【東海S回顧】ブリンカーで闘志再燃、“完全復活”ヤマニンウルス 夏に強い血統も後押し
勝木淳

ⒸSPAIA
ブリンカーで息を吹き返したヤマニンウルス
今年からプロキオンステークスと施行時期、条件を入れ替えた東海ステークスはヤマニンウルスが勝ち、重賞2勝目を飾った。2着はインユアパレス、3着はビダーヤで決着した。昨夏、小倉のプロキオンステークスを制したヤマニンウルスは実質連覇といっていい。
昨年はそこから思うようなレースを使えず、完全にリズムを乱した。名古屋大賞典や小倉大賞典挑戦はチャンピオンズカップ、フェブラリーステークスを除外されたゆえのこと。重賞ウイナーであってもGⅠに出走できない。ダートGⅠの出走ラインは高い。
その後、ダート1400mに矛先を向けるも、コーラルステークスは3着。斤量59キロも影響した。久々にJRA中距離重賞に戻ったアンタレスステークスは7着敗退。いや、こんなはずじゃない。陣営の声が聞こえてくるようだった。
現状を打開する策として用いたのがブリンカーだった。これが実戦で見事に当たった。久々に序盤の行きっぷりがよく、先手を主張するリジルの後ろという馬群に入らない形をとれた。
集中力を保つ役割を担うブリンカーの効き目は絶大。ぜひ初ブリンカーや装着2走目など効果が大きいタイミングで狙ってほしい。ただし、馬が慣れると効果は薄まる。矯正が長続きしないのはサラブレッドの賢さの証だ。奥が深い。
夏に強いヤマニンパピオネの一族
リジルが先手を奪い、前半は速い流れに映ったものの、実際は11.8-11.2-11.6-11.7。3コーナーでペースはわずかながら落ちており、ヤマニンウルスはリズムをつくることができた。
直線ではリジルをとらえ、早々に先頭。このスタイルこそがヤマニンウルスのもの。得意とするスピードでねじ伏せる競馬ができた。完全復活といっていいだろう。ツボにハマったときの強さは父ジャスタウェイ譲り。天皇賞(秋)やドバイでの強さを思い出す。
一方で、母ヤマニンパピオネといえば、北九州記念を勝ったヤマニンアルリフラ、同4着ヤマニンアンフィルが記憶に新しい。母の父スウェプトオーヴァーボード譲りの平坦巧者の一族とみていたが、ヤマニンウルスが直線急坂の中京でも重賞を勝ったので、平坦巧者とはいいきれない。
間違いないのは夏場の強さ。夏が来たらこの血統を思い出そう。2歳に父サトノダイヤモンドのヤマニンソロイスト(未デビュー)、父エピファネイアの1歳もいる。ヤマニンパピオネの血はこの先も続く。
ヤマニンウルスは今後、どの路線を目指すのか。1400mで結果を残した以上、1400m~マイル付近がターゲットだろうか。それとも中距離に戻るのか。選択肢という意味ではもう一度中距離に出走してもいい。スムーズな追走さえ叶えれば、距離が原因で止まるとは思えない。
互角といっていい4歳2、3着馬
2着はインユアパレス。全4勝を1200mであげており、オープンでも1200m路線を進んでいたが、2走前の欅ステークスで距離を1400mに延長し、タイム差なし2着と結果を残した。追走に余裕が生まれ、末脚に余力を残せたからだろう。
今回も好位の後ろで脚を溜め、馬群を縫って抜けてきた。ソツなく競馬できる分、ロスを抑えられ、大きくは崩れない。今後もアテになる軸馬になりそうだ。
3着は1番人気ビダーヤ。ダート転向後、4連勝中だったが、ここで止まった。内枠から馬群に入って進めたが、勝負所で目の前にインユアパレスがいたため、外を選択せざるを得なかった。2、3着の差はこの内外の攻防差だろう。この辺はレースのアヤといっていい。
ヤマニンウルスとの差は感じるが、インユアパレスとの差はない。勝利した欅ステークスと着順が入れ替わったことを踏まえても、現状は互角であり重賞でもやれる。どちらも4歳馬で、ダート馬としてはまだまだこれから。経験と成長に期待しよう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【東海S】結果/払戻
・【東海S予想印まとめ】ビダーヤとサンライズフレイムが二強構図 伏兵サンライズホークも侮れず
・単複回収率200%超!武豊騎手の激アツ条件 サマー重賞に強い騎手、調教師を徹底分析
