【ターコイズS】秋華賞組は大敗からの巻き返しが好走パターン アドマイヤベルは距離短縮で新味

勝木淳

重賞昇格後の過去9年のデータから見るターコイズステークス,ⒸSPAIA

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引退近づくクラブ所属の5歳馬

あと一ヵ月でサラブレッドはひとつ年を重ねる。3歳と古馬との力差はほぼないに等しく、もはや年齢云々は関係ない。

だが、クラブに所属する5歳牝馬にとって6歳は別れのタイミングであり、その直前に行われるターコイズSや翌年早々の新設重賞である小倉牝馬Sは引退レースの知らせがちらほら。3月に移った中山牝馬S、愛知杯と現5歳世代のクラブ所属牝馬は別れの季節を迎える。

血を残す大切な役割に進む牝馬たちが最後にターフを駆ける姿を見送る。これも年末の風物詩となりつつある。データは重賞昇格後の2015年以降9回分を使用する。

人気別成績,ⒸSPAIA


シーズン末期のハンデ戦。それも舞台は中山と設定はややこしい。1番人気【3-0-1-5】勝率33.3%、複勝率44.4%とそれなりも、2番人気【1-1-0-7】勝率11.1%、複勝率22.2%、3番人気【1-3-1-4】勝率11.1%、複勝率55.6%と5番人気まではほぼ互角だ。

上位5頭による混戦が基本線で、10番人気以下【1-2-4-56】勝率1.6%、複勝率11.1%と伏兵の割り込みも十分考えられる。馬券的には買い目を惜しまず、手を広げて攻めたい。

年齢別成績,ⒸSPAIA


3歳【4-2-1-33】勝率10.0%、複勝率17.5%が勝ち馬候補も、4歳【2-6-4-33】勝率4.4%、複勝率26.7%、5歳【3-1-2-37】勝率7.0%、複勝率14.0%と古馬勢も差はない。上記の通り引退が近い5歳の取捨はカギになる。

人気別でみると、3番人気以内の5歳【3-1-0-2】、10番人気以下の5歳【0-0-2-22】と極端。ただし、3着に来た10番人気以下はいずれも個人馬主所有。引退間近のクラブ所属馬は人気薄での激走はない。3番人気以内でクラブ所属馬は【1-1-0-0】。5歳クラブ馬の狙いごろは上位人気だ。

秋華賞大敗アドマイヤベルの可能性

5歳クラブ馬はセントカメリアが出走予定。前走はアンドロメダS5着。マイル戦はデビュー3戦目以来。2000m連勝でキャリアをスタートさせており、マイルへの対応、初出走の中山と乗り越える要素は多い。

前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走クラスはGⅠが【4-0-2-26】勝率12.5%、複勝率18.8%と目立つ。内訳では秋華賞【2-0-1-12】勝率13.3%、複勝率20.0%に注目。6着ミアネーロ、12着アドマイヤベルが当てはまる。

秋華賞6~9着【0-0-0-4】、10着以下【2-0-0-7】勝率、複勝率22.2%で大敗からの巻き返しがパターン。中山の重賞1、2着のミアネーロをこのデータで軽視するのは危険な予感だが、中山マイルは菜の花賞5着。中距離で出世した馬であり、距離短縮はプラスとはいえない。

母ミスエーニョの産駒は持ち込みのフランケル産駒ミスエルテは短距離がよかったが、日本で交配された産駒は1800mが中心。ミアネーロもこの傾向を受け継ぐ。

データに合致するアドマイヤベルもフローラS勝ちなど1800m以上で経験を積んだ。2000からマイルへ距離を縮めていいというタイプではない。格が落ち、守備範囲の距離に戻って一発というシナリオには当てはまらず悩ましい。

だが、こちらは血統的に可能性がある。母がベルアリュールⅡで、姉には2017年ヴィクトリアマイルを勝ったアドマイヤリードらがいる。ベルクレスタもアルテミスS、クイーンC2、3着とマイルで結果を残した。アドマイヤベルは距離短縮で新味が出るかもしれない。

前走GⅡ、GⅢ・距離別成績,ⒸSPAIA


GⅠ以外の重賞も距離に注目する。こちらは同距離1600m【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%、距離延長【0-0-1-4】複勝率20.0%、短縮【2-1-2-28】勝率6.1%、複勝率15.2%。距離短縮組も結果を残しており、府中牝馬S6着フィールシンパシー、クイーンS4、7着ドゥアイズ、イフェイオンも評価する。

昨年2着のフィールシンパシーはマイル戦で結果を残し、今年は1800mをこなした。適距離に戻って前進はありそうだ。ドゥアイズも洛陽S勝ちなどマイルの実績がある。クイーンSで0.1秒差なら、短縮で馬券圏内突入はあり得る。

前走OP/L・距離別成績,ⒸSPAIA


前走OP/Lは同距離【0-2-2-10】複勝率28.6%、距離延長【1-1-0-18】勝率5.0%、複勝率10.0%が好走ゾーン。オーロC11着ミシシッピテソーロなど延長組は一発を秘める。

一方で、カシオペアSを勝ったアルジーヌら短縮組は【0-0-0-3】。20年ランブリングアレーがカシオペアSを勝ち、当レースでは2番人気で7着に敗れた。アルジーヌもベストは1800m。息の入りが浅いマイル戦は若干忙しい印象だ。

重賞昇格後の過去9年のデータから見るターコイズS,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『アイドルホース列伝 超 1949-2024』(星海社新書)に寄稿。

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