【朝日杯FS】“上昇力”に期待のカヴァレリッツォが本命 穴馬はタガノアラリア、コルテオソレイユ

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能力値7位以内とそれ以下に大きな溝
14頭立てとなった今年の朝日杯フューチュリティステークス。メンバーを見ると能力値7位以内とそれ以下に大きな溝があり、能力値8位以下の馬は想像を遥かに越える変わり身がないと苦しいとみる。
能力値1~5位の紹介

【能力値1位 リアライズシリウス】
6月の新馬戦(東京芝1600m)で逃げて7馬身差の大楽勝。その走りが評価され、前走の新潟2歳Sでも1番人気に評価されたが、ここも4馬身差の圧勝だった。
その前走は9番枠からやや出遅れ、中団外からの追走。外枠を利して徐々に2番手外まで挽回し、コントロールして3角に入る。
3~4角では逃げ馬の後ろをロスなく進め、前と2馬身半差で直線へ。序盤で仕掛けを我慢して、ラスト2Fで馬場の良い外に誘導して追われると、堂々と先頭に立って後続を3馬身ほど離す。ラスト1Fではさらに差を広げ、4馬身差で完勝した。
当時は高速馬場で、前後半47秒8-45秒6とかなりのスローペース。3~4角で3番手以下が前を追いかけず、動きたくても外の馬が蓋になって動けないタイセイボーグのような馬もいたなかで、唯一逃げ馬に食らいつけたことで前有利の展開に恵まれてはいる。
しかし、4馬身差をつけた2着タイセイボーグが先週の阪神ジュベナイルフィリーズで3着と好走。さらに同馬とハナ差3着だったフェスティバルヒルは次走でファンタジーSを勝利しているように相手のレベルは高かった。
前走の上がり3F最速タイムがフェスティバルヒルの32秒5に対し、本馬は33秒4。後方から進めた相手との比較で、本馬は序盤で位置を挽回して2番手で進めているが、それを考慮してもキレる脚は使えていない。ただ、日曜は雨予報だけにチャンスは広がる。
本馬は馬体重が520kg近くある大型馬で、今回は4ヵ月の休養明け。万全の状態での出走とはならないだろうが、時計が掛かる決着になるほどチャンス。対抗評価だ。
【能力値2位 カヴァレリッツォ】
前走・デイリー杯2歳Sは2着。7番枠からアオリ気味のスタートを切ると、内から寄られて外に逃げようとするところ、いったん最後方に下げて内に切れ込み、各馬が空けている内から外の馬を壁にして2列目に押し上げていく形をとる。道中は掛かってかなりコントロールに苦労していた。
3角でペースダウンすると、逃げ馬とのスペースを詰め切ってしまいブレーキをかけながら進出。4角では内から雑に先頭列に並びかける。直線でも最内から抜け出すと外に逃げたがるシーンが見られ、ここで内からアドマイヤクワッズが接近。ラスト1Fでかわされたが、そこからもしぶとく食らいついてアタマ差だった。
当時は高速馬場で、前後半4F46秒5-46秒6の平均ペースだが、前半3F34秒5というペースが速い地点で内から押し上げたこともあり、レース内容としてはしんどかったはず。それでも直線でしっかり伸びたように、素質は高い。
3着アイガーリーには5馬身差をつけ、函館2歳Sの勝ち馬エイシンディード(4着)や、サウジアラビアロイヤルカップの2着馬ガリレア(7着)はさらに後ろ。ハイレベルなメンバー相手の結果という点も強調できる。
また、C.デムーロ騎手は前走時が初コンビで、新馬戦から若さ溢れるレースぶりであることを指摘されていた本馬を乗りこなすことができなかったが、継続騎乗となる今回はさすがに修正してくるだろう。前走が無茶苦茶な競馬だっただけに、何か1つでも改善されれば上位争いに加われるはずだ。
能力値1位のリアライズシリウスも強い馬だが、キレ味はこちらが優勢で、伸びしろもこちらに分があるとみる。成長合戦の2歳戦は上昇力重視で本馬を本命に推す。
【能力値3位 ダイヤモンドノット】
デビューからの2戦は芝1200mを使われていたが、追走に忙しさを見せて善戦止まり。それでも1400mで上昇を見せる。
