大阪杯に5連勝中ジャックドール参戦! 「連勝」が印象深い名馬3選、テイエムオペラオー、スマートファルコン、マーベラスサンデー

高橋楓

連勝が印象深い名馬3頭の記録,ⒸSPAIA

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印象に残る連勝劇の数々

トウケイニセイといえば岩手競馬ファンにとっては思い出深い名馬だろう。メイセイオペラがデビューする前年まで岩手の怪物として君臨。生涯43戦で[39-3-1-0]という信じがたい成績を残した。

父トウケイホープは12頭しか種付けをしておらず、競走馬登録されたのはわずか4頭。うち牡馬はトウケイニセイただ1頭だった。奇跡と言っても過言ではないだろう。大阪杯にも出走するジャックドールが先日の金鯱賞で5連勝を達成した際に、「連勝」というフレーズから当時の日本記録(18連勝)を樹立したトウケイニセイを思い出した。

今回は、「連勝」というキーワードで印象深い3頭を取り上げてみたい。

世紀末覇王、テイエムオペラオー

わずか一声、1000万円で競り落とした本馬がこれ程までに活躍するとは夢にも思わなかっただろう。いや、名前に「王」をつけるくらいだからオーナーには確信があったのかもしれない。

テイエムオペラオーはデビュー戦を2着、2戦目を4着と好走し、3戦目で初勝利。そこから破竹の4連勝で皐月賞制覇。良馬場とは言え小雨が降る中山競馬場。泥だらけになりながら追い込んでくる栗毛の馬体は当時の私の脳裏に焼き付いて離れなかった。


2000年 テイエムオペラオー 王道ローテーション,ⒸSPAIA


名牝ベガの初仔アドマイヤベガ、後に何度も対戦するナリタトップロードというライバルたちとはまた異質の強さを感じた。しかしその後の1999年シーズンは歯がゆいレースが続く。日本ダービーではアドマイヤベガの切れに屈し3着、京都大賞典では古馬の壁に跳ね返され3着。菊花賞ではナリタトップロードをかわせず2着、続くステイヤーズSでは単勝オッズ1.1倍に支持されながらも、よもやの2着。

潮目が変わったのは次走の有馬記念。直線で一度は抜け出し、グラスワンダー、スペシャルウィークとタイム差なしの3着に好走。この走りは翌年2000年の飛躍を期待させるものだった。そう、期待はしていたが、まさかあのような伝説の1年になるとは予想もしていなかった。下記、日付、レース名、2着馬を紹介する。

2月20日 GⅡ 京都記念 (ナリタトップロード)
3月19日 GⅡ 阪神大賞典 (ラスカルスズカ)
4月30日 GⅠ 天皇賞(春) (ラスカルスズカ)
6月25日 GⅠ 宝塚記念 (メイショウドトウ)
10月8日 GⅡ 京都大賞典 (ナリタトップロード)
10月29日 GⅠ 天皇賞(秋) (メイショウドトウ)
11月26日 GⅠ ジャパンカップ (メイショウドトウ)
12月24日 GⅠ 有馬記念 (メイショウドトウ)

まさにゲームの様な成績が世紀末に達成されたのである。京都記念で久々の勝利をあげると、阪神大賞典では1着テイエムオペラオー、2着ラスカルスズカ、3着ナリタトップロードの複勝およびワイドが全て1.0倍の元返しとなった。

天皇賞(春)でもこの3強対決を制した。宝塚記念ではグラスワンダーにレース中アクシデントがあったとは言え、雪辱を果たし上半期を終える。秋になると強さにますます磨きがかかる。京都大賞典でナリタトップロードを退けると、天皇賞(秋)では「1番人気は勝てない」というジンクスを跳ね返し勝利をあげた。

当年の二冠馬エアシャカール、日本ダービー馬アグネスフライトも挑戦してきたジャパンカップでは、メイショウドトウ、ファンタスティックライトとの叩き合いを制し、JRA重賞最多連勝記録を更新。そして迎えた有馬記念。アクシデント等もあり万全とはいえないなか、メイショウドトウをゴール前でとらえて優勝。2000年はGⅠ・5連勝を含む重賞8連勝を達成した。

楽な勝利は1度もなかったからこそ、今でも“覇王”と言われるのだろう。タイム差なしの接戦を5回。0.1秒差を1回。0.4秒差を2回。常にライバルとしのぎを削り、ファンを魅了した連勝劇だった。

