【京都2歳S回顧】ジャスティンビスタが持久力勝負を制して波乱V “2歳馬離れ”したスタミナとしぶとさが光る
勝木 淳

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ラスト600m35.6の持久力勝負
西のクラシック登竜門はジャスティンビスタが勝ち、無敗で重賞制覇を達成。2着アスクエジンバラ、3着ゴーイントゥスカイで決着した。
人気順は11頭立ての9番人気、10番人気、3番人気。馬連は324.9倍もついた。この世代の牡馬戦線はどうも馬券的に難しい。サウジアラビアRCでは8頭立て7番人気が2着、京王杯2歳Sでは2、3着が8、12番人気、デイリー杯2歳Sも3着は8頭立て7番人気とこの秋は波乱が続く。
平穏だったのは3番人気、5番人気、2番人気で決まった東京スポーツ杯2歳Sぐらいであり、なかなか事前の評価と結果が結びつかない。その分、勢力図も定まらず、混とんとしたまま、12月のGⅠに突入しそうだ。
今回、波乱要因はまず、前半のペースにある。ネッタイヤライとメイショウソラリスの先手争いは互いに様子を見る形で進み、1番枠だったネッタイヤライが枠の差で1コーナーを優位に回っていき、メイショウソラリスが引く形になり、行きたがってしまった。キャリアが浅く、前走で逃げた経験から馬が少し混乱したようだ。これも経験だろう。
一方で、そこからペースを落とせば、例年通りのスローペースに陥るところだが、ネッタイヤライは勝負所までペースを落とさなかった。決め脚比べでは敵わないと踏んだ上での作戦であり、これがスタミナを問う流れへ誘った。
前後半1000mは1:00.0-1:00.4。これだと2歳の若駒は脚がたまらない。特に好位に構えた馬たちには厳しくなり、ラスト600mは11.9-11.9-11.8、35.6。内回りとはいえ、若干時計を要した。
2歳馬離れしたスタミナをもつジャスティンビスタ
勝ったジャスティンビスタは中団より後ろで流れに乗り、勝負所でライバルたちが先に動くなか、思うようにポジションをあげられなかった。結果的にこれが末脚の温存につながり、最後に外から追い込みを決めた。仕掛けを待たされる場面もあり、手応えも決していいとはいえなかった。それでも伸びた。
2年前の勝ち馬シンエンペラーと似た雰囲気を感じた。明らかに2000mは短く、今回差しきれたのは、上がりがかかる展開の助けが大きい。とはいえ、2歳馬離れのスタミナとしぶとさは注目すべきであり、今後も上がりがかかる馬場や展開で狙い打ちしたい。
父サートゥルナーリアは多くのタイトルを獲得したが、個人的に印象的だったのは2019年有馬記念だ。アエロリットが飛ばしたこのレースの上がり600mは37.6。リスグラシューが圧勝し、その2着に突っ込んできたサートゥルナーリアの上がり600mは35.4。敗れはしたものの、サートゥルナーリアの適性の一端がみえた。
2025年11月24日までのデータをみると、産駒の勝率は小倉と札幌が高く、東京、福島と続く。軽さが要求されないコースが上位に並ぶ。そのうち、ジャスティンビスタと同じ母の父ディープインパクトは【23-13-8-108】勝率15.1%、複勝率28.9%と出走数は群を抜いている。サンデーサイレンスの4×3がつくれる配合であり、納得できる。
母父ディープの京都は外回り【4-2-1-8】勝率26.7%、複勝率46.7%に対し、内回りは【0-1-2-10】複勝率23.1%と冴えない。ちょっとエンジンのかかりが遅いタイプも多く、坂の下りを利用し、かつ直線が長い外回りがいい。それだけに内回りで鮮やかに差しきれたのは持続力を問う競馬になった証でもある。
人気落ちで狙いたいバルセシート
2着はアスクエジンバラ。こちらはジャスティンビスタの内からレースを進め、勝負所では先行勢の外に出し切れず、進路を切り返す場面があった。着差の1馬身ほどの不利ではなく、逆転までは言えないが、もう少し際どかったはず。こちらもサンデーサイレンスの4×3をもつキングカメハメハ系であり、ジャスティンビスタとは共通点がある。
前走サウジアラビアRCの4番人気7着で一気に人気が落ちたが、その前はコスモス賞1着と上がりがかかる競馬に強い。前走は上がり600m34.3で伸びきれず、距離、ペース、競馬場どれも合わなかった。母の父はマンハッタンカフェ。もっと距離があってもいいかもしれない。
3着ゴーイントゥスカイは東京芝2000mの新馬を好位から上がり34.3で抜け出していた。上位2頭とは適性が逆である可能性が高く、それを踏まえると先に動いて3着に粘れたのは収穫だ。スタートを決め、流れに乗れれば、あっさり2勝目をあげても不思議はない。
1番人気バルセシートは7着。スタートの遅れが最後まで響いた。姉レシステンシアという血統背景はこの手の持続力勝負に強いイメージだけに、スタートの遅れは痛すぎた。とはいえ、終始、無理をさせなかったので、ダメージを最小限に抑えられたはずで、次につながっていくだろう。アスクエジンバラのようにこの敗戦で人気を落とすなら、むしろ積極的に買いたい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。
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