【マーメイドS】ウインマイティー復活! 実りの秋へ視界良好、GⅠ好走も期待できる理由とは

勝木淳

2022年マーメイドSのレース結果,ⒸSPAIA

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今年は人気薄の実績馬

天候微妙な6月、ひと段落した古馬牝馬路線、ハンデ戦と複雑な要素が絡み合うマーメイドS。条件クラス所属馬の格上挑戦が実を結びやすく、波乱決着が恒例となりつつある。

みんながそういった傾向をもとに穴馬を探した結果、3勝クラス所属馬が2、3、6、7番人気に支持され、ここまでが単勝オッズひと桁台。となると、当然ながらオープン馬の人気が下がる。結果として、人気の盲点になったウインマイティーが勝ち、マリアエレーナ、ソフトフルートが2、3着。重賞実績上位馬たちで上位を独占。すっかり裏をかかれた結果だった。

今年は昨年に続き開幕週。さらに土日ともに雨の影響がなく、馬場状態は絶好。となると、格下馬にとって時計面で限界があった。梅雨時に限らず、やはり天候は競馬の予想にとって重要な要素であることを教えてくれた。

思えばウインマイティーは3歳時に今回と同じ舞台の忘れな草賞勝ちがあり、2020年オークスはデアリングタクトの3着。器用な立ち回りができるゴールドシップ産駒だった。しかしそれからは位置取りが後ろになるレースが続きリズムを崩したが、休みつつ徐々に復調。前走メトロポリタンSでは逃げて4着と3歳時の姿を取り戻しつつあるなか、レースを迎えた。

ウインマイティーが刻んだラスト11.8は力の証

ウインマイティーは発馬を決め、行く馬がいなければ行くという構えを見せた。しかし酒井学騎手負傷のための代打、昨年の勝利ジョッキー藤懸貴志騎手騎乗のハギノリュクスが先手を主張すると、さっさと控え、インの3番手。さらに外枠のリアアメリアとのポジション争いでもハギノリュクスの後ろを譲らなかった。

隊列はすんなり決まり、1コーナーに入ったものの、前に壁がないリアアメリアやラヴユーライヴが抑えるのに苦労したこともあり、向正面でペースが落ちなかった。そのラップは12.3-10.9-12.5-12.0-11.7、59.4。

2コーナー付近の12.5を底にペースが落ちず、後半1000mも12.0-11.8-11.6-11.7-11.8、58.9。馬場は前有利だが、こうも緩急のない流れになると先行勢には厳しい。まして格下馬にも辛く、最後の200mをウインマイティーに11.8で踏ん張られては、力の足りない後方待機組は順位をあげようがなかった。

道中からスピードの持続力を問われ続け、最後の急坂も11.8で乗り越えたあたり、ウインマイティー勝利の価値は高い。この流れを3番手追走から勝負所でも馬なり、コーナリングで逃げ馬を交わし一気に抜け出す。以前のセンスある走りが戻った。

父ゴールドシップ譲りの高い持続性と崩れにくい脚質。いよいよ嚙み合ってきた感もあり、秋はさらに大きな舞台でもやれるのではないか。エリザベス女王杯は今年も阪神芝2200m。ゴールドシップは同じく阪神芝2200mの宝塚記念を連覇している。やらかしたこともあるが、もっとも能力を発揮した舞台だ。

好走ゾーンの狭い3着ソフトフルート

2着マリアエレーナはハンデ55キロ。外枠勢の先行争いのなか、うまく引いてウインマイティーの斜め後ろのポジションに収まった。抑えきれない先行勢に惑わされることなく、いい位置でひと息入れられたことが大きい。勝負所の仕掛けもひとつ待った、坂井瑠星騎手は冷静だった。

勝ち馬に粘られてしまったのは痛かったが、京都記念後の外傷から上手く立て直した。こちらもセンスのある馬で、クロフネ産駒のわりに緩急を要する緩い流れを好位で我慢しつつ進める競馬がベストの印象だが、今回の流れで好走できたのは大きく、重賞に手が届く日も近い。

3着ソフトフルートは1番人気。好走範囲が狭いタイプで、ムラ駆けの代表。まして先行勢が手薄でスローまである今回の組み合わせでは推しづらいところがあった。しかし結果は上記のように緩みのない持続型ラップ。ソフトフルートはこういった流れが大好物で上がり34秒台の勝負に強い。また4コーナーまでラチ沿いでじっとし、最小限の動きで進路をつくった川田将雅騎手の作戦も当たった。

つまり3着好走は色々と嚙み合った結果。続けて好走できるタイプではないことに引き続き注意したい。前走都大路Sで岩田望来騎手がスローを先行したが、これもまたヒントになるのではないか。

4着リアアメリアはトップハンデ55.5キロ。前半で抑えるのに苦労しながらも、残り200mまではウインマイティーとともに踏ん張った。ここ最近、競馬の形がかなり崩れてきたなかでの番手追走は次につながるのではないか。

格下馬最先着は5着ステイブルアスク。久々の芝だった前走と同じく序盤から緩まない流れに追走が難しく、ほぼ最後方。馬群を縫いながら進路を見出し、抜け出した。そのため遅れ差しの形になり、5着。芝でもやれることは証明した。

2022年マーメイドステークス、レース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。

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