【関屋記念】新馬戦で見せたG1級の素質 疲労が抜けたスカイグルーヴの覚醒に期待

山崎エリカ

2022年関屋記念PP指数,ⒸSPAIA

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スローペースにもハイペースにもなる舞台

関屋記念が行われる新潟芝1600mは、Uターンコースで最初の3角までの距離が約550mと長いため、2015年1着のレッドアリオンのようなテンが遅い逃げ馬でも、強い意志を見せれば逃げられるのが特徴。そういった馬が逃げればスローペースにもなるし、テンの速い馬が序盤から競り合えばハイペースにもなる。ただ関屋記念はかなりの高速馬場で行われるため、1分31秒台後半~1分32秒台の決着でも、ペースが速くないことが多い。

しかし、馬場の傷みが激しく、夏の新潟としては珍しいほど時計の掛かる馬場で行われた2020年の関屋記念では、逃げ馬トロワゼトワルが例年の高速馬場のように、緩みないペースで逃げたこともあり、サトノアーサーが大外一気の追い込みを決めた。

今年は前走の函館記念をオーバーペースで逃げて11着に失速したレッドライデンが2列目を狙うとのこと。また、先行馬のダノンザキッドも滅多なことでは逃げない宣言をしている川田騎手が鞍上だけに、ウインカーネリアン辺りがマイペースで逃げてペースが落ち着く可能性が高い。しかし、ひと雨降って時計が掛かると、2020年のように実質ハイペースとなり、前が崩れてしまう可能性もありそうだ。馬場が悪化した場合には、追い込み馬も警戒したい。

関屋記念出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

能力値1~5位馬の紹介

【能力値1位 イルーシヴパンサー】
1勝クラスから4連勝で前々走の東京新聞杯を優勝した馬。その実績が評価されて前走の安田記念では1番人気に支持されたが、明らかに過剰人気だった。前回のコラムでも指摘したように、今年の東京新聞杯は、好位の外を追走したホウオウアマゾン(次走マイラーズC・2着)が12着に失速したように、レースが緩みなく流れ、差し、追込馬が有利だった。

つまり、出遅れて後方からの競馬となった本馬は展開に恵まれての優勝。それも自己最高指数を記録した疲れがあったようで、前走の安田記念はそこから立て直されての相手強化の一戦だった。

前走時の本馬は8番枠からやや出遅れた程度。そこから後方馬群の中目でレースを進めようとしたが、徐々に下がり後方2列目の内を追走する形となった。また、道中ペースが落ち着いたため、前の馬とのスペースがなかなか作れず、3角で位置を下げる競馬になってしまった。最後の直線は最後方あたりで迎え、ラスト2F目からそれなりに伸びてきたが、8着が精一杯だった。

今回はそこから再び立て直されての一戦。前走時から相手弱化となる点は好材料だが、どうしても序盤で置かれてしまい、そこが不安材料となる。関屋記念当日が良馬場で1分31秒台の決着になった場合は、前半で位置を取れない分、苦戦するだろう。しかし、ひと雨降って1分32秒台の決着なら対応可能と見る。

【能力値2位 ウインカーネリアン】
コントレイルが勝利した2020年皐月賞で、正攻法の強い競馬で4着と好走した実績馬。その後もジワジワと地力を付け、4走前の3勝クラス・幕張Sは重賞で勝ち負けになるレベルの指数で圧勝した。その後は蹄葉炎で長期休養となり、復帰初戦の六甲Sこそ逃げて6着に敗れたが、その後の2戦は先行策から完勝。

前々走の谷川岳Sでは、7番枠から好発を決め2番手外を追走。ラスト1Fで逃げ馬ベレヌス(後の中京記念優勝馬)を競り落として完勝した。前走の米子Sでは14番枠からまずまずのスタートを切り楽に3番手を確保。道中も前2頭から2馬身ほど後ろで折り合いながら追走。3~4角で外に出されると、ラスト1F手前で逃げるエントシャイデンを一気に捕らえ、そのリードを保ったまま勝利した。

本馬は新潟芝1600mの前々走で結果を出しているように、新潟マイル適性があり、自在性もある。ただし、皐月賞の内容などから本質的にはキレよりも、前に行って粘り強さを生かすタイプ。馬場が悪化しても対応可能と見ている。今回問題点があるとすれば、前走が前々走以上に走っており、自己最高指数タイを記録していることだろう。ここに向けて余力が残っているかどうかで、最後の粘りが変わってくる。

【能力値3位 スカイグルーヴ】
2019年秋の東京芝2000mの新馬戦を逃げて5馬身差で圧勝し、高指数を記録した馬。ラスト2Fは11秒2-11秒1。自らレースを作って最後まで減速せず、5馬身差の圧勝という驚きの走りでクラシックでの活躍は当確レベルだった素質馬だ。

