【アルテミスS】データはマルガよりモンローウォーク 未勝利組ドナルンバも要注目
勝木淳

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マルガ、登場
白毛のソダシがこのレースを制したのは2020年。5年前のことだ。鮮明に記憶しているのは、最後の直線で敢然と先頭を走るソダシの美しさ。
秋の東京競馬場は最後の直線で西日を2コーナー方向から浴びる。その瞬間、夕陽に照らされた白毛が黄金色に輝いてみえた。まるで絵画のような風景に息をのんだ。これほどまでに神々しい競馬ははじめてであり、生涯忘れることはない。
あれから5年が経ち、ソダシの妹マルガがアルテミスステークスを走る。デビュー戦を2歳レコードで制し、満を持してここに駒を進めてきた。ソダシのような美しい走りがみられるのか。レース前から少し過剰な期待を覚えてしまうのは私だけではないだろう。データは過去10年分を使用する。

牝馬の登竜門的レースだけあって、1番人気は【4-2-0-4】勝率40.0%、複勝率60.0%と強い反面、2番人気は【1-5-2-2】勝率10.0%、複勝率80.0%とやや勝ちきれない。だが、2番人気の2着が多いというのは、1番人気4勝とあわせ人気順通りに決まりやすいともいえる。
ワンツーが人気順だったのは2016年、19年、20年、23年と4度もある。1番人気が勝ったときは必ず2着は2番人気だった。裏を返せば、1番人気が勝てないとなると、次なるシナリオは難しい。6番人気や7番人気も各1勝など、伏兵台頭の機会も残っている。

登竜門的位置にありながら、1戦だと【4-4-2-40】勝率8.0%、複勝率20.0%で1戦1勝馬が絶対でもない。2戦が【6-5-6-34】勝率11.8%、複勝率33.3%と上回っており、ソダシもここに該当した。
もともと1戦1勝馬の2戦目というのは難しく、初戦とはまるで違う顔を見せ、結果を残せないケースが目立つ。アルテミスSもそんな事情が影響していると読める。マルガは2戦目でどんな競馬を見せるのか。注目だ。
未勝利戦組ならドナルンバ
マルガのほかにも前走新馬1着というプロフィールの馬が多く、重賞実績馬はタイセイボーグになるが、こちらはキャリア3戦。キャリア3戦以上【0-1-2-26】複勝率10.3%というデータも気になる。

まずはマルガらの前走新馬1着馬について。その距離内訳をみると、1600m【2-4-2-24】勝率6.3%、複勝率25.0%に対して1600m未満からの延長は【0-0-0-9】、1600m超の短縮は【2-0-0-7】勝率、複勝率22.2%で、延長組は明らかに分が悪い。
マルガの該当する距離短縮は22年ラヴェル、そして昨年のブラウンラチェットによる2勝。前者は小倉、後者は中山の芝1800mを勝ち抜き、ここを突破した。
ただし残りは全敗であり、極端なデータなので、これを根拠にマルガを推すのは気が引ける。さらに1800m以上で0秒3以上の着差をつけた馬も【0-0-0-5】。実は中距離カテゴリーで派手な勝ち方をした馬は危ない。
桜花賞まで問われ続けるマイル適性を軸に考えると、中距離である程度接戦を演じたことは、マイル適性の裏返しでもある。後続に0秒5差つけたマルガは、血統も踏まえればマイル適性に疑問はない。
同距離は頭数が多く、やや絞りにくい。中京・中山【0-0-0-13】と、思い切って新潟【1-3-1-10】勝率6.7%、複勝率33.3%を除くと、阪神【1-1-1-1】勝率25.0%、複勝率75.0%が浮上する。
また、新潟マイルで勝ち上がった馬は着差0秒1以上【1-3-1-7】で少し絞れる。フィロステファニはタイム差なし。この場合、【0-0-0-3】。だったら、モンローウォークを上にとりたい。

キャリア2戦以上のうち、前走未勝利1着は【5-4-3-18】勝率16.7%、複勝率40.0%。こちらの距離内訳はもう少しくっきりで、1600m超からの短縮が【4-1-1-4】勝率40.0%、複勝率60.0%を誇る。
今年これに該当するのは新潟芝1800mで未勝利を脱出したドナルンバ。母系はダンスインザムード、ダンシングキイの一族であり、一本筋が通っている。1800mへの距離延長で未勝利を勝っており、再度の短縮はカギになるだろう。
最後に前走重賞について。新潟2歳ステークスは【0-0-0-5】。同じ左回りの直線が長いコースであっても、つながりは薄い点は要注意だ。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『もう一つの引退馬伝説2 関係者が語るあの馬たちのその後』(マイクロマガジン社)に寄稿。
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