【京王杯2歳S回顧】坂東牧場の期待馬ダイヤモンドノットが5戦目で重賞V 暮れのGⅠへ見えた希望と懸念
勝木淳

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多頭数はキャリアがモノをいう
朝日杯フューチュリティステークスに続く京王杯2歳ステークスはダイヤモンドノットが勝ち、重賞初制覇。2着フクチャンショウ、3着トワニで決着した。
2歳重賞が体系化され、さらにマイルと2000mにわかれたため、各重賞とも頭数が少ない競馬が続く。この秋もサウジアラビアロイヤルカップが8頭、アルテミスステークスは10頭、ファンタジーステークスも12頭とフルゲート未満が続いた。
ところが、京王杯2歳Sは16頭と頭数がそろった。レースの歴史を振り返っても、このレースが16頭以上だったのは過去5回しかない。直近ではモントライゼが勝った2020年とオオバンブルマイの22年だけ。3年ぶりの多頭数競馬になった。
その過去5回は1番人気の勝利がゼロ。頭数が増えると、波乱の可能性が高まるのは競馬の常。2歳戦ならなおさらだ。
また、過去5回の16頭立て以上では1戦1勝が2勝に対し、3戦以上も2勝とレースキャリアが結果を左右する傾向もあった。この二つのデータのうち、ダイヤモンドノットが該当したのは後者。キャリア4戦での優勝だった。
京成杯3歳S時代も含めた1986年以降、勝ち馬の最多キャリアは5戦。03年コスモサンビーム、11年レオアクティブの2頭。4戦は7頭いて、09年エイシンアポロン以来16年ぶりだった。この年も頭数は17頭と多かった。多頭数の京王杯2歳Sはキャリアが決め手になる。該当年まで覚えておければ使える格言だ。
マイル対応の可能性を示す内容
勝ったダイヤモンドノットは2番手から抜け出した。前半600m35.2と速くなく、コーナーで一旦12.0とペースを落とし、上がりの競馬になった。
ラスト600mは11.4-11.0-11.3。ダイヤモンドノットは残り400mの11.0で勝負を決めた。スローの好位差しなので展開に恵まれたのは事実だが、11.0で突き抜ける脚力は非凡なものがある。
生産した坂東牧場は、POG取材時にダイヤモンドノットを期待馬にあげ、福永祐一厩舎がどんな馬に育てていくのか楽しみだと語っていた。その言葉通り、まずは2歳で重賞タイトルを獲得。キャリアは重ねたが、結果として来春まで展望できる賞金を確保できた。
デビューから川田将雅騎手が実戦で競馬を教え込んだことも、今回の結果につながった。流れが遅くても、騎手が合図を送るまで待つ。早期にこれを覚えたのも大きな成果だ。
母エンドレスノットはウィキウィキの初仔で、この後ウリウリ、マカヒキと活躍馬が出た。坂東牧場で繁殖入りすると、ゾンニッヒ、ハッピーアズラリーなどラブリーデイ産駒が続き、金子真人HDらしい自前の血統図をつないだ。
ダイヤモンドノットはラブリーデイ以外を交配された初の産駒でもある。ラブリーデイとの相性も上々だが、もうひとつ別の可能性を探った結果が、父ブリックスアンドモルタルとの交配。北米芝チャンピオンは日本でもマイルから2000m前後で結果を残す。母エンドレスノットのきょうだいも似たような適性を示しており、血統面ではマイル対応も問題ない。
6月から5回競馬を使った疲労には注意が必要だが、距離が延びて悲観する材料はない。GⅠでもう少し厳しい流れになれば、むしろブリックスアンドモルタルの持続力が引き出されるのではないか。
適性が広いフクチャンショウ
2着フクチャンショウは今回が4戦目。前走は9月の中山芝1200mを好位から押し切った。当時のレースラップは前後半600m34.2-34.6。スプリント戦としては速くなく、むしろ1400や1600mに近いイーブンペースだったことがここにつながった。
中山で上がり600m34.2を記録し、今回は東京で上がり600m33.5。父イスラボニータらしい軽さの持ち主であり、さほど舞台を選ばず、適性の間口が広い。兄モンシュマンはミッキーアイル産駒のスプリンターだが、こちらは距離延長にも対応できる。でなければスローの1400mで末脚は使えない。
接戦の3着は追い込んだトワニ。12番人気ながら上がり最速33.0と最後はよく伸びた。
姉アネゴハダはスプリンターであり、東京芝1400mにも勝ち鞍があった。終い勝負に徹して3着と、トワニは距離が延びて良さを引き出せそうだ。アネゴハダは先行力が武器だった。こちらは現状、後半勝負で良さを出す。混戦向きだろう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『もう一つの引退馬伝説2 関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)に寄稿。
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