【日本ダービー回顧】類まれな自在性が示す三冠の未来 ロブチェンの勝負根性とスタミナがたぐり寄せた栄光

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勝ち筋はパントルナイーフにあった
2023年生まれの頂点を決する舞台・日本ダービーはロブチェンがゴール板で前に出て二冠達成。2着パントルナイーフ、3着バステールで決着した。
2026年の日本ダービーが終わった。ゴール板を人馬が通過した瞬間に色々な顔が頭に浮かんだ。その一人が木村哲也調教師だった。何度か取材し、話を伺う機会が多かったが、イクイノックスでダービーに敗れた直後の表情がもっとも印象に残る。「2着ではダメなんです」何度もその言葉を振り絞っていた。
今年、木村調教師はイクイノックスと同じ末脚を東京スポーツ杯2歳Sで繰り出したパントルナイーフをダービーの舞台に送り出した。2着だから木村調教師の顔が浮かんだわけではない。このレースは九分九厘パントルナイーフのレースに見えたからだ。
7枠からスタートを決め、緩く流れる隊列争いを制する形で好位の後ろにつけた。直線は外が伸びる馬場であり、いつでもその進路を入れる位置にいた。
前半1000m通過はバステールが途中で動いても、1:00.7と遅く、バステールの動きに呼応するかのように早めにリアライズシリウスが先頭をとった。後半1000mのラップは11.9-11.6-11.2-11.5-11.5。早めに11秒台に突入する流れになり、先行勢が残すのは簡単ではなくなった。
直線に入った時点ではパントルナイーフのラインが確実に勝ち筋だった。それもC.ルメール騎手は慌てることなく、少し溜めて追い出しを待ち、万全の体制をつくった。ダービーの栄光を着実に手元に引き寄せていた。パントルナイーフが勝ち筋に入ったレースを低く首を突き出すようにかっさらっていったのがロブチェンだった。
異例の二冠馬ロブチェン
正直、ロブチェンの陣営からみれば、パントルナイーフの位置がほしかったはず。自然流の逃げで制した皐月賞を考えれば、そこまで引く形は作りたくなかった。1コーナーの入りはギリギリの位置のようにみえた。
言いかえれば、ギリギリでパントルナイーフの後ろにつけられたのが勝利への布石だった。この一点が上手くいったことが最後の勝負につながった。
仕掛けていったのは残り600m地点。4コーナー手前から仕掛けていった。パントルナイーフの後ろに位置し、先に手が動く展開での差し切りはロブチェンの勝負根性とスタミナがなせる業だった。
普通、競走馬は苦しくなると、徐々に首を高くして走るものだが、ロブチェンはゴールに向けて首を低くしていく。あまり見かけない走りはスケールと可能性そのもの。三冠の声が早くも出ているが、父は菊花賞と天皇賞(春)を勝ったワールドプレミアであり、例年のような距離不安説は通じない。
さらに、皐月賞を逃げて、ダービーを逃げ切った馬はいるが、差して勝った馬は記憶になく、類まれなる自在性の持ち主でもある。どのポジションでも競馬ができるという強みは古馬超A級であってもそうそう見当たらない。
ちなみに新種牡馬の産駒で春二冠達成はブライアンズタイムのナリタブライアン以来のこと。皐月賞を1番人気でレコード勝ちし、乗り替わりなくダービーに向かい、二冠を獲得したのもナリタブライアン以来。ナリタブライアンは菊花賞を圧勝し、三冠馬に輝いた。
これほど三冠に向けて不安要素がない二冠馬がいただろうか。それだけにまずは夏を無事に過ごしてほしい。残すは自身の体調だけだろう。
仕上げも競馬も完璧だったパントルナイーフ
2着パントルナイーフはゴール直後、木村哲也調教師の顔が浮かぶほどの大接戦。完璧な競馬だった。
なぜ完璧な競馬だったのに勝てなかったのか。ドウデュースに敗れたイクイノックス以上に敗因が見当たらない。ただ相手が悪かったとしか。皐月賞からダービーまでの仕上げは完璧といってよく、そのプロセスを踏めたことが来年以降につながってほしいと願う。
3着バステールは硬直したレースを動かす役目を引き受け、なおかつ3着に残った。向正面で行かせ過ぎず、リアライズシリウスの後ろで一旦待つ形も申し分なかった。ただ、その際に少し馬が行きたがったことが最後に響いたか。といっても、動いてから我慢するのは簡単なことではない。レイデオロのダービーを思い起こさせた。
弥生賞ディープインパクト記念の勝ち馬が皐月賞11着によって11番人気まで人気を落としたが、やはりダービーは弥生賞。皐月賞と共同通信杯と同じくつながりは強い。
その共同通信杯を勝ち、皐月賞2着だったリアライズシリウスは7着。遅い流れを嫌い、早々に先頭に立ち、後半1000mすべて11秒台というダービーらしい持続力勝負を演出した。
ラスト200mで一旦、脚色を鈍らせ、その後、バステールに前をカットされてしまったが、それでもじわじわと伸びようとしていた。確かに距離は少し長かったかもしれないが、力負けではない。2000m路線ならスピードをいかした競馬ができそうだ。
青葉賞の勝ち馬ゴーイントゥスカイは4着。最後は大外を一完歩ごとに伸びて前との差を詰めてきたが、及ばなかった。スタートでの遅れや仕掛けた際の瞬発力など改善する面は多々あるが、それはすべて伸びしろというもの。秋にはまた違った姿を見せてくれそうだ。
5着マテンロウゲイルも皐月賞とは一変して味な競馬を見せた。好位にとりつき、周囲が動く中、待って直線に脚を残す。馬群に囲まれていたとはいえ、末脚を伸ばし、5着に入ったのは事実。ダービーで末脚を伸ばせば将来は明るい。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 世界への挑戦』(ガイドワークス)に寄稿。
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