【菊花賞】ゲルチュタールの初GⅠ制覇に期待 2年連続連対中の大注目ローテに該当

貴シンジ

菊花賞 主な前走レース別複勝率,ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

今回は10月26日(日)に京都競馬場で行われる菊花賞について、下記3つのファクターを組み合わせるコンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の内容」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった20頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。


重要データ:王道路線が好成績

前走レース別成績,ⒸSPAIA


菊花賞は牡馬クラシック最終戦で、京都の芝3000mという特殊な条件で行われる。今年は皐月賞馬もダービー馬も出走しないとあって圧倒的な存在はおらず、しっかりと分析していく必要がある。

データからの注目ポイントは、前走レースではっきりとした傾向が表れていること。過去10年の菊花賞における前走レース別の勝利数を見ると、前哨戦である神戸新聞杯とセントライト記念が4勝ずつで並んでいる。

まずは神戸新聞杯から見ていこう。成績は【4-3-4-52】単勝回収率22%、複勝回収率は36%となっている。回収率こそ低い数字だが、1~3着馬に限定すれば【4-3-3-15】で単勝回収率485、複勝回収率は104%となる。今年も1着エリキング、2着ショウヘイ、3着ジョバンニと好走馬が揃って出てくるが、やはり注目が必要だ。

続いてはセントライト記念組。こちらの成績は【4-3-2-35】単勝回収率66%、複勝回収率64%となっている。注目すべきは着順と人気で、連対していた馬は【3-1-2-9】単勝回収率141%、複勝回収率104%と優秀。また、1番人気だった馬も【2-0-2-4】単勝回収率151%、複勝回収率116%の好成績だが、今年のセントライト記念で1番人気1着だったミュージアムマイルは天皇賞(秋)に出走予定。こちらは2着ヤマニンブークリエが候補として浮上する。

トライアル組を除いた残り2勝のうち、ひとつがラジオNIKKEI賞【1-0-0-2】。2018年にフィエールマンが勝利を挙げた。今年はエキサイトバイオがラジオNIKKEI賞を制し、そのままぶっつけで菊花賞に参戦する。

そして、残りの1勝が日本海ステークス(3勝クラス)【1-1-0-1】。2023年にドゥレッツァが優勝しただけでなく、昨年もヘデントールが2着と好走している。今年の日本海Sを勝ったゲルチュタールは青葉賞で3着と春の世代限定重賞でも好走していた馬だけに、こちらも注目が必要だ。

上位人気が予想されるエネルジコは青葉賞の勝ち馬で、今回は新潟記念2着からの臨戦となるが、新潟記念組は【0-0-0-4】と過去10年で一頭も馬券に絡むことができていない。

母数は少ないが、過去4頭はすべて新潟記念4着以内からの臨戦と決して力のない馬ではなかった。新潟記念を制し、のちに有馬記念も制するブラストワンピースでも菊花賞は4着だったことを考えると、エネルジコも強くは推せないか。

【好データ該当馬】
・エキサイトバイオ(前走ラジオNIKKEI賞)
・エリキング(前走神戸新聞杯1着)
・ゲルチュタール(前走日本海ステークス)
・ショウヘイ(前走神戸新聞杯2着)
・ジョバンニ(前走神戸新聞杯3着)
・ヤマニンブークリエ(前走セントライト記念2着)


前走の内容:ゲルチュタールの日本海S

日本海Sが行われた日の新潟競馬場は内が全くと言っていいほど伸びない馬場状態で、ほとんどの馬が内側を空けて直線を走っていた。

レースのラップは前半5Fが60.6秒、後半5Fが58.9秒で後傾1.7秒のスローペース。ラップ的には前有利ではあるのだが、ウインオーディンが3~4コーナーの中間から捲るように追い出しを開始したことでロングスパート戦になったため、地力が問われるレースだった。

ゲルチュタールはスタートでやや遅れかけたが、坂井瑠星騎手が上手く促して外目の3番手を確保。我慢が効いており、手前の変換もスムーズで良い走りができていた。

先ほども述べた通りウインオーディンが早めのスパートをかけたため、それに付き合う形でゲルチュタールもスパートを開始。外からウインオーディンとロジシルバーが突っ込んできたが、脚色は衰えることなく1着でゴールした。

菊花賞はロングスパートになることが多く、日本海Sで見せた末脚の持続力は今回も間違いなく武器となる。逃げることもでき、控えることもできる器用なタイプなので、坂井騎手が上手くポジションを取れれば十分勝ち負けになるだろう。


血統解説:ゲルチュタール

ゲルチュタールの血統表,ⒸSPAIA


・ゲルチュタール
日本での牝祖は祖母キラーグレイシス。同馬は競走馬として優秀で、2011年にハリウッドスターレットステークス(GⅠ・AW8.5F)を勝利している。繁殖としても、本馬の叔父にあたる2021年のホープフルS勝ち馬キラーアビリティ(父ディープインパクト)を出した。

本馬の母キラービューティも芝1400m戦で3勝、ダートでも1400mの距離で1勝して準OPまで勝ち上がった。ファミリーを見るとキラーアビリティなどの活躍から芝でという印象が強いが、ダートでも走れるパワーと持続性能がある。

本馬は父にブリックスアンドモルタルを迎えた。その父Giant's Causewayがスピード性能の高さと末脚の持続力をより高めている。

配合としては、完成は遅めのタイプで、2歳~3歳春にかけては幼さの残る身体つき。戦績も伴わなかったが、前走で本格化した印象が強い。青葉賞ではエネルジコに負けているが、今なら逆転できる可能性は十分にある。


Cアナライズではゲルチュタールを推奨

今回のCアナライズではゲルチュタールを推奨する。

上位人気にはなるだろうが、エリキングやエネルジコに比べれば人気はなさそう。ドゥレッツァやヘデントールが人気以上の走りを見せた日本海S組というのは好材料だ。

好走データに該当している馬たちはいずれも注目だが、混戦模様の今年はゲルチュタールが初重賞制覇をGⅠ制覇で達成することに期待したい。

《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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