ところが次走の京成杯は馬場がタフな激戦。大外12番枠から逃げ馬の外を追走し、4角先頭から2着に粘った内容はとても強かった。しかし、このレースの1着馬クリスタルブラックが次走皐月賞で16着と大敗。キャリアの浅い3歳馬にとっては負荷が大き過ぎる一戦で、スカイグルーヴにも大きなダメージが残ってしまった。

その後のスカイグルーヴは完全にスランプ状態。本来の素質から考えれば信じられないような成績が続いた。しかし、休養明けとなった3走前の白秋Sでは1番枠を生かして2列目の内を追走し、なかなか良い指数で勝利。復活の兆しを見せた。そして前々走の京都牝馬Sではなかなかの好指数決着を2番枠から五分のスタートを切り、好位の内でレースの流れに乗って2着と好走。

前走の京王杯スプリングCは多少反動も懸念されたが、4番枠から悪くないスタートを決めた。内と外の馬が速く、序盤でジリっと位置が下がったものの、中団中目から3~4角で外に出して2着に善戦。どうやらやっと疲れが抜け、新馬戦で見せた素質の高さをレースで発揮できる状態になってきたようだ。まともに走ればG1級の素質馬。若い時期の走りから、近走使われていた芝1400mよりもマイル以上の方が好ましく、ここは今秋のG1に繋がるような強い勝ち方を期待する。

【能力値4位 ピースワンパラディ】
デビューから2連勝し、3戦目の青葉賞で3着した素質馬。その後は本来の力を出し切れない時期もあったが、3走前のポートアイランドSからリステッド競走や重賞で連続好走。好位から鋭く抜け出せる脚が使えるようになり、ようやく本格化してきたと思った矢先、左前屈腱炎を発症し戦線離脱してしまった。

今回はそこから1年7ヵ月ぶりの長期休養明けの一戦。近走の成績通り走れば、当然ここも通用する。しかし、この中間は休養明けとしては良いレベルの動きも、さすがに万全ではないだろう。また過去の成績からも叩き良化型を感じさせる。人気がない点は魅力だが、やはり大きな期待は出来ない。

【能力値5位 ザダル】
今年1月の京都金杯で昨年のエプソムC以来2度目の重賞勝利を達成。京都金杯では7番枠から出遅れ、後方からの競馬となったが、中団中目の後ろまで位置を挽回し、最後の直線では馬群の狭い間を割って、ラスト1Fで突き抜け優勝した。

しかし、前々走のダービー卿CTは10着。7番枠から五分のスタートを切ったものの、促されても進んで行かず、中団馬群に突っ込んで行くような競馬となった。レースはタイムトゥヘヴンの直線外一気が決まったように、追込馬に有利な流れだったが、4角で前の馬とのスペースを詰め過ぎて少しブレーキをかけたことにより、最後の直線で勢いに乗り切れなかったことや、馬場の良い外に出せなかったことが敗因だろう。

重馬場の前走エプソムCも12番枠から出遅れたが、中団やや後方までじわっと挽回。ガロアクリークを目標にしてレースを進め、4角出口で馬場の良い外に出して6着を死守。本馬は昨年のエプソムCでも馬場の良い外から差し切って優勝しているが、当時よりも指数を下げたのは、出遅れて少し位置を挽回したことが影響していると見る。

前走時の着差は0.2秒差とそれなりに走っているが、全能力を出し切ったものではなく、余力は残っていそうだ。本馬もテンに置かれる面があり、当てにならないところはあるが、重馬場なら他馬よりアドバンテージがある。脚をタメていければチャンスはありそうだ。

穴馬はディヴィーナとエンデュミオン

【ディヴィーナ】
ヴィルシーナの仔ということでデビュー時から期待された馬。4走前に行きたがるのをコントロールし好位からの競馬で2勝クラスを勝利。その後、前々走で3勝クラスを勝利し芝のマイル戦でようやく軌道に乗った気配がある。

前走ヴィクトリアマイルは18番人気のローザノワールが逃げて3着と接戦の4着に粘ったように、前有利の流れ。本馬は6番枠から好発を切り一旦は好位を取ったが、折り合いを欠いているところに外から来られ、中団までポジションダウンした。結果11着も指数上大きく崩れなかったことに、本格化一歩手前の気配を感じた。今回はチャンスがありそうだ。

【エンデュミオン】
デビューから芝の中距離以上を使われ続け、好位から伸びずバテずのレースが多かった馬。ところが今年3月の飛鳥Sでは5番枠から出遅れ、後方中目からの競馬を直線で外に出されると、良い脚で2着まで伸びてきた。本馬はこれが転機となり、そこからは末脚勝負で近3走連続で上がり3Fタイム最速を記録している。

距離もマイルを使われるようになったことで、秘めていた瞬発力を存分に発揮できるようになってきた。本馬は中距離を使われてきた馬で芝マイルのキャリアは浅い。その分大きく上昇が見込める。今の勢いならば上位に食い込む余地は十分ありそうだ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)イルーシヴパンサーの前走指数「-20」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.0秒速い
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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