【ホープフルS】絶対的主役が不在の混戦 アスクエジンバラ、ノチェセラーダら伏兵に警戒

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翌春を占う2歳GⅠ
2年前レガレイラ、昨年クロワデュノールと間違いなく翌年以降の中距離戦線を担う主役が登場するレース。ホープフルSはその名の通り、未来の希望を照らす。桜花賞における阪神JFと同じく、2歳のうちに本番と同じ舞台を試せる意義は大きい。
たとえばコントレイルは中山のコーナリングでみせたわずかな乱れを福永祐一騎手(当時)と陣営が感じとり、それを約4カ月かけて修正してきた。勝ちながら強くなる。超A級になるためにはこの作業が欠かせない。
負けて強くなるのも成功だが、本当の理想は勝って逞しくなっていくこと。クラシックは勝ち抜き戦。その戦いが本格的になっていくのもホープフルSだ。
ここではGⅠに昇格した過去8年分のデータを使用して、今年のホープフルSを展望する。

人気別成績では、1番人気【6-0-0-2】勝率、複勝率75.0%と頭ひとつ抜けている。8回中6勝が1番人気であり、このレースで主役に選ばれた時点で、世代最上位といってもいい。残る2勝は2番人気【1-2-1-4】勝率12.5%、複勝率50.0%と10番人気以下【1-0-2-50】勝率1.9%、複勝率5.7%。一度だけ波乱があったものの、基本は上位人気堅調だ。
4番人気【0-2-1-5】複勝率37.5%と5番人気【0-0-0-8】の間に境目があり、複穴もそう頻繁には出現しない。とはいえ、2年前はサンライズジパングが13番人気3着、昨年は17番人気ファウストラーゼンが3着に入り、波乱を演出した。最近は複穴が出ているので、慎重に検討していきたい。

キャリアの傾向をみると、2戦が【5-5-3-38】勝率9.8%、複勝率25.5%と分母も大きいが、好走数も目立つ。2歳GⅠではこのキャリア2戦は理想の数字。新馬、重賞ないしオープン連勝は素質馬の証明でもある。効率よくGⅠにたどり着く馬は当然チェックしなければいけない。
一方で4戦も【2-0-2-12】勝率12.5%、複勝率25.0%もツボ。22年14番人気1着ドゥラエレーデやサンライズジパングがキャリア4戦だった。穴パターンなので、覚えておきたい。
アンドゥーリル、バドリナートも互角
今年のメンバーではジャスティンビスタ、ショウナンガルフが2戦2勝の重賞ウイナー。実績上位はこの2頭だろう。続くのはアイビーSを勝ったアンドゥーリル、萩S1着バドリナートのオープン特別組。1勝馬も抽選なしで出走できる構成であり、例年より混戦が予想される。

前走クラス別では前走重賞【5-4-1-25】勝率14.3%、複勝率28.6%、オープン・L【3-2-3-15】勝率13.0%、複勝率34.8%が中心。2歳同士とはいえ、GⅠとなれば、それなりの経験も問われる。
前走東京スポーツ杯2歳Sは【4-0-1-11】勝率25.0%、複勝率31.3%と有力ローテだが、1着【3-0-1-1】、2着以下【1-0-0-10】と好走が条件。今年は7着ダノンヒストリーのみ。母コーステッドなので、ダノンベルーガ、ボンドガールの下にあたる。6月東京の新馬を勝った好素材であり、評価は落とせないものの、データ上はやや厳しい。
前走京都2歳Sは【1-3-0-9】勝率7.7%、複勝率30.8%と東スポ杯ほどインパクトはない。こちらも1着【0-1-0-1】、2着【1-2-0-1】。狙うならジャスティンビスタとアスクエジンバラ。とりわけ2着アスクエジンバラに注目したい。
小倉芝1800mで勝ち上がり、札幌へ飛び、コスモス賞を勝利。その後、マイルのサウジアラビアRC凡走後に京都2歳Sで一変した。明らかに中距離型の戦歴だ。京都2歳Sは前後半1000m1:00.0-1:00.4と2歳戦としては厳し目の平均ペースで進み、上がりがかかる競馬になった。中山芝2000mにつながりそうだ。
ショウナンガルフ、ジーネキングの札幌2歳Sは【0-0-0-4】。サンプル数は少ないが、好走馬を出していないのは気になる。少し時計がかかる中距離戦という条件は合っているが、レース間隔があきすぎているのか、つながらない。

前走オープン・LではアイビーS【1-1-1-3】勝率16.7%、複勝率50.0%、萩S【2-1-0-3】勝率33.3%、複勝率50.0%が中心。アンドゥーリルは中京記念を勝ったアンドラステの産駒で、1600m、1800mと距離を延ばしながら連勝した。前走はラスト600m11.8-11.5-11.2の加速ラップを2番手から押し切った。小回りコースへの対応は未知ながら、前に行ける点は魅力だ。
バドリナートはコントレイル産駒。萩Sはスローペースを好位から上がり3F34.3でまとめた。稍重馬場だったことを考えると、記録は悪くない。母の父ガリレオから持続力を受け継いでいる可能性がある。コントレイル産駒は総じて軽くないタイプが多く、持続力が強化されているとみるなら、中山も悪くない。

前走1勝クラスは【0-2-2-27】複勝率12.9%。さほど強調できないローテ―ションだが、前走で2000mを経験していれば、【0-2-2-19】複勝率17.4%と少し確率があがる。さらに前走1着なら【0-2-2-10】複勝率28.6%。黄菊賞を勝ったノチェセラーダの食い込みもありそうだ。母の母はドイツの名牝ナイトマジックなので、ゾロアストロ(東京スポーツ杯2歳S2着)と同じ一族でもある。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。
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