【富士S】複勝率50%「前走安田記念組」が中心 ジャンタルマンタル、ソウルラッシュ、ガイアフォースの順位付けがカギ
勝木淳

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安田記念1~3着馬登場
スワンSの施行時期が3週間繰り上げられ、マイルCSを巡る前哨戦の位置関係は大きく変化した。富士Sは2020年にGⅡに格上げされ、その後は22年セリフォス、23年ナミュール、24年ソウルラッシュと本番3連勝中。本番直結の前哨戦という地位を築いた。
スワンSの日程変更によってこの図式に変化が生じるだろうか。舞台は安田記念と同じ東京芝1600mであり、今年も安田記念1、2、3着馬がそろって出走してくる。今度は前哨戦なので、ニュアンスは異なる。そのため各馬の状態には差はあるかもしれないが、この順位が秋になって変わってくるのか。
3歳マジックサンズはNHKマイルC2着馬。はじめてマイル戦を走り、いきなりGⅠで2着と好走した。マイルで素質開花といえるのか。富士Sは試金石になるだろう。
春のトップ戦線の序列やそこに割って入ってくる第三勢力など富士Sで見えてくるものは多く、見逃せないレースだ。ここからはGⅢ時代も含めた過去10年分のデータを使用して今年の富士Sを展望する。

人気別では1番人気【4-2-0-4】勝率40.0%、複勝率60.0%、2番人気【2-0-2-6】勝率20.0%、複勝率40.0%など勝ち馬は5番人気以内が占める。GⅠ級の前哨戦を小細工無用の東京芝1600mで行えば、なかなか人気薄の逆転は叶わない。6番人気【0-0-2-8】複勝率20.0%以下は2、3着に入れるかどうかだ。
一方で上位2~5番人気は互角であり、人気通り順番に決まるとは限らない。オッズが接近した5頭による激戦という図式を逆手にある程度いい配当を獲るという作戦は有効だろう。

次に年齢別でみていく。マジックサンズの3歳は【3-1-3-26】勝率9.1%、複勝率21.2%。勝った3頭は15年ダノンプラチナ、21年ソングライン、22年セリフォス。マイルGⅠ馬か2着馬だった。マジックサンズもこの条件はクリアしている。斤量もGⅠから2キロ減って55キロ。当然有力だ。
古馬勢は4歳【5-4-1-22】勝率15.6%、複勝率31.3%を中心に、5歳【2-3-6-36】勝率4.3%、複勝率23.4%、6歳【0-2-0-25】複勝率7.4%、7歳以上【0-0-0-12】。年齢とともに成績が落ちており、7歳ソウルラッシュ、6歳ガイアフォースの実績は認めつつも、強気になれない雰囲気もある。
安田記念凡走馬も見限れない
ジャンタルマンタルが制した安田記念は序盤600m35.0、800m通過46.7、後半46.0~34.3で1:32.7 。4コーナーで半分より前にいないと勝負圏内に入れない競馬だった。残り600~200m11.2-11.3はさすがGⅠといえる数字だが、絶対的な数字ではない。もちろん、数字では計れない強さは認めつつも、降参するほどでもない。

前走クラス別ではGⅠ(国内)【5-6-3-24】勝率13.2%、複勝率36.8%のうち、安田記念は【3-5-0-8】勝率18.8%、複勝率50.0%。1、2着馬の出走はなく、3~5着【1-2-0-1】、6着以下【2-3-0-7】。好走馬は手堅いが、凡走組の休み明け一変というシナリオも捨てられない。
6着シャンパンカラーは前走の末脚に見どころがあり、11着ジュンブロッサムは昨年の勝ち馬でもある。今年もマイラーズC2着と走っており、無印にはできないか。
前走NHKマイルCは【0-1-1-6】複勝率25.0%。ソングラインはNHKマイルC2着後に関屋記念3着を挟み、ここを勝った。休み明けで古馬GⅡ挑戦は簡単ではなさそうだ。
年齢で強調したマジックサンズは実は臨戦過程が危うい。好走はNHKマイルC1着【0-1-1-2】のみ。2着以下だと【0-0-0-4】。やや悩ましいデータだ。

GⅠ以外の重賞組は前走マイル【4-1-4-37】勝率8.7%、複勝率19.6%。短縮にあたる1600m超が【1-2-3-22】勝率3.6%、複勝率21.4%と比べると、勝ち切る傾向がある。別路線ではなく、マイル路線経由を評価しよう。中京記念5着キープカルム、同7着ウォーターリヒトらが当てはまる。

前走GⅡ、GⅢ組で1600m出走馬の着順内訳は、3着【3-0-1-3】勝率42.9%、複勝率57.1%など好走馬が中心。前走5着以下だと【0-0-1-25】なので、中京記念組の2頭は難しいか。
マイルにこだわって使っている上に、そこである程度結果を残していないと、富士Sは苦しい。冒頭の人気別成績で触れたように、大穴の出現率が低い重賞であり、前走成績が悪い馬は格上のレース以外は浮上しづらい。前哨戦らしく格を意識したい重賞だ。

《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『名馬コレクション 純白の奇跡』(ガイドワークス)に寄稿。
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