【チャンピオンズC】“ダート2戦目で前進期待”シックスペンスが本命候補 テンカジョウの一発も警戒

山崎エリカ

2025年チャンピオンズカップのPP指数,ⒸSPAIA

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今年はハイペースの可能性

ジャパンカップダートから『チャンピオンズC』と名称を改め、中京ダ1800mで行われるようになって今年で12年目。初年度の2014年は前後半4F50秒4-48秒7の極端なスロー。続く15年は同48秒0-50秒2と一転してハイペースだった。以降は良馬場で前半4F48秒台後半~49秒台後半の、ややスローから平均ペースで決着していたが、ここ2年はレモンポップの逃げでややハイペースとなっている。

スタンド前の上り坂の途中からスタートすることや、初角までの距離が約300mと短いことから序盤のペースは上がりにくいが、逃げ・先行馬多数で2角を過ぎても競り合いが続くと一転してハイペースになる。

今年はウィリアムバローズ、ダブルハートボンド、ナルカミと逃げ馬が揃っているだけに、ハイペースとなる可能性が高い。

能力値1~5位の紹介

2025年チャンピオンズカップのPP指数一覧,ⒸSPAIA


【能力値1位 ナルカミ】
前走のジャパンダートクラシックでは、ダート二冠馬ナチュラルライズを2着に下して勝利。一気に3歳の頂点に君臨した。古馬勢が近走振るわないこともあり、ここでも能力値1位となる。

その前走は5番枠からまずまずのスタートを切り、しっかり出してハナを主張。そのまま淡々と逃げ、向正面でも息をあまり入れずに激流へと誘う。

3~4角でややペースを落とすと、ナチュラルライズが直後2番手まで上がってきたが、3番手以下は離される形。後ろとは1馬身差で直線へ入ると、序盤では唯一食らいつくナチュラルライズを離して2馬身半差。ラスト1Fでさらに差を広げて3馬身差で完勝した。

同舞台の帝王賞も今年は前半5F60秒7とハイペースだったが、ここはそれ以上に速い前半5F60秒2とかなりのハイペース。緩みない流れに持ち込み、ラスト2Fで再加速してナチュラルライズを離し、3着ルクソールカフェ以下を12馬身も離した内容は圧巻だった。

しかし、このときはナチュラルライズもルクソールカフェも本来の能力を引き出せていなかったのも確か。ナチュラルライズは東京ダービーを大目標にした後の始動戦で、とにかく暴走させないようにという慎重なレースぶり。2分03秒7の時計勝負になったことで折り合いはついたが、15番枠発走から好位の外と、ナルカミに対してかなりロスを作ったことが最後の甘さに繋がっている。

またルクソールカフェは海外帰りかつ5ヵ月の休養明けで太目残り。前半で追走に苦労しながらもナチュラルライズをマークして乗り、ロスの大きい競馬だった。3~4角の外から勝負に出たことで最後に甘くなった面もあり、そもそも距離も長かった。

そのため、現3歳世代はナチュラルライズ→ルクソールカフェの順で強いという評価はジャパンダートクラシックが行われる前から変わらない。

ナルカミは時計の掛かる馬場のダート2000mはベスト条件であり、さらに今回は前走が消耗度の高いレースになったことでその疲れが懸念される。実際に本馬は京都ダート1800mの新馬戦で逃げて大差勝ちした次走の3歳1勝クラス(中京ダ1800m)では、その影響かパドックでパニックとなり、レースでの出脚も遅く、掛かりながら前に競りかけていく形で苦しくなって7着に敗れている。

また今回は12番枠。もともとテンが速くはないので、内枠からハナを主張していくウィリアムバローズや二の脚の速いダブルハートボンドがいるとなると逃げられる可能性は薄い。

上手く2列目に控えられれば良いが、それらに競っていった場合にはかなりペースが上がりそうだ。仮にハナへ行けたとしても、競られる形になるだろう。ここへ来ての上昇力は魅力的だが、今回は評価を下げたい。

【能力値2位 シックスペンス】
今年の中山記念を勝利するなど、芝1800mの重賞で3勝の実績を持つが、GⅠでは頭打ちとなったこともありダート路線に転向。初めてのダート戦となった前走のマイルCS南部杯では2着と健闘した。

その前走は14番枠から五分のスタートを切り、しっかり出して中団の外。そこから軽く促して好位の外に進出。道中でもじわじわ押し上げ、先頭列に近い2列目付近で3角に入る。

