【サウジアラビアRC】ノーザンF生産馬は複勝率65.4% 唯一の該当馬ゾロアストロに期待

貴シンジ

サウジアラビアRC ノーザンファーム生産馬の成績(過去10年),ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

今回は10月11日(土)に東京競馬場で行われるサウジアラビアロイヤルカップについて、下記3つのファクターを組み合わせるコンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の内容」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった9頭を検討対象とし、過去10年のデータを使用する。


重要データ:ノーザンファーム生産馬

ノーザンファーム生産馬の成績,ⒸSPAIA


サウジアラビアRCといえば、過去には多数のGⅠ馬を輩出していて非常に重要な一戦であることは疑いようもないが、2歳戦ということもあり使えるデータは限られている。そんななか、今回注目したいのは生産者のデータだ。

基本的に生産者は馬を生産して馬主に売れば役目を終えるので、あまりデータとしては活用できない。だが、ノーザンファーム生産馬においては生産だけにとどまらずその後の育成もノーザンファームが行うことが多く、データとして扱いやすい。

そこで過去10年のノーザンファーム生産馬の成績を見てみると【5-7-5-9】勝率19.2%、複勝率65.4%というすさまじい数字が出た。

ノーザンファーム生産馬は基本的に2歳の春頃まではノーザンファーム空港、早来という北海道の施設で過ごし、臨戦態勢がある程度整うとノーザンファームしがらき、天栄という本州の施設へ移ってトレーニングを行う。日本屈指の設備とスタッフを兼ね備えているため、馬の素質を引き出すことに長けている。

【ノーザンファーム生産の出走予定馬】
・ゾロアストロ


前走の内容:ゾロアストロの未勝利戦

ゾロアストロは前走・未勝利戦で1着。新馬戦は出遅れや勝ち馬の完成度の高さで2着と敗れはしたものの、2戦目の前走は最後に軽く追い出しただけで2着に2馬身以上の差をつける快勝だった。

加えて、2着馬ジーネキングは次走で勝ち上がり、つづく札幌2歳ステークスでも2着に入る実力馬だった。そんな相手に対し、鞭をしっかりと入れることなく余裕の勝利。この馬の素質と完成度の高さが垣間見え、新馬戦からの成長も感じさせてくれる一戦だった。

勝ち時計1分47秒4も2歳戦としてはかなり優秀なタイムで、今回のメンバーでも十分勝負になる。1000m通過1分2秒4のスローペースでも折り合いはしっかりついており、前々につけてレースを引っ張る形が取れれば勝利の可能性は高い。


血統解説:ゾロアストロ

ゾロアストロの血統表,ⒸSPAIA


・ゾロアストロ
日本での牝祖は祖母のナイトマジック。同馬は競走馬としても優秀で、独オークス(GⅠ・芝11F)とバーデン大賞(GⅠ・芝12F)を勝利している。

ドイツで繋がれてきた一族だが、一番の特徴は豊富なスタミナだ。また、ヨーロッパ血統の中ではスピード性能が高いこともポイントのひとつ。産駒ではフォイヤーヴェルク(父ディープインパクト)がそのスタミナを活かして新潟ジャンプステークスを制した。

産駒の重賞勝利はそれが唯一も、ブラックマジック(父ディープインパクト)がJRAの芝中距離で4勝を挙げたほか、グレートマジシャン(父ディープインパクト)は毎日杯で2着と好走。日本ダービー4着という実績もあり、やはり芝の中距離以上で結果を残している。

本馬の母アルミレーナもディープインパクトの産駒で、現役時代は芝1400~1600mの距離で通算3勝。他の兄弟よりも父の影響が強く、スピード性能に寄った馬だった。初仔のヘルヴェティオス(父ドレフォン)もダート1400mで初勝利を挙げている。

本馬は父にモーリスを迎えた二番仔。ナイトマジックの直仔と比べると胸が厚く、モーリスらしさが出た身体つきをしていて距離適性は短め。とはいえ母系のスタミナはしっかり受け継ぎ、2000mまでは適性の範囲内だろう。

前走はスローペースからの瞬発力比べでの勝利だったが、本質的にはタフなレースの方が得意な配合で、前走よりもペースが流れるようならば勝つ可能性は更に増す。重賞の流れで前走以上のパフォーマンス発揮に期待だ。


Cアナライズではゾロアストロを推奨

ということで、今回のCアナライズではゾロアストロを推奨する。

例年のサウジアラビアRCに比べて今年はメンバーがあまり揃わず、相手となりそうな馬は同じモーリス産駒のチュウワカーネギーだろう。6月の阪神でデビューを果たし、世代最初の新馬戦を勝ち上がった注目馬だ。

しかし、その新馬戦は好スタートからスピードの違いでハナを奪い押し切るというかなり理想的なレースをしており、そこから4か月の間の成長がどこまであるかというところ。少なくとも前走の勝ち時計は平凡で、重賞で本命を打てるだけの材料とはなっていない。今回はゾロアストロを本命候補としてピックアップする。

《ライタープロフィール》
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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