【スワンS】3歳タイキシャトルが初芝重賞で古馬圧倒 “伝説の幕開け”1997年をプレイバック
緒方きしん

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GⅠを見据え 各路線の快速馬が集結
今週はスワンSが開催される。過去にはニッポーテイオーやサクラバクシンオーら名馬も制した歴史ある一戦。今回はその中から1997年のレースを取り上げ、当時の戦いを振り返る。
1997年のスワンSは各路線から有力馬が集まる層の厚いメンバー構成になっていた。そのうち、単勝5倍を切ったのは2頭。前年覇者スギノハヤカゼと3歳の新鋭・タイキシャトルである。※馬齢は満年齢表記
スギノハヤカゼは前年にスワンSを制して以降、スプリンターズSで5着、高松宮杯で4着などスプリント路線を中心に活躍。勝ち星からは遠ざかっていたものの、前走のセントウルSでも2着と近況は充実していた。
一方のタイキシャトルはダートを中心にデビュー5戦4勝、2着1回と、ここまで抜群の安定感。前走のユニコーンSでは同世代のダート馬を一蹴し、非凡な素質を見せつけた。ただし唯一の敗戦は芝であり、「芝重賞でも通用するか」が最大の焦点となっていた。
他にも、重賞4勝馬エイシンバーリン、前年スプリンターズS覇者フラワーパーク、連勝中のシンコウキング、春のマイル重賞勝ち馬オースミタイクーンやロイヤルスズカなどが参戦。11月のマイルCS、12月のスプリンターズSを見据えた重要な前哨戦として、多くのファンが注目した。
古馬を圧倒 芝短距離の資質を証明
ゲートが開くと、戦前の予想通り快速牝馬エイシンバーリンが飛び出す。しかし、内からサクラスピードオー、タイキシャトルらも気合をつけられ加速。序盤から上位人気馬が競い合う、レベルの高い攻防が繰り広げられた。
一方でスギノハヤカゼの手綱をとる武豊騎手は、行きたがる同馬をなだめながら中団やや後方からの競馬を選択。向正面では各馬、ポジションの駆け引きが続く。
3~4コーナーでは先頭で引っ張るエイシンバーリンに、シャドウクリークとヒシアケボノが外からポジションを押し上げ襲いかかる。一列後ろのインではタイキシャトルがじっと機を伺っていた。
最終コーナーを回って、直線へ。エイシンバーリンがもうひと伸びして後続を引き離しにかかる。
スタンドがどよめく中、先頭のエイシンバーリンが懸命に粘る。ラスト200mの標識前では、内のタイキシャトル、外から追い上げるスギノハヤカゼ、人気馬2頭の手応えが良い。さらにその外には、勢いよく伸びるロイヤルスズカの姿も見える。
粘るエイシンバーリンに、タイキシャトルとスギノハヤカゼが迫る三つ巴の攻防──。そう思われた瞬間、タイキシャトルがもう一段ギアを上げると、並びかける間もなくエイシンバーリンを置き去りにし、一気に抜け出した。
最後はスギノハヤカゼとのリードを保ったまま、やや余裕を持ってゴール。3/4馬身差の2着にスギノハヤカゼ、さらに3/4馬身差の3着にはロイヤルスズカが入った。
単勝は2番人気の480円という堅実配当。だが、“両雄並び立たず”と判断したファンが多かったのか、2→1番人気での決着ながら馬連は10.1倍とそれなりについた。3着のロイヤルスズカは11番人気で複勝は510円。当時、三連単が発売されていたら、なかなかの配当となったことだろう。
GⅠ馬アドマイヤズームなど素質豊かな3歳馬が参戦
タイキシャトルとスギノハヤカゼは年末のスプリンターズSでも激突し、再びワンツー決着を演じた。4着にもスワンS組のフラワーパークが食い込み、1997年スワンSのレベルの高さを証明した。
タイキシャトルはその後も勝ち続け、翌年にはフランスのジャック・ル・マロワ賞を制覇。1998年の年度代表馬にも選出された。種牡馬としてはメイショウボーラーやウインクリューガーといった個性派GⅠ馬を輩出。母の父としてもダービー馬ワンアンドオンリー、快速牝馬のストレイトガールやレーヌミノルなどを送り出している。
2000年以降はスプリンターズSの実施時期がこれまでの12月から秋へと変更。スワンSの立ち位置もやや変わったが、それでも快速自慢の3歳世代が古馬に挑戦するレースとして、今なお意義深いレースであり、2013年〜2015年にはコパノリチャード、ミッキーアイル、アルビアーノと3歳馬が3連勝、昨年もダノンマッキンリーが勝利を挙げている。
今年も素質ある3歳馬たちが多数登録。2歳王者アドマイヤズームは、NHKマイルC14着からの巻き返しを期して再始動する。同じくNHKマイルC組からは5着ランスオブカオスをはじめ、アルテヴェローチェ、ショウナンザナドゥといった重賞ウイナーも顔をそろえた。ウインマーベル、オフトレイル、レッドモンレーヴら手強いベテラン勢を相手にどういった競馬を見せるか注目だ。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、サングレーザー、ドウデュース。
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