみは尽きない。

2010年クラシック世代に思いを馳せながら

今年は3歳馬フェーングロッテンが参戦を予定している。フェーングロッテンは春クラシックこそ未出走だったものの、白百合SとラジオNIKKEI賞を連勝して勢いに乗っている。母母父サクラバクシンオー、母父キングヘイロー、父ブラックタイドという血統も興味深い。

また、血統といえば、フォワードアゲン(父ローズキングダム)、ココロノトウダイ(父エイシンフラッシュ)、カラテ(父トゥザグローリー)、エヒト(父ルーラーシップ)と、2010年のクラシックを争った馬たちの産駒が出走を予定しているのも注目ポイントだ。

血統の奥深さを感じつつ楽しみたい新潟記念。気がつけば夏競馬も終わりが近づいてきた。新潟の長い直線に詰まったドラマを見届けたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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