【スプリンターズS】安定した先行力と持続する末脚に期待 京大競馬研の本命はママコチャ
京都大学競馬研究会

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先行負荷が高い一方で、一気に差し切るには短い直線
9月28日(日)にスプリンターズS(GⅠ)が行われる。サトノレーヴ、ナムラクレア、トウシンマカオ、ルガルといった日本最高峰のスプリンターから、前哨戦で好走してきた夏の上がり馬まで、秋の短距離王決定戦にふさわしい実力馬16頭が集結。どの馬が勝ってもおかしくない大混戦模様の一戦となった。
以下では、本レースが行われる中山芝1200mのコース形態とそれに起因するレースの質、そして想定される展開を踏まえ予想する。
まずは中山芝1200mのコース形態をみる。外回りの向正面中間地点からスタートし、初角までの距離は約250m。おむすび型の外回りコースを使用し、スタート直後から4コーナーまでは約4.5mの勾配の下り坂。直線は中央4場の中で最短となる310mで、最後に高低差2.4mの急坂が待ち構えている。これが今回のコースレイアウトだ。
まず注目すべきは初角までの距離が約250mとかなり短い点だ。序盤の先手争いは長引きにくい。ただ、スタート直後から下り坂となるため、ペースは流れやすいのが特徴だ。また、序盤のポジション争いでは内枠が有利となっている。
3コーナーを過ぎてからもタイトな流れは変わらず、直線に入るまでにペースが緩むタイミングはほとんどない。最終直線に入るまでに後方勢が先行勢とのポジション差を埋めにくく、馬群が比較的縦長の状態で直線を迎えやすい。
4コーナーもそれなりに急であり、後方勢は膨らんだ先行勢のさらに外を回ることになる。直線入り口で先行勢がポジション差を広げやすい。さらに最終直線も310mとローカル競馬場並みに短く、最後に急坂があるタフなコース形態で全馬の終盤の脚色は鈍り、上がりに差が生まれにくい。先行負荷がそれなりに高く、簡単には前が残し切れない一方で、直線を向いた時点でのポジション差を直線の末脚だけで一気に逆転するのはより至難の業だ。
したがって、序盤から積極的にポジションを取って内前をロスなく立ち回り、しぶとく残し切れる持続力の高い先行馬が恵まれやすいというのがこのコースが持つレースの質だ。

<スプリンターズS 4角通過順別成績>
4番手以内
【4-6-3-33】
勝率8.7%、連対率21.7%、複勝率28.3%
単勝回収率128%、複勝回収率123%
※過去10年
この傾向は数字にも表れている。スプリンターズSにおける4角4番手以内馬の成績は上記の通り優秀だ。ただ、回収率は出ているものの馬券内30頭中13頭と、コースが持つレースの質ほど飛び抜けて好走していない。
これはスプリント最高峰の舞台で先行力が確かなメンバーが揃いやすいことと、開催最終週、Cコース2週目の高速とはいえない馬場で、逃げ馬や2、3番手で運んだ馬の前残りが容易ではないことによる。ある程度前目で運びつつ、最前列の先行勢が垂れてきたところに末脚を伸ばして抜け出す競馬が理想だ。
どれくらい序盤のペースが流れ、どこの位置からなら先行して残し切れるのか、差し届くのか。この点について以下の展開予想で検討していく。
ハイペースで馬群が縦長のまま直線を迎える展開
続いて今回想定される展開から恵まれる馬を考える。メンバー構成は直近の日本での競馬において通過順位に3番手以内のある先行馬が5頭。出走馬全17頭に対してそれなりに多い。距離延長の快速馬ピューロマジックをはじめテンの速い馬が揃ったため、緩い流れは考えにくく、前半3F33秒台前半で流れるとみる。
この展開で恵まれるのはやはり好位~中団前目につける先行力や追走力を持ち、前を捕まえる形で早めに抜け出すことができる、持続する末脚を持つ馬だ。
馬群が縦長の状態で直線を迎えることはほぼ確実で、ペースが差し馬向きとはいえ、直線だけで最後方から一気に差し切るのは相当な地力がなければ至難だ。前目から中団にポジションが取れる先行力、追走力は必要とみる。この点も踏まえて印を打っていく。
安定した先行力と持続する末脚が武器
◎ママコチャ
前走のセントウルSは好スタートから前半3F33.0秒のハイペースを3、4番手で先行。4角8番手以下の馬が1、3、5、6着に来る差し有利な展開の中、早め先頭から一度は完全に抜け出し0.1秒差2着に粘った。内をスムーズに捌いたとはいえ勝ちに等しい、強い内容。休み明けかつスプリンターズSの前哨戦としては上々の走りだった。
2走前の京王杯SCは好スタートから前半3F33.9秒のハイペースを3番手先行。2F目10.7秒、以降は最後まで11秒台のラップが続いて息を入れる間がないタフな展開で、前に行った馬が壊滅する中、4角3番手から粘って0.2秒差2着。ベストではない1400mでも着順、着差以上に評価できる内容だった。
3走前の高松宮記念は先行意識の高い馬が多く自然と差しに回る形で、上がり3F3位の脚を使い0.3秒差3着。近走は国内最高峰のスプリンターとして実力を示し続けている。
今回は2枠4番の絶好枠。テンの速い馬が揃っているため、自然と中団前目からの追走になるはずだ。ハイペースで前が垂れてきたところを早め先頭で抜け出せれば勝ち負け必至とみる。想定オッズ段階では「5強オッズ」の様相だが、その中でも前走の展開不利での敗戦から最も妙味が見込まれる。
◯サトノレーヴ
能力、実績では今回のメンバーでも最上位の一頭。前走のQE2世ジュビリーS、2走前のチェアマンズSPではそれぞれラザット、カーインライジング相手に善戦し、世界最高峰のスプリンターとして能力の高さを示した。
3走前の高松宮記念、4走前の香港スプリントの内容からも今が充実期であるのは確かだ。J.モレイラ騎手が本馬の能力を最大限引き出せば順当に好走してくる。
▲ナムラクレア
前走の函館スプリントSは道中前を走っていた馬のアクシデントに巻き込まれる形で致命的な不利を被った。完全に度外視可能な敗戦。今回のメンバーでもGⅠ制覇に最も燃えている一頭で、長い間GⅠ級のポテンシャルを示し続けている。3枠6番の好枠から内枠主導の流れに乗ってスムーズな競馬ができれば前走からの巻き返しに期待できる。
△トウシンマカオ
前走のセントウルSは差し有利な展開が向いたとはいえ、終始大外を回す競馬で評価できる内容だった。外目から長く脚を使いたい本馬にとって外目の枠は歓迎。
×ピューロマジック
最上位のテンの速さを持つ快速馬。控える競馬も覚えた今、好位から残し切るだけの地力がある。
買い目は◎単勝1点、◎-◯▲馬連2点、◎-◯▲-◯▲△×3連複5点で勝負する。
▽スプリンターズS予想▽
◎ママコチャ
◯サトノレーヴ
▲ナムラクレア
△トウシンマカオ
×ピューロマジック
◎2024年勝負買い目個人成績(東海S〜ホープフルS:25記事)
・単勝27点→4830円 回収率178.9% 的中率37.5%(的中9R/推奨24R)
・馬連105点→12480円 回収率118.9% 的中率42.9%(的中9R/推奨21R)
・3連複204点→22410円 回収率109.9% 的中率17.4%(的中4R/推奨23R)
《ライタープロフィール》
京都大学競馬研究会
今年で30周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えの本格派が揃う。
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