【マイルCS】デュランダルが異次元の末脚でライバルを撫で斬る　2003年をプレイバック

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本命不在で大混戦　短距離王者デュランダルは5番人気

今週はマイルチャンピオンシップが開催される。過去にはサッカーボーイやタイキシャトル、グランアレグリアらが制したレース。今回はそんな中から2003年の一戦をピックアップして当時のレースを振り返っていく。

2003年のマイルCSは王者不在の混戦模様だった。春のマイル王決定戦・安田記念を制したアグネスデジタルは、前年と同じく秋は天皇賞（秋）に参戦したため、マイルCSは出走せず。

安田記念2着のアドマイヤマックスは、スプリンターズS3着後は香港マイルに直行予定で、マイルCSはスキップしていた。

そんな中で1番人気は近4走で3勝2着1回のサイドワインダー。2番人気は4歳牝馬のファインモーション。03年はまだ勝利がなかったが、ファンGⅠ2勝の力を支持した。

続いて重賞3勝のミレニアムバイオが3番人気、前走の毎日王冠をレコード勝利のバランスオブゲームが4番人気だった。

5番人気はデュランダル。前走でスプリンターズSを制し、GⅠ馬の仲間入りを果たした。これまで挙げた6勝のうち4勝が1200m戦、前年のマイルCS10着、春の中山記念9着だったことで、距離に不安を感じるファンが多かったのだろう。人気は5番人気止まりだった。

また海外からはトゥスール、スペシャルカルドゥーンが参戦。2頭の取捨も含め、混戦模様の一戦は曇り空のなか、幕を開けようとしていた。

まさに異次元　デュランダルの豪脚が炸裂

レース前にミレニアムバイオが四位騎手を振り落とすシーンはあったが、最終的には落ち着きゲートイン。様々なバックボーンを持つ各馬が揃ったスタートを見せた。

大外枠から武豊騎手とファインモーションが行く素振りを見せるが、内枠のギャラントアローがハナを主張。武豊騎手はその様子をチラッと確認すると、スッと手綱を抑え、控える競馬を選択する。

ギャラントアローに続くのは、ペリエ騎手のマグナーテン、武幸四郎騎手のウインクリューガー。ポジション争いはそれほど激しくならず、各馬が思い思いのポジションに収まった。

縦長の最後方には薔薇一族のロサード。その少し前を進むのがデュランダル。前走のスプリンターズSで見せた豪脚が今回も発揮されるのか。ファンの注目が集まる。

オースミコスモ、エイシンチャンプ、バランスオブゲームらは好位を進む。先団のギャラントアローたちが後続を引き離す。マイル戦とはいえ、息つく間もなくレースが流れていく。

3、4コーナーに差し掛かっても、先頭を走るギャラントアローの脚色が鈍らない。それどころか、後続との差は開いていく。

いつ仕掛けるか。各馬の鞍上の思惑が激突する。そんな中で最初に仕掛けたのは、勝浦騎手とテレグノシス。外から力強くまくる。しかしそれでも先頭に届くほどではない。

先頭の逃げ馬ギャラントアローは、ファルコンS、スワンSを逃げ切った実績を持つ。今回も逃げ切るのか。直線入口ではそう思わせるリードを保っていた。

直線に入ると後方に位置していたデュランダルは、一番外に持ち出す。コーナリングでのロスもあり、さすがに届くのか。というほど先頭とは差があった。

直線、ギャラントアローと幸騎手が脅威の粘り腰を見せる。2番手マグナーテンも懸命に前を追いかけるが、脚色はギャラントアローが勝っている。

ファインモーションやバランスオブゲームらが馬場の真ん中から末脚を伸ばす。前を捉えきれるのか？そう思ったとき、大外から一頭、別次元の末脚を使う馬が現れた。池添騎手とデュランダルだ。

観衆が驚くのも無理はない。決して届かないような位置から、周りがスローモーションに見えるほどの末脚で追い込んでくるデュランダルの姿に、熱狂的な声援を送るファンもいれば、呆気に取られたように見守るファンもいる。

デュランダルが大外からまとめて差し切り1着でゴールイン。最後は流すほどの余裕があり、観衆の度肝を抜いた。その末脚はまさに馬名の由来となった“聖剣”のごとき切れ味だった。

前走スプリンターズS勝ち馬が連勝でマイル王に輝いた。上がり3F33.5はぶっちぎりのトップ。上がり2位のファインモーションが34.1だったことから、その切れ味がよく分かる。2着はファインモーション、3着は逃げたギャラントアローが入った。

単勝8.1倍は、後々になって考えてみると随分とついた印象を受ける。「デュランダル」と「ファインモーション」。現在のファンも知るような2頭の馬連は、32.4倍。当時はライバルたちとも拮抗した評価だった。

スプリンターズSからカンチェンジュンガ、トウシンマカオが参戦

デュランダルは翌年もマイルCSを制覇。短距離〜マイル界を盛り上げ続け、2年連続でJRA賞最優秀短距離馬にも選出された。そしてあの末脚は今でも語り草となっている。

デュランダルは種牡馬としてオークス馬エリンコートを輩出。短距離馬から東京のクラシックディスタンスを勝つ馬が現れるとは、遺伝の神秘である。また中京記念を連覇したフラガラッハなど、末脚自慢の産駒も多かった。

今年は前走スプリンターズSから、カンチェンジュンガとトウシンマカオが参戦。カンチェンジュンガはメンバーでもトップクラスの末脚を持ち、展開が向けば一気の差し切りも期待したくなる。

今回は安田記念1着ジャンタルマンタル、2着ガイアフォース、3着ソウルラッシュをはじめ、アスコリピチェーノなどマイル実績馬が多く参戦する。スプリント路線組は意地を見せられるか。レース当日を楽しみに待ちたい。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ソウルラッシュ。

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