3角では3頭分外、4角では2頭分外から食らいついて3番手で直線へ。序盤で前2頭を捉え、ラスト1Fで抜け出しかけたが、外から一気にウィルソンテソーロに突き抜けられて4馬身差の2着だった(着差は0秒6差で、映像では3馬身程度の差に見える)。

当時の盛岡は高速馬場で前後半4F46秒4-47秒9のややハイペース。差し有利の展開だったが、3~4角で一番外を回るロスを作りながらも最後までしぶとかった。

外枠を利して砂を被らない競馬だったものの、マイル路線の強豪ペプチドナイルやサンライズジパングを下しており、ダート路線にはっきり目途を立てる内容だった。今回も11番枠で最悪の場合には砂の被らない外に出せる枠。ダート2戦目の慣れに期待し、本命に推す。

【能力値3位 ダブルハートボンド】
前走のみやこSで初重賞制覇を達成。その前走は12番枠からまずまずのスタートを切り、押すとすっと加速してハナへ。最終的には内からハナを主張したレヴォントゥレットを行かせてその外2番手を追走。道中はコントロールしていたが、かなり競っていく形となり、ほぼ併走状態で3角に入る。

3角では持ったままクビ差ほど前に出て、4角で仕掛けて2馬身ほどのリードで直線へ。序盤でしぶとく伸びて2番手に上がったサイモンザナドゥに2馬身差。ラスト1Fでしぶとく食らいつく同馬の追撃をクビ差で振り切った。

当時は不良馬場でレコード決着となったように、超高速馬場で前後半47秒0-48秒2のハイペース。芝並みのタイムでまるで米国競馬を見ているようだった。

つまり、シンプルに追走力があって、いかにコーナーでロスなく進められたかの比重が大きいレースだったということ。実際、7番人気で2着に大健闘したサイモンザナドゥは終始最内から位置を押し上げていた。

ちなみに、みやこSで上記流れに逆らうレースをしたのは、アウトレンジやペリエールである。特にアウトレンジは終始中団の外々からの追走でロスの大きい競馬になっており、3~4角で促しても前との差が詰まらない苦しいレースをしていた。

また、ダブルハートボンドは高速馬場で行われた三宮Sでも激流の2番手を追走してクビ差で勝利しているように、高速馬場のハイペースがベスト。現にタフな馬場の門別で逃げて消耗戦に持ち込んだ2走前のブリーダーズGCでは、最後の直線で苦しくなって伏兵のライオットガールに差されており、速い馬場でこそのタイプに映る。

その2走前は1番枠で内に閉じ込められないように逃げを選択するしかなく、結果的にオーサムリザルトにプレッシャーをかけられ、ペースを落とし切れなかったところはあった。だが、今回も手強い同型馬が出走している。

おそらく内のウィリアムバローズを行かせて同馬の外を狙う形になりそうだが、今回はナルカミも出走しているだけに、前が楽な競馬にはならいだろう。みやこS組なら上述のアウトレンジが先着する可能性が高いと見ている。

【能力値4位 ウィルソンテソーロ】
昨秋のJBCクラシックでは二歩目で躓いてしまい、中団外からポジションを押し上げていく形ながら4馬身差で圧勝し、今回の出走馬でNo.1の指数を記録した。チャンピオンズCでも一昨年、昨年と2着の実績があるが、昨年暮れの東京大賞典2着以降はややスランプに。しかし、立て直された2走前のマイルCS南部杯で変わり身を見せ、復活を果たした。

その2走前は11番枠から五分のスタートを切り、押して好位直後の中目付近からの追走。道中ではコントロールして好位馬群の中で脚を温存した。

3角でシックスペンスが勝ちに動いて先頭列が横に広がると、2列目に上がって、4角出口で外に誘導。直線序盤ですっと伸びて先頭列に並びかけ、ラスト1Fでそのまま抜け出して4馬身差で圧勝した。

映像では3馬身程度の差には見えはするものの、それでも4角出口で外に誘導してからの手応えは他馬と一線を画すもの。上がり3Fタイムも2位のシックスペンスを0秒8差も上回っており、それほど勢いがあった。加えて、ここでも昨秋のJBCクラシック時と同等の高い指数を記録していた。

前走のJBCクラシックは5着に敗れているが、当時は休養明け好走後の疲れ残りの一戦。2走前にダート1600mを使っていたこともあり、前進気勢が強く、やや掛かりながら好位の最内を追走。船橋のタフな馬場で前後半4F48秒2-51秒4のかなりのハイペースとなったために、苦しくなってしまった。

