【阪神大賞典】単勝1.1倍オルフェーヴルの大逸走に場内騒然 混沌の2012年をプレイバック

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前年の三冠馬参戦
今週は阪神大賞典が開催される。過去にはゴールドシップやメジロマックイーン、ナリタブライアンらが制したレース。ここでは2012年の一戦をピックアップし、振り返っていく。
2006年にディープインパクトが勝利して以降、阪神大賞典ではドリームパスポート、ポップロック、オウケンブルースリ、メイショウベルーガ、コスモメドウといった面々が1番人気で敗れてきた。
しかし、2012年はレース前から雰囲気が違った。ディープインパクト以来となる三冠馬オルフェーヴルが参戦したのである。前年はスプリングSから6連勝、三冠制覇後は有馬記念も勝ち、当然ながら年度代表馬に選出。ここでも「三冠馬がどのように勝利するか」に注目が集まった。
単勝オッズは1.1倍のオルフェーヴルに対し、2番人気ヒルノダムールが9.5倍、3番人気ギュスターヴクライは13.4倍と大きく離れていた。
当時5歳のヒルノダムールは前年に産経大阪杯、天皇賞(春)を連勝するなど活躍。凱旋門賞帰りの有馬記念は6着に敗れたが、年明け初戦の京都記念は3着と好走しての臨戦であった。
ギュスターヴクライは、オルフェーヴルと同期ながらこれが初対戦。弥生賞6着、青葉賞4着と世代上位の力は示していたが、条件戦を抜けたのは古馬になってからで、前走ダイヤモンドS2着からの参戦だった。母は秋華賞馬ファビラスラフイン。ジャパンCでも2着と好走した名牝の血もまた、期待を集める一因となっていた。
他にも直近2年の覇者ナムラクレセント、トウカイトリックをはじめ、2010年の天皇賞(春)を制したジャガーメイル、2008年の菊花賞馬オウケンブルースリなど現役屈指のステイヤーが集結した。
3コーナーで異変
ほぼ揃ったスタートから先手を奪ったのはリッカロイヤルだが、最内枠のギュスターヴクライ、7枠10番のビートブラックが好スタートから前をうかがう。8枠12番のオルフェーヴルも好位につけ、それらを見る形でヒルノダムールが追走。隊列は比較的まとまって進んだ。
ゆったりとしたペースに落ち着くと、鞍上の和田竜二騎手に促されてナムラクレセントが一気に外から先頭へ立ち、レースを引っ張る。最初のスタンド前に入り、眼前の優駿たちに歓声が送られる。だが、その歓声はすぐさま「どよめき」へと変わった。単騎逃げの形に持ち込んでいたナムラクレセントを、オルフェーヴルが追いかけ始めたのである。
コーナーに入っても、オルフェーヴルのスピードは弛まない。ラチ沿いを走るナムラクレセントに対し、外に膨らみながらも並びかける。3番手ビートブラックとの差は5馬身ほどついていた。
スタンドから悲鳴があがったのは、3コーナー。単独先頭に立っていたオルフェーヴルが、突如ラチを大きく離れて急失速したのである。予期せぬトラブルにファンは騒然となり、後続の各馬も混乱に飲み込まれ、勝負の行方がわからなくなる。
だが、オルフェーヴルは大きく位置を下げたのち、そこから再び大外を捲っていった。最終コーナーで先頭を走るのはナムラクレセント。直後にはギュスターヴクライ、その外からジャガーメイルが追い、オルフェーヴルとヒルノダムールも並んで進出する、大混戦となった。
直線に入ると、ナムラクレセントをギュスターヴクライが交わす。しかし、外からはオルフェーヴルがあがってくる。「あの逸走がありながら、まだ伸びるのか」。数十秒前には競走中止さえよぎった馬が、今は先頭争いをしている。その凄まじさに混乱したファンも多かったのではないか。
だが、さすがに道中でスタミナを使い過ぎたか。最後は前を走るギュスターヴクライと同じ脚色になった。ジリジリとは差を詰めながらのゴールとなったが、半馬身、届かなかった。
1着はロスのない立ち回りに徹したギュスターヴクライ、2着は大きなロスがある中で才能を見せつけたオルフェーヴル。ファンのどよめき、ざわめきはしばらく止むことはなかった。
単勝配当は1,340円。馬連は400円、そして馬単は2,160円。圧倒的1番人気が2着に敗れた結果、馬単の「表裏」を購入していたファンが歓喜することとなった。
レース確定後も場内のざわめきはおさまることなく、ファンは歴史に刻まれた一戦を語り合った。それは同時に、道中の凄まじいイレギュラーにも決して動じず、人馬一体となって勝利を掴み取ったギュスターヴクライと、鞍上の福永祐一騎手の凄味を感じさせる一戦でもあった。
青葉賞4着レッドバンデらが大物撃破を狙う
ギュスターヴクライは続く天皇賞(春)でも5着に善戦。オルフェーヴルも、調教再審査を経て本番に挑んだものの、11着とまさかの大敗を喫する。この大舞台を勝利したのは、阪神大賞典で10着に敗れていたビートブラックだった。
オルフェーヴルはその次走、宝塚記念で復活を遂げると、渡仏してフォア賞も制覇。凱旋門賞でも2着に好走する。翌年秋にも凱旋門賞で2着となると、引退レースの有馬記念では8馬身差の圧勝劇。その天才的な走りで人々を魅了した。引退後は種牡馬としてウシュバテソーロやマルシュロレーヌといった世界クラスの大物を輩出している。
一方、ギュスターヴクライはその後のレース中に右前浅屈腱不全断裂を発症して競走能力を喪失したものの、引退後は乗馬として穏やかな日々を送る。
阪神大賞典が重賞初制覇となったギュスターヴクライ。その姿に重なるように、今年も初タイトルを狙う素質馬たちが参戦する。
なかでも、青葉賞4着という実績を持つレッドバンデはその戦歴からも彼にも重なる。昨秋もセントライト記念3着、菊花賞5着と惜しい戦いが続く中、今回は格上挑戦に挑む。果たして、大物撃破は再現されるのだろうか──。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ゴールドシップ、ドウデュース。
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