【フェブラリーS回顧】コスタノヴァが復活告げる連覇劇 “馬具だけにあらず”陣営の調整手腕も光る

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ブリンカーの功罪
2026年GⅠ開幕戦フェブラリーSはコスタノヴァが差し切り、連覇達成。2着ウィルソンテソーロ、3着ダブルハートボンドで決着した。終わってみれば2、3、1番人気で決着し、上位の壁は厚かった。とはいえ、この3頭はそれぞれ不安要素もあった。
ダブルハートボンドは東京ダート1600m初出走。コーナー4つの緩急を要するダート戦でキャリアを積んでおり、東京のスピード競馬への対応は未知数だった。
コスタノヴァは前走武蔵野Sで大きく出遅れてしまい、最後は猛然と追い込むも2着止まり。レース後、発走調教再審査、いわゆるゲート再審査を課せられた。さすがにGⅠで大きく遅れてしまえば、挽回は難しい。
ウィルソンテソーロは一昨年のフェブラリーS8着。当舞台2勝は条件戦時代の記録だった。
結果として、これら課題は結果に影響を与えた部分もあるが、克服したこともある。その克服度合いが着順に影響したといえる。
武蔵野Sで大きく出遅れたコスタノヴァは今回、ブリンカーを装着してきた。集中力を高めるための馬具であり、同時に装着してしまうと、気が入り過ぎる場合や一度装着してしまうと、なかなか外せないという禁断の一手だったりする。
コスタノヴァは、実戦はおろか最終追い切りでも装着していない。メリットデメリットが併存する馬具だけに賭けという側面はあった。
連覇を目指す以上はリスクを厭わない。陣営はその賭けに勝った。スタートは少し遅かったが、出遅れと呼べる範疇にはなく、コスタノヴァとしては正常に近い。
こうなると、C.ルメール騎手もポジションを選ぶことができる。出遅れてしまえば、作戦もなにもない。戦略を描きにくい状況下において、最高の序盤だったのではないか。ポジションは中団馬群の外。いつでもどこからでも動けるポジションを確保し、前の状況をうかがう。
一方、前は確たる逃げ馬がおらず、スタートしてしばらくはお互いがけん制する形になり、内でスタートがよかったシックスペンスが主導権を握った。
前半800m47.1はGⅠとしては平均的なペースであり、外からロードクロンヌとペプチドナイルが続いた。この2頭が外からじわっとプレッシャーをかけたことで、先行集団は緊張感ある状態が勝負所まで続いた。
コスタノヴァと陣営の信頼関係の変化
2年前の覇者であり、当舞台を得意とするペプチドナイルが直線で早めに先頭に立ち、ダブルハートボンドがそれを追い、さらに背後を狙っていたウィルソンテソーロがつかまえに出る。
コスタノヴァはこれら攻防を余裕の手応えで飲み込んでいった。本来の行きっぷりが戻り、ライバルたちの仕掛けを待てる精神的なスペースがあった。こうなれば、東京7戦6勝のコース巧者の血が騒ぐ。上がり最速35.2で完勝。脚色が一枚上だった。
ブリンカーの効果と片づけるのは簡単だが、昨年のフェブラリーSを勝ってから、3連敗を喫した状況において、復活に導くための陣営の調整による部分は大きい。ブリンカーは最後のスパイスのようなもの。人に頼らず、自分の力で走り切るよう奮い立たせる、いわば自立を促すような調整が連覇につながった。
頼られすぎずに好き勝手にさせないという信頼関係のバランスは人間同士でも難しい。人馬でそれを形にした陣営の手腕を讃えたい。
またも2着に終わったウィルソンテソーロの苦悩
2着ウィルソンテソーロはチャンピオンズCで再三好走しているように、コーナー4つで緩急をつけながら走る競馬が得意だった。ワンターンで一定のスピードを維持しながら、最後に伸ばす東京は距離も踏まえ、少し適性がズレる。とはいえ、昨秋マイルCS南部杯で盛岡のマイルをクリアしており、その経験が好走につながった。
今回はコスタノヴァの決め手が上だった。2着の回数はJRA・GⅠだけでも4回目。前に残られ、後ろから差されと実に歯がゆい。JRAのタイトルを獲得するために足りないものはなんだろうか。
3着ダブルハートボンドは自分の競馬はできたものの、東京の長い直線でスピードの持続力を維持できなかった印象がある。東京でGⅠを勝つには400mでは足りず、トップスピードに入ったまま、600mを乗り越えなければならない。少しだけ末脚が持続しきれなかった。
東京未経験が作用した面はあった。ただ裏を返せば、400m勝負なら十分、GⅠレベルであり、舞台が替わればあっさりといった場面はあるだろう。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『サラブレッド大辞典』(カンゼン)に寄稿。
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