【紫苑S回顧】マスターソアラが示した持続力と根性 重馬場で輝いた武器は秋華賞でも注目
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【紫苑S回顧】マスターソアラが示した持続力と根性 重馬場で輝いた武器は秋華賞でも注目

2026/09/07 10:50
勝木淳
2026年紫苑S、レース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

道悪特有の厳しいレースラップ

秋華賞トライアル・紫苑ステークスはマスターソアラが制し、重賞初制覇。2着サムシングスイート、3着ドリームコアで決着した。

土曜日は我慢してくれた中山の空だが、日曜日はそうはいかなかった。朝から間断なく降る雨は開幕週の馬場を濡らしていき、紫苑Sは重馬場で行われた。

重賞になった2016年以降、重馬場になったのは今回が初。稍重は2回あり、マルターズディオサが勝った2020年の勝ち時計が2:02.1、モリアーナの2023年が1:58.0だから、今回の2:03.5はかなり時計を要する一戦となった。

せっかくの秋華賞トライアルなので、できれば良馬場でやりたかったが、こればかりは仕方ない。今年の紫苑Sは道悪の巧拙と持続力を問うレースになった。

展開面では、先手をとる馬が不在だった。前走条件戦で逃げた馬が3頭いたが、リアライズルミナス、ナイスプレーアスク、ベンヴェヌータとそれぞれスローペースの逃げであり、決して主張して飛ばすタイプではない。まして重馬場のトライアルとなれば、強気に出ていきづらい状況でもあった。

意を決して、ハナを主張したのはナイスプレーアスク。ベテランの岩田康誠は前残りの馬場を読み、あえて先手をとっていった。とはいえ、飛ばしてスタミナをロスするわけもなく、序盤から中盤は明らかなスローペースで、前半1000m通過は1:01.9だった。

しかしながら、1000m標識通過後はゴールまでほぼ一定のラップになり、12.3-12.4-12.3-12.2-12.4の1:01.6。道悪特有の加速も減速もしないラップ構成は、3歳牝馬にとって厳しい形になった。


7カ月の休養が吉と出たマスターソアラ

勝利したマスターソアラは、中団後ろのインに構えた。じっくり脚を溜めつつ、3コーナー手前からじわりと内を追い上げていき、4コーナーで外を目指して進路を切り替え、徐々に馬場の真ん中へと持ち出していった。

目の前にはドリームコアがおり、いい目標になった。直線では右ステッキに反応し、外へヨレながらも懸命に立て直して伸びてきた。持続力と根性を感じさせる。

戦歴を振り返ると、2歳11月に芝1600mの新馬戦を勝ち、しっかり間隔をとってクイーンカップで賞金加算を目指した。ところが、今回先着したドリームコアやジッピーチューンに瞬発力勝負で敗れる形の4着。東京のマイル戦で、最後のギアチェンジの差が出た印象だ。

その後は春のクラシックを目指して使うことなく休養へ入り、今回は7カ月の休み明けだった。春は続戦への期待もあったが、あえて消耗を避け、スパッと休ませたことが紫苑Sの勝利へつながった。適性を発揮しての勝利ではあるが、休ませたことによる馬の成長も大きい。

父は先週も中京2歳Sを勝った絶好調のシスキン。2歳、3歳時から結果を残せる種牡馬であり、クラブ馬主やPOGでは心強いパートナーだ。

母の父ダイワメジャーとはニックスで、勝率は4割を超えてくる。マスターソアラも、先週のジーティーマイカも母の父ダイワメジャー。生産者に話を聞くと、大きな繁殖牝馬と交配することでサイズを補正し、走りやすい馬体の産駒が誕生しやすいという。

GⅠ級の瞬発力勝負だとキレ負けしてしまうが、持続力型のロングスパート戦なら負けない。京都の内回りコースで行われる秋華賞も、早めにラップが上昇するようならおもしろい。


展開、馬場不問のドリームコア

2着サムシングスイートは、内ぴったりを回る徹底したイン狙いが功を奏した。

直線ではナイスプレーアスクとリアライズルミナスの間にあった狭いスペースをこじ開けてきた。狭いところに入っても怯まない気持ちの強さも光った。母の父ヴィクトワールピサは皐月賞、有馬記念で中山のインをこじ開けて勝利しており、その血も感じた。混戦向きだ。

3着にはオークス2着馬のドリームコアが入った。春と同じく好位からの正攻法で、目標になりながらも3着と実力は示した。ここは始動戦であり、目標は次。道悪で能力全開といかなかったのは、むしろプラスになるのではないか。

展開や馬場に左右されないのは強みであり、秋華賞向きだ。適性やレース幅の広さは、母ノームコアよりその妹クロノジェネシスに近い。クロノジェネシスは2019年の秋華賞馬。4コーナー5番手から抜け出した競馬も、イメージと重なる。


2026年紫苑S、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 芦毛の怪物たち』(ガイドワークス)に寄稿。

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