2走前のOP・もみじSでは、離れた2番手追走から単騎スロー逃げのリリージョワを捉え損なって2着に敗れたが、前走の京王杯2歳Sでは断然の1番人気に応えて勝利した。
その前走では10番枠から好スタート決めるも、やや内に差さる場面も。そこから立て直し、二の脚の速さでじわっと先行策をとった。ハナも主張できるレベルだったが、内のルートサーティーンが抵抗したため、最終的には同馬を行かせてその外、2番手で3角に入る。
3~4角でも楽な手応えで、ルートサーティーンと半馬身差の2番手で直線へ。序盤では仕掛けを待ち、ラスト2Fで仕掛けると、一気に抜け出して1馬身1/4差ほど前に出る。ラスト1Fではさらに突き抜け、3馬身差で完勝した。
当時はコンクリートレベルの高速馬場で、前後半3F35秒2-33秒7というかなりのスローペース。前有利の展開に恵まれる形での勝利だったが、馬なりでハナ主張も可能なスピードを見せながらも上手く折り合っていた。
朝日杯FSの阪神開催直近10回では先行が5勝、中団1勝で差し~追込が4勝。以前は3~4角のペースダウンを利用して差し~追込馬が前に取り付き、結果を残していた。近年は3~4角でさほどペースが緩まないため、内枠の先行馬が活躍している。
今回は前走から1Fの距離延長で、6枠10番に入った。当然、先行して3~4角のロスが応える危険性もあるが、ここ3戦は前の位置を取りながら後半型のレースをしており、前走も前後半3Fは35秒3-33秒6。折り合いもつくので、ペース次第では末脚を生かすレースをする可能性もある。それならば外枠でもチャンスはあるだろう。
【能力値4位 アドマイヤクワッズ】
前走・デイリー杯2歳Sはカヴァレリッツォとの激戦に勝利。2連勝で重賞タイトルを手にした。
その前走は6番枠からやや出遅れ、さらに内から接触されたこともあってコントロールしながら下げて後方からの追走。前半は流れたが団子状態となり、最後方の内目を通してカヴァレリッツォの後ろから3角に入った。
3~4角でも最内からカヴァレリッツォをマークする形となり、3列目で直線へ。序盤でカヴァレリッツォの後ろから内を突いてすっと伸び、先頭に立った同馬にクビ差まで迫る。ラスト1Fでは同馬とのマッチレースとなったが、内からしぶとく伸びて接戦をアタマ差で制した。
当時は高速馬場の平均ペースだが、前半3Fは34秒5と速く、ここでカヴァレリッツォについて行く形で位置を押し上げながら、最後までしぶとさを見せた。この点はカヴァレリッツォ同様に高く評価すべきだが、こちらは3~4角でカヴァレリッツォをマークしたことで、進路取りはスムーズだった。
カヴァレリッツォの章でも触れたが、成長合戦の2歳戦は前走からの上昇力が重要。若さ溢れるレースぶりだったカヴァレリッツォに対し、本馬は優等生のレースぶりで、折り合いが付きすぎているように感じた。
つまり、内包するスピードはカヴァレリッツォのほうが上で、上昇力という観点では同馬に見劣りするということ。それでも、新潟2歳Sに次ぐ高指数のハイレベル戦だった前走を勝利している以上、警戒はしなければならない。
【能力値5位 エコロアルバ】
サウジアラビアRCの勝ち馬。その前走では6番枠から出遅れ、二の脚で置かれて最後方からの追走。道中はペースが上がらないなか、単独最後方で進めて3角に入る。
3角で前のスペースを潰しながら仕掛け、4角出口では中目へ。直線序盤では外に誘導しながら追われたが、反応がひと息で外に出し切れずまだ最後方。しかし、ラスト2Fでグンと伸びて中団まで上がり、ラスト1Fでまとめて前を捉え突き抜ける。終わってみれば1馬身3/4差の完勝だった。
当時はコンクリートレベルの高速馬場で、前後半4F47秒6-46秒2のスローペース。逃げたマーゴットブローが8番人気で4着と善戦しているように前有利の展開だった。そのなかで最後方からレースを進め、ラスト1Fでも2馬身ほど差があった先頭をしっかり捉え、1馬身3/4差で勝利したことは高評価できる。
