【スプリンターズS】雨の中山に快速王カルストンライトオが降臨 4馬身差で圧勝の2004年をプレイバック
緒方きしん

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昨年勝ち馬や春のスプリント王など豪華メンバーが集結
今週はスプリンターズSが開催される。1990年代には名スプリンターのサクラバクシンオー、2000年代にはグランアレグリアやロードカナロアが制した秋のスプリント王者決定戦だ。今回はそんな中から2004年の一戦をピックアップして当時のレースを振り返っていく。
2004年のスプリンターズSは実力馬が集結し、単勝オッズ一桁台が5頭いる混戦模様。1番人気サニングデールは同年の高松宮記念勝ち馬で、春のスプリント王。2番人気は切れ味鋭い末脚が最大の武器で、昨年の勝ち馬デュランダルだ。
3、4番人気には前哨戦を勝ってここに臨んできた4歳馬、シーイズトウショウとゴールデンキャストといった新興勢力が続く。
5番人気は前走のアイビスSDを驚異のレコードで勝利した快速馬カルストンライトオ。これまでGⅠは2度挑戦していずれも2桁着順と苦戦していた。
しかし1000m〜1200mですでに8勝を挙げる短距離のスペシャリスト。アイビスSDは3戦2勝3着1回という強さと、日本トップのスピードでファンを魅了していた。
サニングデールやデュランダル、そして快速馬カルストンライトオといった日本スプリント界を牽引していた馬たちに、新興勢力の4歳馬シーイズトウショウやゴールデンキャストらが挑むという構図だった。
逃げながら突き放す 快速馬カルストンライトオ
当日はどんよりとした雲が空を覆い、雨が降り、不良馬場での決戦となった。レース前から波乱を予感させるなか、ゲートが開いた。
外枠のシーイズトウショウ、シルキーラグーンらがポンと前に出る。しかし、カルストンライトオは大西騎手に気合をつけられると、スピードの違いであっという間に先頭に立った。
ナムラビッグタイムと江田騎手も前を伺い、人気の一角ゴールデンキャストも武豊騎手に促され、外からポジションを上げていく。後方には人気馬のサニングデールとデュランダルが構えていた。
残り600m。最後方にいたデュランダルが一気に外から動く。それに合わせるかのように後方内にいたサニングデールと福永騎手も徐々に進出を開始。中団各馬の動きも慌ただしくなる。
前を行くカルストンライトオは先頭を譲らない。2番手集団の3頭は早めにカルストンライトオを捕まえにいくが、その差は全く縮まらず最後の直線に入った。
直線に入るとカルストンライトオは後続との差を一気に4馬身、5馬身と広げる。後続が重い馬場に苦戦して伸びあぐねるなか、カルストンライトオは良馬場の上を走るかのようにスイスイ進んでいく。
後続は横いっぱいに広がり、逃げるカルストンライトオの背中を追う。その中から伸びてきたのは、大外から追い込んできたデュランダルのみ。しかし、勝負は決していた。カルストンライトオはスプリントGⅠで2着に0.7秒差をつける脅威の逃げ切り勝ちを披露した。
上がり最速は2着のデュランダル。しかし、逃げ切ったカルストンライトオが上がり2位を記録しており、これでは手も足も出なかった。3着は外国馬のケープオブグッドホープ、1番人気のサニングデールは見せ場なく9着に敗れた。
5番人気→2番人気→8番人気での決着。三連単は1098.1倍と10万馬券となった。人気だけを見ればもっと高配当になってもいいように思うが、カルストンライトオのスピードに魅了され、同馬の1着馬券を勝っていたファンが思ったより多かったのかもしれない。
カルストンライトオのレコードに並んだ4歳牝馬が参戦
その後のカルストンライトオは敗戦を繰り返す。それでも翌年の高松宮記念4着、アイビスSD4着と、短距離界を盛り上げ続けた。
父としてはダート1200m戦で5勝をあげたメイショウテンセイなどを輩出。父系が希少なMan o'War系という血統的価値から、産駒のカサマツノライトオが種牡馬入りを果たしている。
2着のデュランダルはオークス馬エリンコートやフラガラッハ、サンレイデュークといった活躍馬を輩出。母父としてはチュウワウィザード、トーセンスーリヤらを輩出し、昨年はブローザホーンが宝塚記念を制した。
今年のスプリンターズSは、カルストンライトオのアイビスSDレコードに並んだ現代の快速牝馬ピューロマジックが参戦する。前走のアイビスSDは上がり最速の脚で差し切り勝ちと、カルストンライトオとは違う快速ぶりを見せた。
今年は春のスプリント王サトノレーヴや前年チャンピオンのルガルも参戦。他にも夏の前哨戦を勝ってきたカピリナなど新興勢力の4歳勢も多数出走予定で、そういった点も2004年と重なる。
快速牝馬ピューロマジックなど勢いある4歳勢が現日本トップスプリンターたち相手にどういった競馬を見せるか、大注目だ。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
札幌生まれ、札幌育ちの競馬ライター。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、サクラバクシンオー、ダイワスカーレット、ドウデュース。
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