2023年の東京大賞典では前半5F63秒8のかなりのスローで逃げて2着の実績があるように、前に行ってもそれなりにやれてはいるが、高指数を記録している時は前半で脚を温存する形である。今回は逃げ馬多数で、前半ペースが速くなりそうなので、直近2年のチャンピオンズCのように中団からの追走になるだろう。それならば展開の後押しがあると見て対抗に推す。

【能力値5位 メイショウハリオ】
2022、23年の帝王賞を連覇した馬。23年の帝王賞では4番枠から五分のスタートを切り、軽く促して中団中目からの追走。道中はやや速い流れだったが、団子状態となり、上手く中団外目に誘導しながら3角に入った。

3~4角で中団外から仕掛けて位置を押し上げ、3列目で直線へ。序盤でじわじわ伸びて2列目まで上がり、ラスト1Fでも伸び続けてクラウンプライドをハナ差で捉えて勝利した。

当時は前後半5F60秒4-後半4F61秒5のハイペース。ここでは差し有利の展開の後押しもあって自己最高指数を記録した。

その後、順調さを欠いて休み休みの出走となったが、今年の川崎記念では中団やや後方から向正面で捲りに動いたディクテオンを追いかける形で勝利。前走のJBCクラシックでも3着サントノーレに5馬身差を着けて2着と善戦しており、大きな衰えは感じさせない。

しかし、前走は展開に恵まれてもいた。2番枠からまずまずのスタートを切り、無理をさせずに控えて中団から後方に下げて追走。その後、道中で外目に誘導しながら中団まで押し上げて3角に入るなど、ペースが上がりそうなタイミングで上手く後方に下げていた。

本馬はゲートは良いが二の脚が遅く、今回は後方からの追走となりそうで、前走同様に展開に恵まれる可能性は高い。しかし、休養明けの前走で展開に恵まれたことで能力を出し切っているだけに、今回はその疲れが懸念される。アウトレンジなど休養明けを叩いて前進が見込める差し馬が出走しているとなると、評価は下がる。

穴馬は“現役最強牝馬”テンカジョウ

テンカジョウは今春の兵庫女王盃で出遅れを徐々に挽回して行く形で重賞2賞目を達成。続くエンプレス杯では、ブリーダーズGCでダブルハートボンドを脅かしたオーサムリザルトや、JBCクラシックを連覇するアンモシエラを下して勝利した。

エンプレス杯では大外11番枠から五分のスタートを切り、無理なく中団の外を追走。道中は逃げ馬からやや離れた好位勢を見ながら進めた。

2周目の向正面で外から早めに動いて、3角手前では2番手で仕掛けを待つ形。4角で追われると直線でしぶとく粘るアンモシエラをかわし、オーサムリザルトの追撃を振り切ってアタマ差で勝利した。

このときは前後半5F62秒2-66秒3のかなりのハイペース。後方有利の展開に恵まれてはいるが、2周目の向正面で内に入れて本馬の後ろを狙ったオーサムリザルトに差されなかったのはスタミナがあればこそ。

本馬は出遅れ癖があり、道中で早めに動いて押し切るタイプ。3走前のスパーキングレディーCでは距離が短いと見て無印にしていたが、後方からじわっと進出していく形で3着を死守している。

2走前のレディスプレリュードはゲートを出ずにおおよそ5馬身の大出遅れ。前後半4F49秒9-50秒9とハイペースで流れたなか、じわじわ位置を挽回して3角では好位馬群の後ろ。通常このパターンは直線で手応えを失うはずだが、3~4角では内目を通しているものの、直線序盤でしぶとく伸びて一度は先頭に立ってのクビ差2着。インパクトがある内容だった。

前走のJBCレディスクラシックも2走前ほどではなかったが出遅れ。ブリンカー着用で一変したアンモシエラが船橋のタフな馬場を前後半4F48秒7-52秒3の激流で引っ張るなか、促してじわじわ位置を押し上げたために最後に甘さを見せてしまい2着。馬場が軽ければもっと際どいレースになっていたと推測される。

たしかに同世代の牝馬ダブルハートボンドは高速馬場のスピード勝負ならとても強い。しかし、本馬は出遅れ癖がありながらもこれまで12戦して全て3着以内と崩れない底力がある。また、幅広いレースに対応できていることからも、個人的には現役最強牝馬という評価である。

出遅れ癖はつきまとうが、2走前のような大出遅れをやらない限り、今回も善戦する可能性が高い。差し展開に恵まれての一発に期待する。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ナルカミの前走指数「-35」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.5秒速い

《ライタープロフィール》
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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