エンジンの掛かりの遅さは不安材料だが、エンジンが掛かってからは強い。3着に下したゾロアストロが後の東京スポーツ杯2歳Sで2着と好走している点も好材料だ。
今年の東京スポーツ杯2歳Sが新潟2歳Sやデイリー杯2歳Sと比べて決着指数が低いことや、サウジアラビアRCも指数面で前記2レースに見劣る点は考慮しなければならないが、レースが流れて展開の後押しがあれば、もっと指数を伸ばす可能性はある。休養中の成長次第では通用するだろう。
穴馬候補はタガノアラリアとコルテオソレイユ
いつも穴候補は1頭のみだが、今回は序文で触れたように能力値7位以内とそれ以下に大きな溝があるので、能力値6位タガノアラリアと同7位コルテオソレイユの2頭について触れることにする。穴馬はこの2頭だ。
【能力値6位 タガノアラリア】
短距離路線を歩んできた馬ながら出遅れ癖があり、なかなか2勝目が挙げられなかったが、2度目の芝1400m戦となった前走の1勝クラス・秋明菊賞では五分に近いスタートを切って先行。2勝目を挙げた。
その前走も1番枠からやや出遅れたが、押し進めて2列目の最内を確保。道中では逃げ馬とのスペースを維持して進め、3角手前でファニーバニーがハナを取り切ったことで位置が下がるも、3列目の最内で3角に入る。
3~4角では最内から前のスペースを詰め、4角出口では2列目。直線序盤で前2頭の間を狙ったが、狭くなって結局インを突く形でクビ差ほど前に出る。ラスト1Fではそのまま抜け出して3馬身差で完勝した。
当時はCコース替わりの超高速馬場で、前後半3F35秒0-34秒0のスローペース。前へ行った4頭が上位を独占しているように、前有利の展開に恵まれる形での勝利だった。
しかし、馬場の内側が荒れている状況下で終始最内を通したことや、後方から追走した2走前から一転して先行策で指数を上昇させた辺りに、この距離でも対応できるスタミナを感じさせる。食い込みに期待だ。
【能力値7位 コルテオソレイユ】
福島芝1200mでデビューした馬だが、距離を延ばして上昇。当初は鞍上がブレーキをかけるとそのままズルズル後退してしまい、距離を1500m以上に延ばすと行きたがって掛かる面を見せ、なかなか結果を出すことができなかった。
それでも、折り合いに専念した前走のベゴニア賞(1勝クラス・東京芝1600m)では一変。3番枠からやや出遅れて挟まれ、後方からの追走。道中は後方馬群の中目で折り合いをつけて、包まれた状態を維持しながら3角に入る。
3~4角では前のスペースを維持しながら、最内から外に誘導して直線へ。しかし、序盤でも外に出し切れずに中目を捌く形を選択。ラスト2Fで中目からしぶとく伸びて2番手に上がり、ラスト1Fで1馬身半差ほど前にいたドリームコアに迫ったが、アタマ差届かずの2着までという結果だった。
当時はコンクリートレベルの高速馬場で、前後半4F47秒1-46秒0のスローペース。前有利の展開で先に抜け出したドリームコアを捉え切れなかったが、上がり最速で3着馬に2馬身半差をつけているように、長くいい脚を使っていた。
前走はT.マーカンド騎手に乗り替わり、何とか折り合いをつけたことが好結果に繋がった。今回も強引に折り合いをつけてくるところがある川田将雅騎手が鞍上。同騎手は直近5年の阪神芝1600m戦で50%を超える複勝率を誇り、先週の阪神JFでもギャラボーグを2着に導いた。
先週は内枠もあいまって過剰人気となり穴馬には推せなかったが、本馬が単勝オッズ10倍を切ることはあるまい。それでも、スムーズな立ち回りで展開の後押しがあれば通用の余地がある。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)リアライズシリウスの前走指数「-17」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.7秒速い
《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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