【クイーンS】フェアリーポルカの一変に期待 前走の厳しい馬場、ペース経験はプラス材料

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札幌芝は高速化見込みも、押し切れるかは疑問
クイーンSが行われる芝1800mは直線半ばからのスタートで、1角までの距離が約185mと短い。1角で隊列がしっかり決まれば、レッドアネモスが勝った2021年のようにペースが遅くなる。しかし、そこで決まらなければ2角過ぎまで先行争いが持ち越され、ディアドラが勝った2018年のように、ペースが速くなることも多い。
今回は逃げてこそのローザノワールが2番枠。1角までにハナを取り切れればペースは落ち着くが、同馬はテンが遅い馬。前走のヴィクトリアマイルでもやや出遅れていただけに、テンの速い先行馬に競られる可能性もありそうだ。
ただ、今週は天気が良く、一気に高速化する可能性が十分ある。先週の札幌芝は1200mの知床特別(2勝クラス)で1分9秒2と時計が掛かかり、外差しも決まる馬場だったが、今週は前に行く馬や内ラチ沿いを走る馬が有利になりそう。その一方で前が止まらないような馬場ではないので、そこも踏まえて予想を組み立てたい。

能力値1~5位タイ馬の紹介
【能力値1位 ローザノワール】
前走のヴィクトリアマイルでは、18番人気ながら2着接戦の4着とかなり見せ場があった馬。10番枠からやや出遅れ、そこからかなり押してスピードに乗せながら主導権を取り、粘った。ただ、この好走は、スタート直後にハナに立ったレシステンシアが、ハイペースで逃げて失速した高松宮記念の二の舞になるのを恐れたのか、2番手の最内から動くことを選んだことも要因だ。
前走は人気薄の立場だったのでマイペースで逃げることができたが、今回は受けて立つ立場でマークがきつくなるはず。昨年のクイーンSは函館の時計の掛かる馬場で行われ、ドナアトラエンテやシャムロックヒルに競られて緩みないペースで逃げ、6着だった。最後に失速してしまったことから、ここは様子見というのが妥当な評価だろう。
【能力値2位 ホウオウピースフル】
3歳時のフローラSで2着、古馬になってからも中山牝馬Sで差のない4着と善戦しており、オープンで通用する能力を示していた馬。昨秋の長期休養からの復帰戦は15着と大敗したが、その後少しずつ良化を見せ、前走の巴賞を見事に勝利した。
さらに上昇する可能性も感じさせる馬ではあるが、前走は前2頭がレースを引っ張って、そこから少し離れた中団の中目を進み、前が苦しくなったところをピッタリ差し切ったレースぶり。スタートをしっかりと出て、意図的に中団に下げて脚をため、最後の直線で一番伸びる中目を通せたことが好走要因。再度同じようなレースができるかとなると、そう簡単ではないような気がする。
【能力値3位 テルツェット】
昨年のダービー卿CTとクイーンSを優勝した実績を持つ馬。ただし、ダービー卿CTはマイスタイルが大逃げで、クイーンSは時計の掛かる馬場で前が競り合った。どちらも流れが速くなり、前が苦しくなったところを外から差し切ったもの。後方から直線一気の脚質だけに展開が向かなかったり、進路が開かなかったり、コーナーロスが大きい競馬になったりした場合には、当てにならないところがある。
今年初戦の中山牝馬Sでは休養明けで斤量56.5㎏と多少重かったことが堪えたのか、スタート後に躓いて内の馬と接触し、最後方からの競馬。3~4角の加速で大外に張り、最後の直線では微妙に伸び切れずの5着。前走のヴィクトリアマイルでも大外18番枠から出遅れ、最後方から大外を回る競馬で13着だった。
近2走は以前にも増してスタートも二の脚も遅く、能力を出し切れていないが、そろそろ体調面はピークに近づいてくる頃。しかし、今回は1番枠と極端な内枠に入ってしまった。能力もあり体調面の良化も見込めるが、果たしてどう乗るか。このタイプの馬は池添騎手と手が合う傾向があり、チャンスは当然あるが、鞍上の判断一つで結果は大きく変わりそうだ。
【能力値4位 サトノセシル】
