【チューリップ賞】ウオッカのレコードを約1秒更新、シンハライトの衝撃 桜花賞前哨戦を「記録」で振り返る
緒方きしん

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ジュエラーと熱戦を繰り広げたシンハライト
今週はチューリップ賞が開催される。過去にはテイエムオーシャンやスイープトウショウ、ウオッカら才能溢れる牝馬たちが勝利してきた一戦だ。2021年にはメイケイエールとエリザベスタワーの同着優勝が話題に。桜花賞への直行組も多くなった昨今だが、それでも前哨戦として存在感を維持している。
今回はそんなチューリップ賞の記録を振り返る。なお、データは1986年以降のものを使用する。
昨年は武豊騎手騎乗のスウィープフィートが1分33秒1で勝利。これはレース史上2番目の勝ち時計だった。
チューリップ賞の勝ち時計をランキング化すると以下の通り。
1位 1:32.8 シンハライト(2016年)
2位 1:33.1 スウィープフィート(2024年)
3位 1:33.2 ソウルスターリング(2017年)
3位 1:33.2 ナミュール(2022年)
5位 1:33.3 マルターズディオサ(2020年)
1位はシンハライト。1996年にエアグルーヴが打ち立てたレコードタイム(1:34.2)を2007年にウオッカが塗り替え、そのウオッカのレコード(1:33.7)を0.9秒も更新してみせた。
シンハライトはデルマーオークス勝ち馬シンハリーズとディープインパクトを両親に持つ良血馬で、デビューから2連勝でチューリップ賞を迎える。この年はジュエラーやヴィブロス、アドマイヤリードにクロコスミアといった多彩なメンバーが揃っていた。
1番人気ジュエラーと2番人気シンハライトは出遅れて後方からの運びとなったが、最後の直線では2頭ほぼ同じ位置から見事な末脚でライバルを抜き去り、そのまま突き抜ける。最後はシンハライトがハナ差制した。しかし、その次走・桜花賞では着順が逆転。牝馬クラシック第一戦は1着ジュエラー、2着シンハライトのハナ差決着となった。
続くオークスはジュエラー不在の中でシンハライトが勝利。桜花賞以来の再戦となったローズSもシンハライトが勝利(ジュエラーは11着)となったが、シンハライトはその一戦がラストランに。ジュエラーも秋華賞4着を最後に現役から退き、2頭とも早すぎる引退を迎えた。
2位のスウィープフィートは5番人気での勝利。2着に9番人気セキトバイースト、3着には15番人気ハワイアンティアレが食い込み、三連単は16932.9倍という大波乱となった。
スウィープフィートはその後も桜花賞4着、オークス6着と世代上位の実力を見せ、以降は長期休養中。3月23日の愛知杯で復帰予定となっており、注目が集まる。
3位タイのソウルスターリングとナミュールも実力派として知られる2頭。ソウルスターリングはオークスを制し、ナミュールは古馬になってからマイルCSを勝利した。
特にナミュールのマイルCSは騎乗予定だったR.ムーア騎手が負傷で乗り替わりとなり、藤岡康太騎手が代打騎乗で勝利した一戦。多くのファンの記憶に刻み込まれている。
また、1位〜3位タイまでの4頭はキャロットファームの所有馬が2頭(シンハライト、ナミュール)のほか、YGGホースクラブ(スウィープフィート)に社台レースホース(ソウルスターリング)が1頭ずつと、一口クラブの所有馬が占めていた。
キャロットファーム所有馬の躍動
そこで馬主別に、チューリップ賞で馬券圏内に食い込んだ回数を見てみると、下記の通りとなった。
1位 9頭 キャロットファーム
2位 7頭 サンデーレーシング
3位 4頭 社台レースホース
1位のキャロットファームは先述のシンハライトとナミュールに加え、ハープスターでも勝利を挙げている。勝ち馬以外にもリスグラシューやレシステンシア、リラヴァティといった豪華なメンバーが揃い、騎手では横山武史騎手、池添謙一騎手、松山弘平騎手がそれぞれ2度馬券に絡んでいる。
2位のサンデーレーシングはラッキーライラック、レーヴディソール、ブエナビスタで計3勝。いずれも1番人気での勝利だった。ラッキーライラックは三冠馬オルフェーヴルの初年度産駒。阪神ジュベナイルフィリーズに続いてここも完勝、桜花賞でも最有力候補に目されたが、そこで立ちはだかったのがアーモンドアイである。
そのラッキーライラックの勝利を最後にしばらく馬券内がなかったが、一昨年に6番人気コナコーストが2着と好走している。
3位の社台レースホースもエリザベスタワー、ソウルスターリング、オレンジピールで計3勝を挙げているが、なかでも印象的だったのは1997年。大本命メジロドーベルが単勝1.3倍と人気を集めるなか、1着オレンジピール、2着スカーレットメールと社台レースホースの2頭でワンツー決着となる一戦だった。
オレンジピールは引退後も繁殖牝馬として血を広げ、子孫からは昨年のブリーダーズゴールドカップでオーサムリザルトの2着となったデリカダなどが活躍している。
今年の登録馬を見ると、キャロットファームからはマイエレメントが参戦予定で、社台レースホースもノクナレアとラウルベアの2頭が登録している。
今年もクラブ馬が強さを発揮するのか、はたまたそれを阻む存在が現れるのか。馬主にも注目だ。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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