【桜花賞】スティルインラブがアドマイヤグルーヴの猛追凌ぐ 「宿敵との邂逅」2003年をプレイバック

単勝3.5倍の上位人気2頭が火花を散らす
今週は桜花賞が開催される。過去にはラインクラフトやダイワスカーレット、近年でもソダシ、リバティアイランドら数々の人気馬たちが制した牝馬クラシックの第一戦。今回はそんな中から2003年の一戦をピックアップし、当時のレースを振り返っていく。
2003年の桜花賞は、単勝オッズ3.5倍の馬が2頭並び、上位人気を形成していた。
1頭目はアドマイヤグルーヴ。母はオークス馬エアグルーヴという期待の良血馬である。管理する橋田満厩舎はサイレンススズカやアドマイヤコジーンなどを手がけた名門で、武豊騎手がデビューから手綱を取り、新馬戦、エリカ賞、若葉Sと3連勝へ導いた。
2頭目はスティルインラブ。新馬戦、紅梅Sと連勝で臨んだチューリップ賞ではオースミハルカに敗れるも、上がり最速タイの末脚で存在感を示した。管理するのはトウカイテイオーやフラワーパークを育てた名伯楽・松元省一調教師。鞍上は当時、GⅠ未勝利のデビュー10年目・幸英明騎手。
ほかにも前記のオースミハルカ、阪神JFで2着の後にフィリーズレビューを制したヤマカツリリー、ホープフルS、フラワーCと連勝で臨むマイネヌーヴェルら実力馬が多数参戦。スティルインラブが勝利した紅梅S組からも2着モンパルナス、3着シーイズトウショウが駒を進めてきた。
単勝25倍以下に9頭がひしめく混戦模様の中、レースは幕を開けた。
アドマイヤグルーヴ出遅れから始まった桜花賞
ゲートが開くと、人気を背負うアドマイヤグルーヴが出遅れてしまい後方からの追走に。一方、スティルインラブは逃げるモンパルナスの後ろ、先行集団のインを位置取る。ワンテンポ置いて、シーイズトウショウも外から前へと上がり、ヤマカツリリーら中団の馬たちも位置を押し上げるなど、序盤から動きの多い展開となる。
3コーナーに差し掛かるとレースはさらに激化。中団にいたヤマカツリリーが3番手まで進出し、その内側をシーイズトウショウ、スティルインラブが併走する。後方ではアドマイヤグルーヴと武豊騎手が、内からスルスルと上がってくる。
4コーナーでは2番手のホワイトカーニバルが勢いよく先頭に並びかける。スティルインラブも直線に向けて進路を確保するなど、先行勢の脚色が良い。後方馬群からは焦りが見え隠れする。
直線に入ると、馬場の中目に進路を取ったスティルインラブがラストスパート。一方、内ラチ沿いではシーイズトウショウが勢いよく伸びている。この2頭で決まったか──。そう思った瞬間、大外から猛然と追い込む姿が見えた。アドマイヤグルーヴが1頭、違う脚色で前へ迫って来る。
アドマイヤグルーヴか、スティルインラブか、シーイズトウショウか。3頭による接戦にもつれ込むかに見えた。だが、幸騎手のアクションに応え、スティルインラブが沈み込むと、最後にもうひと伸びする。粘っていたシーイズトウショウに1馬身半差をつけ、ゴールを駆け抜けた。
2着から半馬身差の3着にはアドマイヤグルーヴが入線。4着にはヤマカツリリー、5着には逃げたモンパルナスが逃げ粘った。前残り決着の中、4コーナー12番手から迫ったアドマイヤグルーヴは負けて強しの走りだったといえる。また、この年は紅梅S組が1、2、5着と大躍進を遂げた異例の一戦ともなった。
シーイズトウショウはなんと13番人気での好走。後にスプリント重賞で5勝という実績を考えればなんら不思議はなかったが、当時はまだ伏兵扱いだった。そのため、馬連は9,210円、スティルインラブとのワイドは2,400円、アドマイヤグルーヴとのワイドは3,180円の高配当となった。
上がり3Fの数値では、2番手のスティルインラブが35.1に対して、上がり最速のアドマイヤグルーヴは34.5。展開が違っていればどうだったのか。出遅れがなければ…。未来のライバル関係にも想いを馳せながら、ファンは競馬場を後にした。
3戦無敗で紅梅Sを制したリリージョワが登場
その後、スティルインラブはオークスと秋華賞も2番人気で勝利。桜花賞がGⅠ初勝利だった幸騎手とともに牝馬三冠を達成した。
アドマイヤグルーヴは三冠すべてで1番人気に推されたが、オークス7着、秋華賞2着と悔しい敗戦が続いた。しかし、秋華賞後のエリザベス女王杯でスティルインラブを下して待望のGⅠタイトルを手にしている。
アドマイヤグルーヴは繁殖牝馬として、二冠馬ドゥラメンテを輩出。同馬の産駒からは三冠牝馬リバティアイランドが誕生した。さらにはタイトルホルダーやマスカレードボール、ルガル、スターズオンアース、エネルジコといったGⅠ馬を次々に送り出し、日本の血統図に大きな影響を与えた。
一方のスティルインラブは、2007年に7歳の若さで早逝。産駒としては牡馬のジューダただ1頭を遺し、その血は受け継がれずに終わった。
また、キャリア全レースでコンビを組み続けた幸騎手は現在も第一線で活躍中。ブルーコンコルド、ホッコータルマエといったダート馬や、セイウンコウセイ、ファイングレインといった短距離馬で数々のGⅠ級タイトルを獲得している。
2021年にはアカイイトとのコンビでエリザベス女王杯を制し、スティルインラブで2着に敗れたレースにリベンジも果たした。2010年にはJRA史上初となる年間騎乗回数1,000回を達成するなど、様々な馬を乗りこなす姿には多くの賞賛が集まっている。
今年は紅梅S組からリリージョワ、アイニードユー、プレセピオの3頭が桜花賞に出走を登録。特にリリージョワは3戦無敗馬でもあり、スティルインラブだけでなくアドマイヤグルーヴにも重なる点がある。
スティルインラブ以降、紅梅S組からの桜花賞馬は出ていないが、20年以上ぶりの誕生となるか、注目が集まる。そして、偉大な2頭の大先輩に比肩するような走りを見せられるだろうか──。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、ダイワスカーレット、アパパネ、ドウデュース。
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