【宝塚記念】スピード、スタミナ兼備の完璧王者タイトルホルダー! 歴代優勝馬を超える心肺機能

勝木淳

2022年宝塚記念レース回顧,ⒸSPAIA

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宝塚記念史上、前半600m34秒を切ったのは2回のみ

開幕2週目、雨の少ない梅雨、開催数が多い阪神の馬場は頑丈で上半期開催最終日も絶好の状態で迎えた。宝塚記念は11年アーネストリーが記録した2.10.1を更新する2.09.7のレコード決着。戦前からパンサラッサという強い快速馬がおり、馬場が馬場なのでレコードが出ても不思議なしと心構えはあったものの、その記録をみると、改めて驚かされる。タイトルホルダーはとてつもない競馬をしてみせた。

スタートから1コーナーまでの距離が長い阪神芝2200mは急坂をのぼりながらも先行勢が速いラップを刻むことがある。それでも宝塚記念で前半600m34秒を切ったのはこれまでに2回のみ。

07年ローエングリンが飛ばした年は33.5で突っ込み、1000m通過57.5のハイペース。ローエングリン以下先行勢は壊滅、アドマイヤムーンが先に動いた天皇賞馬メイショウサムソンを捕まえた。11年アーネストリーのレコード決着も前半600m33.6、1000m通過58.7。わずかに中盤で緩んで、残り600mから番手にいたアーネストリーが仕掛けて、押し切った。

最初の600mは34.3であっても、宝塚記念史上最も強烈だったのは04年タップダンスシチー。1000m通過58.5、後半1000m11.9-12.1-12.0-11.4-12.7、1.00.1。これをタップダンスシチーは自ら仕掛け3コーナー先頭、さらに4コーナーでラップ上昇、最速ラップで振り切った。アーネストリーもタップダンスシチーも佐藤哲三元騎手によるもの。ぜひとも佐藤氏にタイトルホルダーの宝塚記念について解説を伺いたい。

タイトルホルダーの強じんな心肺機能

今回はパンサラッサが一完歩目で遅れ、押して押してハナへ。タイトルホルダーはパンサラッサを待つ余裕があった。前半600mは33.9、宝塚記念3度目の34秒切りだった。前半1000mラップは12.5-10.4-11.0-12.1-11.6、57.6。先行したタップダンスシチー、アーネストリーが押し切った流れより、逃げて18着のローエングリンが作ったペースに近い。パンサラッサ8着はこれもまた立派であり、先行勢壊滅まである流れだった。前半は抑えるところがなく、スピードの持続力、マイル戦のような構成になり、後続は脚をためるところがなかった。

後半1200mは12.1-11.9-11.8-11.9-12.0-12.4。アーネストリーやタップダンスシチーのように残り1000mからレースは動く。タイトルホルダーはパンサラッサがじわじわとペースをあげるなか、余裕でマーク。後半はマイル戦級だった前半と同じような構成になり、最後は12.0-12.4と完全にスタミナを問う流れ。スピードがあり、かつスタミナがないと乗り切れなかった。これではついて来られる馬は少ない。

タイトルホルダーはそういった流れを2番手から抜け、2着ヒシイグアスに2馬身。アーネストリーやタップダンスシチーも強じんな心肺機能が武器だったが、タイトルホルダーはそれを超えているのではないか。これだけのラップを刻み、最後12.4で踏ん張る。前半600mとラスト200mがその証である。とんでもない心肺機能の持ち主であり、かつ現代競馬で必要なスピードも証明。これまでのステイヤーというカテゴリーを突き破り、歴史に残るチャンピオンになった。宝塚記念史上最強といってもいい。

ヒシイグアス以下もハイレベル

2着ヒシイグアスはタイトルホルダーが最後に疲れ、12秒台後半まで落ちていれば差しきれた内容。相手が強かった。しかし、この馬自身も使われながら復調気配。昨年中山記念が前半1000m通過57.8、決着時計1.44.9の好記録。本来のスピード、パワー兼備のパフォーマンスに近づいてきた。

3着デアリングタクトは目論見通り、休み明けのヴィクトリアマイルを使って上昇。中距離型らしく着順をしっかりあげてきた。ここまで高速決着になり前も止まらないとなると、ここまでが精いっぱい。しかし落ち着いた流れ、標準的な時計なら勝利も期待できる。無観客競馬が続く辛い時代をけん引してきた三冠牝馬。その復活を楽しみにしたい。

4着ディープボンドはゴール板でデアリングタクトに捕まったものの、スタミナはしっかり証明した。天皇賞(春)ではタイトルホルダーに早めに離されたが、今回は早めに仕掛けて食い下がる場面まであった。速い脚がない馬だが、高速決着でもきっちり上位争いに加わった点を評価したい。この馬とてパフォーマンスを上げている。

5着マイネルファンロンはさすがステイゴールド産駒。こういった厳しい流れには強い。直線は見せ場すらあった。条件がかみ合えば、まだまだ穴馬として狙える。エフフォーリアは6着。年度代表馬のブリンカー着用は記憶になく、それだけ陣営は覚悟を持ってこのレースに挑んだ。その意欲は必ず次につながる。今回は前半が速く、脚をためる場面がなかった。もう少し緩急のある競馬が合うのではないか。

天皇賞(春)と宝塚記念連勝は06年ディープインパクト以来。ディープの年は宝塚記念も京都だった。対してタイトルホルダーはどちらも阪神。おまけに昨秋菊花賞から阪神の中長距離GⅠ・3連勝は史上初であり、天皇賞(春)と菊花賞が来年京都に戻るとなると、当面は並ばれない。タイトルホルダーは変則開催を象徴する馬になった。

2022年宝塚記念、通過順,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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