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【東海S回顧】マテンロウコマンドが重賞連勝 真夏の熱闘で示した“母系の底力”

2026/07/27 10:40
勝木淳
2026年東海S、レース結果,ⒸSPAIA

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重賞らしい我慢比べ

夏の中京開幕週の東海ステークスはマテンロウコマンドが制し、JRA重賞初制覇。2着メイショウハチロー、3着ドンインザムードで決着した。

大雨だった新潟、夏とは思えぬ涼しさだった札幌とは対照的に、最高気温38度の中京は猛暑そのもの。暑熱対策の難しさを突きつけられた。東海Sに関しても、「熱中症」を敗因にあげる陣営もいた。暑さとの付き合い方は来年、大きく変わるとされるが、課題解決の最善策につながることを祈る。

灼熱の中京で争われたレースは、ダートの短距離戦らしいスピードと我慢比べの競馬になった。スタート直後は好発を決めたマテンロウコマンドが先頭に立つも、松山弘平騎手は周囲の出方をうかがっており、ハナには行かない構えをみせた。

かわって内からドンインザムードが出ていくも、こちらも押し出されるのを嫌っており、最終的にハナをとったのはメイショウハチロー。同馬がハナをとったのは、2戦目の中京ダート1800m以来のこと。それほど展開は流動的だった。

とはいえ、スローにならないのはさすが重賞といったところ。前半34.2はハイペースとまではいえないが、スピードの裏づけがなければ対抗できない。後半600mは12.2-12.2-12.5の36.9。我慢比べを乗り切った上位3頭は、4着インユアパレス以下との差を示した。


超一流への道を進むマテンロウコマンド

勝ったのは、先行争いを繰り広げた3頭のうち、最初に引いたマテンロウコマンドだった。好発から先制攻撃をかまし、さっと引くというクレバーなレース振りが光る。

最初から控えようとすれば、スピードに乗りきれず、もう少し位置が下がる可能性があった。初手で前に出たことで、優位な位置を確保したのが大きい。松山弘平騎手の手腕はもちろん、順応したマテンロウコマンドの操縦性も相乗効果を生んだ。

もともと未勝利Vから4連勝で兵庫チャンピオンシップを制した素質馬。その後は距離変化への対応や重賞の壁に阻まれた印象だが、前走で1400mの黒船賞を逃げ切って吹っ切れた。積極策で流れに乗れると、1400mなら簡単には止まらない。

母ダイアナヘイローは2017年の北九州記念の勝ち馬で、その後1400mの阪急杯と阪神カップを人気薄で制した個性派。重賞2勝は行き切ってのもので、積極策が似合う血統でもある。

マテンロウコマンドの母系は母の父にキングヘイロー、母の母の父にグラスワンダーの名がある。2頭は同じ1995年生まれ。グラスワンダーは外国産馬のため出走権をもたなかったが、98年クラシック世代だ。熱い世代の名が並ぶのが、個人的には感慨深い。

さらに、この母系は5代母にステイゴールドの母ゴールデンサッシュの名もある。90年代終わりから2000年はじめの競馬界をけん引した血の結晶というのも熱い。

我慢比べを制し、最後に前に出た強さは、これら名馬の血を感じさせる。レース振りから崩れにくさも醸しており、ダート一線級に育っていく可能性がみえた。


軽い馬場向きのドンインザムード

2着メイショウハチローは成績が安定するにつれ、先行力が身についてきた。途中からハナに立ち、厳しいマークを背負っての粘り込みであり、こちらもダート一線級に必要な資質を備える。楽しみが広がる。

初勝利が1800mで、前走は1600mで3勝クラスを突破。距離適性は心強く、重賞を勝つチャンスは十分ある。

3着ドンインザムードは昨年、不良のレパードSを制しているものの、その後の内容からベストは1400~1600mのスピード勝負とみる。

59kgを背負って完勝した前走の欅Sが評価され、今回は単勝1倍台の1番人気に推されたが、直線では背後にいたマテンロウコマンドに離され、メイショウハチローとの差も詰め切れなかった。本来の力を出したとはいえない。上位2頭と比べ、もう少し軽い馬場向きかもしれない。

2番人気ダノンフィーゴは10着。熱中症だったようで、力を出せなかった。真夏の競馬ははじめてで、経験不足もあっただろうか。

3番人気ドラゴンテイラーは最下位14着。序盤の先行争いに加われず、挽回しようと道中で脚を使い切ってしまった。連勝は4で止まったが、これも経験。オープン・重賞の流れに慣れてくれば、レース振りは変わってくる。


2026年東海S、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。

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