5走前の2勝クラス・洞爺湖特別まで、逃げて好走するタイプだったが、昨年のクイーンSでは外から被せてくるテンの速いシャムロックヒルに行かせて中団外と意外な待機策を選択。3角でワンテンポ仕掛けを待って中目に入れ、マジックキャッスルの後ろを取って最後の直線。馬場の良い外に出してそこから伸び、3着と善戦した。
ただその直後の札幌記念では11着と大敗しており、昨年の時点ではクイーンS時の走りが目一杯のものだったと推測できる。今年は復帰初戦の3勝クラス・府中Sで、大外から良い脚で追い込み2着。
前走の江の島Sは、9番枠から好発を切って好位の直後の外から動いて行く形で、ある程度勝ちに行った。しかし長期休養明け好走の疲れも残っていたようで、伸びきれずの4着という結果だった。今回は前走よりも体調面は良化する可能性が高い。上手く脚をタメることができて、今回が昨年同様の水準での決着ならば、チャンスは十分にありそうだ。
【能力値5位 メイショウミモザ】
4走前の3勝クラス巌流島Sでは、3馬身差の圧勝でオープン級の指数を記録して勝利した馬。前々走の阪神牝馬Sでは9番人気での優勝となったが、3列目の好位から3~4角で最短距離を通ったのもあるにせよ、指数からは順当勝ちだったと言える。前走のヴィクトリアマイルでは、阪神牝馬Sで激走した疲れから18着と大敗したが、今回は立て直して再度上昇してくる可能性がある。
指数からは今回のメンバーでもチャンス十分の存在と言えるが、本馬はもともと芝の中距離や、正攻法の競馬では伸びきれず、芝の短距離で上昇気流に乗った馬。スタミナ面にはやや不安がある。前々走の阪神牝馬Sは馬場が良く、スタミナが問われない流れだったことが良かった面もある。今回はスタミナが問われることは避けられない馬場。そこがどう出るか。
【能力値5位 スライリー】
3歳時はフローラSで2着、秋華賞では5着、古馬になってからも中山牝馬Sで4着の実績がある。中山牝馬Sはアブレイズが向正面で早めに動いたことで、一気にペースアップ。ラスト3F目が最速という速い流れになったことで、差し、追い込み馬が上位に台頭したレースだった。13番枠からやや出遅れて後方馬群の中目で進め、アブレイズの捲りに付き合わなかったことが好走要因だ。
また、前走のメイSでは12番枠から出遅れたが、斤量が52kgと軽かったこともあり二の脚が速く、向正面で抑えが利かなくなって前に行ってしまった。3角手前で先頭に立ってしまったが、6着とそれなりに結果を残したことは評価できる。今回に向けて大きく上昇と言った感はないが、ここでも通用する下地はある馬。折り合いが付けば、チャンスはあるだろう。
穴馬は前走の函館記念できっかけ掴んだフェアリーポルカ
2020年に中山牝馬S、福島牝馬Sを連勝したことのある実績馬。昨年のクイーンSでは4着、その後もターコイズSで4着しているように能力に大きな衰えはない。昨年のクイーンSは差し、追い込み馬が台頭した流れ。先行しての4着は着順以上に価値が高い。実際にこのレースで逃げて6着だったのが、今回能力値1位のローザノワールであり、同馬はその後活躍している。
今年に入ってから、中山牝馬Sは最後の直線でローザノワールの直後から捌けず、ともに下がって行く不利もあり14着敗退。福島牝馬Sは8着と行きっぷりが悪く、不調を感じさせていた。
しかし前走の函館記念では、3番枠からまずまずのスタート。鞍上が二の脚をコントロールしながら好位直後の内でレースを進めることができた。結果としては早仕掛けで最後の直線で馬場の良い外に出すこともできず、スタミナ切れを起こして12着と大敗してしまった。しかし、前走のタフな馬場の実質厳しいペースの経験は、競走馬を目覚めさせる効果が大きい。
前走の馬場状態で前半3F36秒1で行けたことは、今回のメンバーに入ると先行力の面でかなり優位に立てそうだ。昨年のクイーンSでは不利な流れで4着に粘った馬。今回は前走の経験を生かしてレースの流れに乗れそう。ここは一変を十分期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ローザノワールの前走の指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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