【天皇賞(秋)】連勝中の欧州血統内包馬が狙い目 リバティアイランドは距離短縮、血統ともに◎
坂上明大
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傾向解説
2019~20年はアーモンドアイ、2022~23年はイクイノックスと、当時の日本最強馬による連覇が目立つ天皇賞(秋)。今年は近年と比べて混戦模様ですが、それでも三冠牝馬リバティアイランドを筆頭に現在の芝中距離路線をけん引する強豪が集結する一戦となりました。本記事では血統面を中心に、天皇賞(秋)のレース傾向を整理していきます。
大前提として把握しておく必要があるのは、東京芝2000mは日本競馬のド真ん中に位置づけられるコースであるということ。日本競馬が芝1600~2500mを中心に形成されていることはGⅠの数や賞金額からも明白で、特に東京競馬場に代表されるような直線の長いコースこそが日本の主流コースと呼べる舞台です。
そしてそれは競走馬の生産自体、「強い芝中距離馬」をつくることがメインテーマであることを意味し、層が厚いゆえに世代交代のスパンが短いこともメインカテゴリーらしい特徴といえるでしょう。そのため、過去10年では6歳以上の馬の好走が一度もなく、これは似た舞台で行われるジャパンCでも同じ傾向にあります。また、人気決着になりやすいという点も主流条件らしい傾向です。
<年齢別成績(過去10年)>
3歳【2-0-2-7】
勝率18.2%/連対率18.2%/複勝率36.4%/単回率54%/複回率54%
4歳【3-6-4-31】
勝率6.8%/連対率20.5%/複勝率29.5%/単回率13%/複回率83%
5歳【5-4-4-36】
勝率10.2%/連対率18.4%/複勝率26.5%/単回率45%/複回率55%
6歳~【0-0-0-47】
勝率0%/連対率0%/複勝率0%/単回率0%/複回率0%
ただし、2018、19年頃を境に前走距離別成績では大きな変化が生じています。以前は前走距離に限らず、マイラーが穴を開けるケースが多かったですが、2019年以降は20年2着のフィエールマン(5番人気)や23年2着のジャスティンパレス(6番人気)といったステイヤーの好走が目立っている点には注意が必要です。
<2014~18年の前走距離別成績(3~5歳、単勝オッズ49.9倍以下)>
2000m未満【1-2-3-10】
勝率6.3%/連対率18.8%/複勝率37.5%/単回率68%/複回率127%
2000m【1-1-0-7】
勝率11.1%/連対率22.2%/複勝率22.2%/単回率40%/複回率51%
2000m超【3-2-1-13】
勝率15.8%/連対率26.3%/複勝率31.6%/単回率50%/複回率50%
<2019~23年の前走距離別成績(3~5歳、単勝オッズ49.9倍以下)>
2000m未満【2-1-2-8】
勝率15.4%/連対率23.1%/複勝率38.5%/単回率23%/複回率66%
2000m【0-2-1-7】
勝率0.0%/連対率20.0%/複勝率30.0%/単回率0%/複回率78%
2000m超【3-2-2-7】
勝率21.4%/連対率35.7%/複勝率50.0%/単回率52%/複回率94%
血統面ではディープインパクトを筆頭に日本の主流血統が走りやすいことは間違いありません。組み合わせとしてはNureyev≒Sadler's Wellsといった欧州の主流血統が合っており、過去5年の勝ち馬全てがこれに該当しています。
また、同期間内で3頭いた6番人気以下の好走馬は、いずれも欧州血脈を内包しており、国内主流血統+欧州血統が天皇賞(秋)における最適配合と言えるのではないでしょうか。
<血統別成績(過去5年、3~5歳、単勝オッズ49.9倍以下)>
Nureyev内包【4-2-2-7】
勝率26.7%/連対率40.0%/複勝率53.3%/単回率46%/複回率112%
Sadler's Wells内包【1-1-0-3】
勝率20.0%/連対率40.0%/複勝率40.0%/単回率68%/複回率118%
有力馬の血統解説
・リバティアイランド
母ヤンキーローズは2016年スプリングチャンピオンSなどGⅠ・2勝の活躍馬で、母母CondesaarはMonroe≒Sex Appealの2×3を持ちます。2019~20年優勝馬アーモンドアイとは、父父にキングカメハメハを持つ点、Sex Appealの血を増幅している点が共通し、特に本馬はオーストラリア産である母の仔らしい筋肉量豊富なスピードに優れた好配合馬といえるでしょう。
3歳秋以降は長い距離を中心に走ってきましたが、筋肉質でまとまった馬体から本質は芝1600~2000m向き。今回の条件替わりは非常に楽しみです。
・レーベンスティール
リアルスティール×トウカイテイオーらしいスレンダーな体つきですが、母母父リアルシャダイから受け継ぐ馬力も兼備。身体が締まってきた現在は弱点の少ない中距離馬に仕上がってきており、東京芝2000mでも大きく崩れることはないでしょう。ただ、GⅠ実績馬との比較では、少々血統面で劣る感は否めません。
・ドウデュース
母ダストアンドダイヤモンズはダート短距離の北米重賞勝ち馬で、父ハーツクライにスピードを強化した典型的な成功パターン。ただ、その分500kg強の雄大な馬格を有しており、馬体が完成した現在は軽い馬場でLyphard由来の機動力を生かす競馬がベストでしょう。昨年の有馬記念がベストパフォーマンスではありましたが、重馬場だった前走の宝塚記念よりは本馬に向く舞台となりそうです。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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