重圧と戦い続けた9連勝、スマートファルコン

スマートファルコン 重賞9連勝の軌跡,ⒸSPAIA


海外競馬1戦0勝、中央競馬8戦4勝、地方競馬25戦19勝。通算成績34戦23勝、獲得賞金約9億9000万円。スマートファルコンが残した成績である。

本馬の大型連勝は2回ある。1度目は2008年11月の浦和記念から2009年5月のさきたま杯までの重賞6連勝。2度目は南関東を中心にダート競馬界の絶対王者であり続けた2010年11月から2012年1月、国内ラストランまでの9連勝である。

今回は2度目の大型連勝に焦点を当て、レース名と単勝オッズを振り返ってみたい。

2010年
11月3日 JpnⅠ 船橋・JBCクラシック(16.1倍)
11月24日 JpnⅡ 浦和・浦和記念(1.1倍)
12月29日 JpnⅠ 大井・東京大賞典(2.5倍)

2011年
5月2日 JpnⅡ 船橋・ダイオライト記念(1.0倍)
6月29日 JpnⅠ 大井・帝王賞(1.2倍)
9月23日 JpnⅡ 船橋・日本テレビ盃(1.0倍)
11月3日 JpnⅠ 大井・JBCクラシック(1.2倍)
12月29日 GⅠ 大井・東京大賞典(1.0倍)

2012年
1月25日 JpnⅠ 川崎・川崎記念(1.1倍)

中央所属の本馬であったが地方競馬場でのレースに強かった。そして特筆すべきは単勝支持率の高さである。9連勝の期間で単勝1.0倍の元返しが3回、1.1倍が2回、1.2倍が2回。しかし、決して相手が弱かったわけではない。

フェブラリーSの2着馬で南関の雄として君臨していたフリオーソ、GⅠ級を5連勝したエスポワールシチー、そしてフェブラリーSの覇者でドバイワールドカップ2着のトランセンド、他にも地方交流競走の常連ひしめくなかで、彼はこれ程の支持を得て圧勝していたのだ。

特に2011年の帝王賞では、逃げながらも最後の直線に入るとリードを保つどころか、更に差を広げる圧倒的な競馬を披露。エスポワールシチーに9馬身差をつけたレースは衝撃でしかなかった。

遅れてきた大物、マーベラスサンデー

マーベラスサンデー 遅れてきた大物の軌跡,ⒸSPAIA


この流れであれば障害レースで伝説を作り続けたオジュウチョウサンや、笠松から12戦10勝で中央競馬に殴り込みをかけ、JRA重賞6連勝を含む14連勝を達成したオグリキャップを取り上げねばならない。しかし、冒頭に書いたジャックドールを見たとき、私にはマーベラスサンデーが思い出された。脚質も違えば騎手も違う。それでも、底知れぬ可能性からこの2頭が不思議と重なった。

マーベラスサンデーはデビュー前に抜群の動きを披露するなど期待されたが、故障やアクシデントが重なり大幅にデビューが遅れた。デビューしてからも2度の骨折。3戦目を迎えた時にはすでに古馬になっていた。復帰戦は長期休養明けの影響もあってか4着。しかし、ここから一気に才能が開花した。鴨川特別、桶狭間Sと条件戦を連勝すると、

6月1日 GⅢ エプソムカップ
6月30日 GⅢ 札幌記念(翌年からGⅡ昇格)
9月8日 GⅢ 朝日チャレンジカップ
10月6日 GⅡ 京都大賞典

と重賞4連勝を含む6連勝を達成。父が当時大旋風を巻き起こしていたサンデーサイレンス、鞍上は武豊。特に京都大賞典では、前年オークス制覇の後にフランス遠征や菊花賞挑戦、その年の宝塚記念3着馬のダンスパートナーを退けた。そのレース内容から天皇賞(秋)での活躍に胸を躍らせた思い出がある。そのときの高揚感とジャックドールの金鯱賞が不思議とよく似ていた。

96年の古馬戦線といえば、阪神大賞典でナリタブライアンとマヤノトップガンの伝説の一騎打ちや、サクラローレルの覚醒など華やかな1年。そのなか、天皇賞(秋)本番で2番人気に支持されたということから、どれだけの競馬ファンがマーベラスサンデーの底知れぬ強さに期待していたかが伺えるのではないか。

2022年4月3日、大阪杯。ジャックドールはどの様な走りを見せるのか、楽しみにしたい。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。

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