【東京スポーツ杯2歳S回顧】パントルナイーフが“32.9”の豪脚で出世レース制す 血統からはタフなレースで真価発揮か

勝木淳

2025年東京スポーツ杯2歳S、レース結果,ⒸSPAIA

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黄金タッグが送るパントルナイーフ

クラシックの登竜門として名を馳せる東京スポーツ杯2歳Sはパントルナイーフが勝ち、重賞初制覇。2着ゾロアストロ、3着ライヒスアドラーで決着した。

例年と同じく、レースは残り800mの勝負。前半1000mをロスなく、体力を温存しながら進め、後半勝負にかける。東京スポーツ杯2歳Sは例年、レースの形がほぼ決まっている。だからこそ、例年の組との比較もつきやすい。

後半800mラップは11.5-11.0-11.2-11.3、45.0。直線に向いて最大出力まで上げて、直線一杯で使い切る。最後まで速い脚を持続できた馬が勝つ。そんな競馬になり、1、2着以外はバラけて入線した。ゴール前の映像はなんとなく現在の序列を映していた。

勝ったパントルナイーフは上がり600m32.9を記録。この数字は優勝馬の記録としては、当レースが重賞となった1996年以降、最速タイ。同タイムは2頭。

1頭は2015年スマートオーディン。のちに毎日杯、京都新聞杯を連勝し、古馬になってから阪急杯と重賞4勝をあげた。もう一頭は2021年イクイノックス。のちに世界ナンバー1の座を射止めた。記録の上ではパントルナイーフの未来は明るい。

もう一点。パントルナイーフは前走未勝利戦からこのレースを制した。これも1996年以降、達成したのは1頭だけ。2010年サダムパテックしかいない。翌年皐月賞でオルフェーヴルの2着に敗れるも、4歳でマイルCSを制した。

東京スポーツ杯2歳Sが出世レースだからだが、出てくる馬がみんなその後、活躍しており、重ね合わせるだけで可能性は広がっていく。


持続力に長けた血統背景

一方、パントルナイーフが新馬で敗れたアートバーゼルは次走アイビーS2着。アンドゥーリルに1馬身及ばなかった。そのアンドゥーリルは新馬で今回9着のチュウワカーネギーに敗れた。

パントルナイーフの力が抜けているのは明白だが、もしかすると、そこまで世代内の力差がない可能性も残る。こういった比較はホープフルSを終えないとはっきりしないかもしれない。これもこの時期特有の楽しみ。仲間内と大いに論戦してほしい。

パントルナイーフの血統は兄にパラレルヴィジョン、近親にもメートルダールがいる。母アールブリュットは中距離を中心に4勝をあげた。平坦に強いイメージがある。その母イグジビットワンはシルバーホーク肌であり、母系にはロベルトの血が入る。

ロベルトにマクフィが入り、そこにキズナ。パントルナイーフには持続力に長けた血が多い。ロベルトの底力も内包しており、もっと厳しいレースになると、さらに力を発揮するのでないか。


距離延長で前進あったゾロアストロ

2着はゾロアストロ。マイルのサウジアラビアRCに比べると、レース振りに進境がみられた。上がり600mはパントルナイーフを上回る32.7。ゴール間際の末脚は際立っていた。父モーリスはマイルGⅠ馬だが、産駒は総じて2000mなど中距離に強い。父は最終的に2000mGⅠを連勝しており、納得できる。

この時期は番組編成上、マイル戦に出走するモーリス産駒が多いが、マイルを経験し、距離を延ばすとさらに走りに磨きがかかる。母の母はドイツの名牝ナイトマジック。まだまだこれから強くなる血統だ。

2番人気ライヒスアドラーは3着。道中はインに控えていたが、残り800mで外から押し上げていく馬たちがいて、そこで順位を下げた。

その分、脚は溜まっていたが、直線では最内に行かざるを得ず、前で粘るラストマイルやテルヒコウに押し込められる形になり、やや消化不良な感がある。外を回ったらどうなっていたかわからないが、スムーズに抜けてくれば、もう少し際どい勝負になっただろう。

1番人気ダノンヒストリーは7着まで。スタートの出遅れがすべてだろう。スローを後方追走ではさすがに苦しい。パドックなどで怪しい挙動はなく、出遅れの原因がつかめない。それだけに一過性ではない可能性もあり、次走以降も取捨に悩む。

2025年東京スポーツ杯2歳S、レース回顧,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 伝説のグランプリホース』(ガイドワークス)に寄稿。

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