【エリザベス女王杯】京都開催は“サドラーを持つ若い馬” エリカエクスプレス、リンクスティップの3歳2頭に熱視線

坂上明大

エリザベス女王杯の傾向と注目血統馬,ⒸSPAIA

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傾向解説

一昨年から舞台を京都芝2200mに戻したエリザベス女王杯。阪神芝2200mからは内回りから外回りに変わるため、当然全体のペースも大きく変わってきます。本記事では京都芝2200mと阪神芝2200mの違いも含め、エリザベス女王杯のレース傾向を整理していきます。

まず紹介したいデータは年齢別の成績。データの通り、京都開催時の好走馬のほとんどは3~4歳馬です。当然これには、牝馬の多くが繁殖にあがるため高齢での出走が少ないことも多分に関係していますが、直線の長いコースの芝中距離戦は日本の主流条件のため、層が厚く世代交代が早い傾向にあります。

これは天皇賞(秋)やジャパンカップでも同様の傾向にあるため、阪神開催時以上に年齢には注目する必要があるでしょう。


年齢別成績,ⒸSPAIA


<年齢別成績>
・3歳【2-0-3-12/17】
勝率11.8%/連対率11.8%/複勝率29.4%/単回収率59%/複回収率54%

・4歳【4-5-3-34/46】
勝率8.7%/連対率19.6%/複勝率26.1%/単回収率68%/複回収率99%

・5歳以上【1-2-1-51/55】
勝率1.8%/連対率5.5%/複勝率7.3%/単回収率17%/複回収率26%
※過去10年、京都開催のみ

また、京都芝2200mと阪神芝2200mではペースの差も大きく、過去10年で京都開催だった2015~19、24年の7年間の前後半1000m平均は61.3-59.4の後傾1.9秒。それに対して、阪神開催だった2020年以降の3年間は同59.5-60.1の前傾0.6秒のハイペース競馬が繰り広げられました。

そのため、京都芝2200mではスローペースからの末脚勝負、阪神芝2200mではハイペースでの消耗戦が基本であり、これは馬体重にも大きな影響を与えています。

データの通り、京都開催時は追走スピードが求められにくいため軽量馬の活躍が目立ち、逆に阪神開催時に馬体重510kg以上の馬が2勝していることもこの傾向の裏付けとなりそうです。


馬体重別成績,ⒸSPAIA


<馬体重別成績>
・479kg以下【5-7-4-68/84】
勝率6.0%/連対率14.3%/複勝率19.0%/単回収率42%/複回収率69%

・480kg以上【2-0-3-29/34】
勝率5.9%/連対率5.9%/複勝率14.7%/単回収率43%/複回収率34%
※過去10年、京都開催のみ

血統面ではSadler's Wellsに注目。京都芝2200mは直線距離の長いコースの芝中距離戦のため、ディープインパクトなどのサンデーサイレンス系やキングカメハメハなどのKingmambo系が強いことは間違いありません。

ただ、ダービーやオークスなどと比べるとより成長力が求められ、さらにペースも緩みやすいため、2000m以下のような基礎スピードも求められません。

そうなると、北米血脈でスピードを強化したタイプよりも欧州血統で成長力と底力を強化した馬の方が合い、2018~19年は2年連続でSadler's Wells内包馬のワンツー決着。4年ぶりの京都開催となった2023年もSadler's Wells系Frankelを母父に持つルージュエヴァイユが5番人気2着と好走しています。


3~4歳馬のSadler's Wells内包馬,ⒸSPAIA


<3~4歳馬のSadler's Wells内包馬>
・該当馬【3-2-1-9/15】
勝率20.0%/連対率33.3%/複勝率40.0%/単回収率168%/複回収率120%
※過去10年、京都開催のみ


注目血統馬

前記の傾向に合う注目血統馬を2頭ピックアップしました。

☆エリカエクスプレス
母エンタイスドはCapri(2017年愛ダービー、英セントレジャー)やパッションⅡ(2020年愛オークス3着)、Tower of London(2024年ドバイゴールドカップ、カラカップ)などが全きょうだいにいるスタミナ豊富な一族です。

また、エピファネイア産駒の本馬はSadler's Wellsの4×3が特徴的で、同配合からはアリストテレスやオーソクレースといった長距離馬が多く出ています。

本馬自身も中長距離向きの配合形で、前走馬体重462kgと大き過ぎない点も魅力。舞台適性については文句なし、今回もリズム良く運べるかがポイントとなるでしょう。

☆リンクスティップ
母ダンスウィズキトゥンは2016、17年WRターフクラシック連覇のDivisideroの全姉で、本馬の半兄には2024年青葉賞3着馬デュアルウィルダーなどがいます。

母はSadler's Wells≒Nureyevの3×5・4を持ち、産駒にもスタミナと底力を継承。キタサンブラック産駒の本馬もBurghclere≒Height of Fashionの4×5などを持つスレンダーな中長距離馬体型で、京都芝2200m適性はメンバー中屈指の一頭です。力のいる馬場も得意なタイプで、連続開催の荒れた馬場も合っています。

エリザベス女王杯の傾向と注目血統馬2頭,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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