【札幌記念】タフな馬場でパンサラッサの巻き返し気配濃厚

山崎エリカ

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タフな馬場での開催に

札幌芝は本日土曜日からCコース使用だったが、内有利、外有利以前に雨の影響が大きく、タフな馬場になっていた。日曜日は馬場が良馬場まで回復するにせよ、標準よりも時計のかかる馬場で行われることになる。

今回は3番枠を引き当てたパンサラッサがハナを主張し、そのひとつ外枠のジャックドールがその2番手からという形で、スムーズに隊列が形成され、ペースが落ち着く可能性が高いと見ている。それでもパンサラッサが逃げるとなると、パンサラッサにとってはそれほど速い流れではなくとも、それを追いかける先行馬には厳しいペースになりそうだ。

時計のかかる馬場になったことで、しぶとさが持ち味のパンサラッサの優位性が増したが、穴の一発を狙うのであれば、2018年、2019年の札幌記念のように、前が崩れて浮上する外差し馬だろう。

能力値1~5位馬の紹介

札幌記念出走馬のpp指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 ユニコーンライオン】
2019年の春のクラシックはスプリングSで大敗して断念したが、夏の函館で連勝し、菊花賞の伏兵候補になった馬。その後は不振だったが、ダートを使われたことで筋肉のバランスに変化が起こり、復調のきっかけを掴んで、昨年は鳴尾記念1着、宝塚記念2着と一気に上昇した。

鳴尾記念は前半5F62秒9-5F57秒8の超絶スローペースで逃げ切り。展開がかなり噛み合っての優勝だった。宝塚記念では、1番枠からまずまずのスタートを切り、押して押してハナを主張し、前半5F60秒4のスローペースから3~4角で再加速して粘って2着に粘った。今回のメンバーでも上位クラスの強い内容で高指数だった。

前走は約1年の長期休養明けでダート戦。先行馬総崩れのペースを先行しての大敗は仕方ない。本馬は3歳夏の函館芝中距離で連勝したように、もともと洋芝は得意。前走のダートは今回に向けての叩き台、まさに今回に向けて能力を出すために考え抜かれた臨戦過程と言える。

今回は11番枠とやや外目の枠に入ってしまったことがどう出るか。すんなりとレースの流れに乗れるかという点に、やや不安があるが、パンサラッサが作り出すペースを利用できれば、宝塚記念2着の実績からも優勝が期待できる馬だ。

【能力値2位 ジャックドール】
昨年4月の阪神芝2000mの未勝利戦を破格の指数で勝利した馬。その次走のプリンシパルSではさすがに疲れが残ってしまったようで結果を出せなかったが、その後に休養し、9月に戦列復帰するとその素質が覚醒。1勝クラス、2勝クラス、3勝クラスの3戦全てで、1クラス以上、上の水準にあたる指数を記録して楽勝した。

そして前々走の金鯱賞では3番枠から好発を切ってハナを主張し、5F通過59秒3のなかなか速いペースで引っ張り、3~4角で再加速してラスト3F目に後半最速の11秒0を刻んでの逃げ切り勝ち。このため超高速馬場と言えるほど高速馬場ではなかったが、レコードタイムで優勝した。本馬が前々走で記録した指数は自身の最高指数で、グローリーヴェイズに次ぐ、メンバー中NO.2の指数である。

前走の大阪杯では、自身の最高指数をさらに上回ってサイレンススズカのような稀有な存在になれる可能性もあったが、大半は壁に当たるもの。しかし、4番枠から好発を決められず、外から同型馬が競ってくる中でペースを引き上げてハナを主張し、前半5F58秒8とややオーバーペースの逃げだったわりに、勝ち馬ポタジェと0.5秒差(5着)としぶとく粘れていた。

本馬は近5走は逃げているが、もともとは2番手でも問題のない馬。1角までの距離が短い札幌芝2000mで同型馬パンサラッサより、ひとつ外の4番枠の今回は、外枠の同型馬に競り掛けられることなくパンサラッサの2番手ですぐに隊列が決まり、前々走よりもペースが落ち着く可能性が高いと見ている。本馬はスタミナが不足する休養明けではあるが、パンサラッサと競り合うことなくレースが進められれば巻き返せるだろう。

【能力値3位 アンティシペイト】
3歳春の東京芝2400mの1勝クラスを逃げて圧勝、続く札幌芝2600mの阿寒湖特別も勝利したように、若い時点からスタミナが豊富なところを見せていた馬。前々走の福島民報杯は、9番枠から五分のスタートを切って、中団やや後方を追走していたものの、前がペースを落とした向正面で前との差を徐々に詰めて、3角で先に動いたウインマイティーの外から一気に仕掛けて4角先頭の強気な競馬で好指数を記録して圧勝した。

前々走時はデキが良かったこともあったが、豊富なスタミナを感じさせる競馬で強く、その能力を出し切れば重賞は楽に勝てる能力は持っている。前走の七夕賞は福島民報杯で力を出し切った直後の一戦、決して楽観視できる状況ではなかったと見ているが、3着に浮上。力をつけていることを見せつける走りだった。

