【朝日杯FS】のちの“絶対女王”をねじ伏せたアドマイヤマーズ 若き才能が交錯した2018年をプレイバック(訂正)

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未来の名馬2頭が邂逅
今週は朝日杯フューチュリティステークスが開催される。過去にはナリタブライアンやグラスワンダーが制したレース(改称前)。今回はそんな中から2018年の一戦をピックアップして当時のレースを振り返っていく。
2018年は、大注目の牝馬が参戦。2戦2勝のグランアレグリアである。新馬戦では素質馬ダノンファンタジーに2馬身差をつけて勝利すると、続くサウジアラビアRCでも2着ドゴールに3馬身半差をつけ、連勝を飾った。
一方、迎え撃つ牡馬の筆頭は無傷3連勝中のアドマイヤマーズ。こちらも新馬戦ではケイデンスコールを下し、デイリー杯2歳Sでもメイショウショウブやハッピーアワーなど、後に世代重賞で活躍する馬たちを撃破してきた。
さらに、京王杯2歳S・小倉2歳Sの勝ち馬ファンタジスト、アドマイヤマーズに敗北後は連勝で新潟2歳Sを制したケイデンスコールなども参戦。そんな中、単勝オッズではグランアレグリアが1.5倍、アドマイヤマーズが4.6倍と2頭が他馬を引き離していた。
直線序盤から始まる激しい追い比べ
ゲートが開くと、2枠2番のグランアレグリアが好スタートを切り、その外、4枠6番のアドマイヤマーズもやや促されつつ加速。ささらに外からイッツクールがハナを主張するなか、2番手、3番手に収まった。
隊列がすんなり決まると、前半3Fは35.3と緩やかなペースに。後方では折り合いのつかない馬も出るなか、人気の2頭はじっとタイミングをうかがっていた。
後方から捲ろうとする馬も現れたが、大勢に変化はなし。結局、2番手のグランアレグリアが、その後ろのアドマイヤマーズに2馬身ほどの差をつけたまま4角へと差し掛かる。
残り600mの標識を前に、鞍上M.デムーロ騎手の手が動き、アドマイヤマーズが進出を開始。グランアレグリアに並びかける形で直線を迎えた。
直線序盤では、2頭が馬体を接するほどの距離で併走し、激しい追い比べを演じる。前で苦しくなったイッツクールを交わす場面では、内外から牡馬2頭に挟まれる形となったグランアレグリアだったが、それを跳ねのけるように再び加速した。
しかし、外を走るアドマイヤマーズの脚色はそれ以上に良い。しばらくは粘ったグランアレグリアだったが、徐々に差がつき始める。最後はアドマイヤマーズが2馬身差をつける快勝となった。グランアレグリアは、さらに外から脚を伸ばしてきたクリノガウディーに交わされ、3着となった。
馬券配当は、馬連が97.1倍、枠連が100.6倍。今となって考えると、アドマイヤマーズとクリノガウディーの組み合わせでこの配当はあまりにも強烈だが、それでも単勝1.5倍だったグランアレグリアが3着に敗れたと考えれば、ある程度は納得がいく。
デイリー杯2歳S覇者アドマイヤクワッズ、アドマイヤマーズ産駒カクウチらが参戦
2018年の朝日杯FSは近年屈指の素質馬が揃った一戦であったことは、その後すぐに証明される。アドマイヤマーズは翌春にNHKマイルCを制すると、同年冬には香港マイルも勝利。引退後は種牡馬として、初年度産駒から二冠牝馬エンブロイダリーを輩出した。
グランアレグリアは翌年に桜花賞を制すると、4歳シーズンには安田記念、スプリンターズS、マイルCSと3連勝。5歳になってもヴィクトリアマイル、マイルCSを制覇し、2年連続でJRA最優秀短距離馬に選ばれた。まさに歴史に名を残す名牝である。
そのほかにも、ケイデンスコールやクリノガウディーなどが古馬戦線で活躍する存在へと成長。語り継がれる一戦となったと言えよう。
今年は同じくデイリー杯2歳Sの覇者で、「アドマイヤ」の冠を持つアドマイヤクワッズが参戦する。前走のデイリー杯2歳Sでは2歳コースレコードをマークする鮮烈な勝ちっぷりを見せており、ここでも人気の中心を担いそうだ。
さらには、アドマイヤマーズ産駒のカクウチのほか、牝馬のコスモレッドなどが登録。戦前の評価は混戦模様とされるが、果たして第二のアドマイヤマーズ、グランアレグリアは出てくるのだろうか──。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、セイウンワンダー、ドウデュース。
※アイキャッチ画像内において、グランアレグリアの性齢を「牡2」と記載しておりましたが、正しくは「牝2」です。お詫びして訂正いたします。
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