ただ今回は札幌2000mが舞台、さらに大外16番枠に入ってしまった。前々走の福島民報杯は5F通過が57秒7の超絶ハイペースを捲って勝利しているだけに、パンサラッサが作るペースは悪くなさそうだが、福島と同様な競馬ができるかどうか。パンサラッサが失速する競馬になればチャンスは上がりそう。

【能力値4位 グローリーヴェイズ】
2019年の天皇賞(春)では、4角で動いて外のフィエールマンとともに抜け出して、3着馬パフォーマプロミスに6馬身差を付けてクビ差2着に好走した馬。本馬が当時の天皇賞(春)で記録した指数は、ここではNO.1のもの。その好指数マークは本物で、その後に京都大賞典を優勝、香港ヴァーズを2度勝利するなど、芝の長距離で大活躍している。

ただ、芝2000mの香港Qエリザベス2世Cでは、前半5F63秒69-後半5F57秒54(日本式だと計測開始位置の違いで前半があと1秒ほど速い)の超絶スローペースを7番枠から出遅れ、後方外を追走し、3~4角でもロスの大きい競馬で2着。直線序盤で5番手まで上がり、ラスト1Fではそこからしぶとく早め先頭に立ったラヴズオンリーユーとの差を詰めながらも、3/4差までだった。本馬は後半のトップスピードが速いタイプではないので、芝2000mもダメではないが、もっと距離を延ばして前の位置を取ったほうがいいタイプであるのは確か。

今回は芝2410mの前走・ドバイシーマクラシックで6番枠から出遅れて、そこから好位の内目を狙ったものの、やや窮屈で中団の内に下がってという、後方からレースをした直後の一戦となる。そこから今回の芝2000mの舞台に向かうとなると、レースの流れに乗れるか微妙と言える。今回のデキはリフレッシュされてかなり良い状態にあることが推測されるが、香港Qエリザベス2世C時のように、届かない可能性もある。

【能力値5位 パンサラッサ】
不良馬場で行われた京都芝2000mの2歳未勝利戦を高指数で圧勝し、スタミナの豊富さを感じさせていた馬。当時はスピード不足の面があり、自分の得意な形に持ち込むことができず、結果、瞬発力不足でやや足りないレースが続いていた。しかし、5走前の福島記念では、完全なオーバーペースで逃げて4馬身差の圧勝と化けた。

次走の有馬記念は福島記念の走りが強すぎて状態面にお釣りがなく、13着と大敗したが、その次走の中山記念では福島記念と同様にオーバーペースの逃げ。他の先行勢を全て失速させる、強い内容の逃げ切り勝ちを収めた。本馬が福島記念や中山記念で記録した指数は、今回の出走馬中、NO.3タイの高指数である。

前走の宝塚記念は、11番枠から好発を決められなかった中、押して押して内のタイトルホルダーとのハナ争いとなり、2F目で10秒4というかなりの速度でハナを主張しきって、前半3F33秒9、前半5F57秒6までペースを引き上げたために、最後が苦しくなって8着に敗れた。

前走は距離が長いという意見もあるが、序盤で脚を使いながらも、ラスト1Fでは早め先頭に立ったタイトルホルダーの2番手で踏ん張っていたことから、敗因が距離とは決めつけられない。しかし、実績のある芝2000m戦は悪くない。本馬のアメリカン的な逃げを同型馬が嫌って控えてくれれば、自分のリズムで逃げられそう。Cコース替わりの札幌2000m戦で3番枠なら、その可能性も十分に考えられ、今回の最有力候補と見る。

前走で復調の兆し、ウインマリリンが穴馬

昨年の日経賞ではフローラS以来の重賞制覇を達成。日経賞では4番枠から二の脚の速さでハナに立ち、外のジャコマルに行かせてその直後の2列目3番手のラチ沿いを追走し、4角最内から一気のスパート。同レースでは逃げた13番人気のジャコマルが5着に粘っているように、かなり前が楽な流れ。ウインマリリンはロスのない立ち回りと展開に恵まれての優勝だった。

 昨秋の始動戦となったオールカマーでは、1番枠から二の脚の速さでハナに立ち、まるで日経賞の再現を見ているかのような競馬。外のロザムールに行かせてその直後の2列目3番手のラチ沿いを追走。3~4角で2列目外2番手のレイパパレが勝負に出ていく中、仕掛けを待って直線へ。直線序盤でレイパパレが抜け出すその内を突こうとしたものの窮屈になり、1頭分外に出し、そこから一気に突き抜けての完勝だった。

 今春の始動戦となった大阪杯は16着と大敗したものの、前走の宝塚記念はパンサラッサが逃げて激流となった中、パンサラッサのひとつ外枠から、同馬を追い駆けるように掛かり気味に上がって、好位の内目と自ら激流に乗っていく形。大逃げを打ったパンサラッサから離された5番手を追走してはいたが、3角手前からディープボンドをマークして好位の中目から動いて、4角で2列目の内と全体的に早めの競馬で苦しい展開になったが、それでも7着と大崩れしなかった。

前走のレースぶりは復調を感じさせるもの。パンサラッサのペースに付き合わず、脚をタメて動いていければ、チャンスが膨らみそうだ。


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)アンティシペイトの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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